読みもの
2022.10.29
音楽ことばトリビア ~ポーランド語編~ Vol.2

森へ行きましょう!――ポーランド生まれのうたと無印良品のスープ

平岩理恵
平岩理恵 ポーランド語通訳・翻訳家

東京外国語大学大学院修士前期課程修了。ワルシャワ大学音楽学研究所に政府給費留学(2001~03年)。ポーランドの舞曲やモニューシュコを研究。訳書 『ショパン家のワルシ...

イラスト:ほんまちひろ

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みんなが知っているあの歌、実はポーランド生まれです

ポーランドの歌をなにか知っていますか? ……何も、と思われたでしょうか。でもそれはきっと、そうと知らないだけ。多くの日本人が、聴いたことがあるだけでなく、歌ったことまであるにちがいないポーランド民謡があるんです!

歌のタイトルは、『森へ行きましょう』

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「♪もーりへーいきーましょーーむーすめーさんーアハーハ」ではじまる、あの童謡です(ある世代以上にとっては某のりメーカーのCMで流れていた替え歌の方がピンとくるかもしれませんが!)。1961年に「みんなのうた」で放送されて日本中で歌われるようになりました。

原語タイトルは『Szła dzieweczka(シュワ・ヂェヴェチュカ)』で、ポーランド南西部、シロンスク地方の民謡とされています。もとの歌詞は日本語版とは少し設定が違っていて、1~2番を大まかに訳すと、「娘さんが緑の森へと歩いていると、とてもハンサムな猟師に出会った――その道は、その家は、その娘さんはどこ? 愛する娘さん、見つけたよ――猟師さん、愛する人、とても嬉しいわ。バターつきのパンをあげたいけど、もう食べちゃったの」といった感じです。

ポーランド国立民族合唱舞踊団「シロンスク」による„Szła dzieweczka”の演奏

よろしければ、1番の前半だけでも、ポーランド語で歌ってみませんか?

Szła dzie-wecz-ka do la-secz-ka 〔シュワ ヂェ ヴェーチュ カ  ド ラ セーチュ カ〕

Do zie-lo-ne-go 〔ド ジェ ロー ネ ゴー〕(×3)

Na-pot-ka-ła myś-li-wecz-ka 〔ナー ポト カーワ ミーシ リ ヴェーチュ カ〕

Bar-dzo szwar-ne-go 〔バール ヅォ シュファール ネ ゴー〕(×3)

日本の紅葉にも負けません! ポーランドの「黄金の秋」

日本の童謡だと「山」が多く登場しますが(ぱっと思いつくだけでも「♪やっぱりお山が恋しいと」「♪山の麓の」「♪高いお山にあったとさ」などなど!)、ポーランドは圧倒的に「森」です。

そもそも国名のPolskaは平野を意味するpoleが語源というくらい、国土はとても平坦で、北のバルト海沿岸から南部の山岳地帯までなだらかな勾配をなしていて、途中に山や谷はほとんどありません。多くのポーランド人にとって身近な自然は、森と平原と川と湖なのです。都市部から少し離れるだけで、もうそこには豊かな自然が広がっています。

人々はその自然の四季折々の魅力を満喫します。とくに秋は、złota jesień(ズウォタ・イェシェィン)——「黄金の秋」という表現があって、ページ冒頭のイラストのように、広葉樹がいっせいに黄葉し、どこもかしこも黄金色に染まります。

訪れた人、全員を虜にするポーランドの「黄金の秋」

そんな時期にポーランド人がこぞって出かけるのが「きのこ狩り」。日本人にとってのお花見と同じくらいメジャーな季節行事で、家族や友人同士誘い合って近くの森にくりだし、立派なきのこをどっさり集めてくるのです(イラストのカゴを持った猫ちゃんもきっとそうですね)!

ポーランドの秋の童謡には森やきのこの登場するものがたくさんありますが、その名も『きのこを集めましょう(Zbieramy grzyby)』という歌まであります。

ポーランド・グルメが日本でも気軽に食べられる?!

きのこ狩りの愉しみは、森に行くだけでは終わりません。採りたてのきのこをお料理にするほか、干したり酢漬けにして保存食にもします。ポーランドには、bigos(ビゴス)やpierogi z kapustą i grzybami(キャベツときのこのピェロギ——ポーランド風ぎょうざ)など、きのこを使った料理が豊富にあります。

中でも筆者の大好物はスープ! さまざまなレシピがあるzupa grzybowa(ズーパ・グジボーヴァ/きのこのスープ)ですが、きのこのコクある味わいと食感、芳醇な森の香りに満ちているのはどれも共通で、想像するだけでも涎が出てきます…。すぐにでもポーランドに飛んで行きたくなったところへ、またとない朗報が! なんとこのほど、かの無印良品から「ポーランドでつくったスープ」全6種類が発売されたというのです! 

もちろんその中にはきのこのスープも! 早速賞味してみたいと思います(レトルトパックなので湯煎にかけてきます)♪

日本にいながらポーランドのスープが食べられるなんて幸せです!

「ポーランドでつくったきのことパスタのスープ」。懐かしい味わいにすっかりポーランドにトリップ気分! その後ろに立っているパッケージはポーランドを代表するスープżurek(ジュレック)。ゆで卵やソーセージなどをトッピングするのが本国流。

そうそう、無印良品さんのお店に行くと、いつもいい感じのBGMが流れているなって思いませんか? 実はあのBGMシリーズの中にも、ポーランドの音楽がラインナップされているのです。

ヤヌシュ・プルシノフスキ(Janusz Prusinowski)率いるグループが農村に伝わる音楽をそのまま、または即興やアレンジをして演奏しているものです。いわゆるマズルカなどポーランドの舞曲の源流にあたる音楽です。

Janusz Prusinowski Kompaniaの演奏

ポーランドの伝統音楽についてはまた長い話が始まってしまいますので、別の機会に譲るとして、せっかくのスープを熱々のうちに頂くとしましょう。Smacznego! (スマチネゴ!/さあ召し上がれ!)

無印良品新シリーズ 「ポーランドでつくったスープ」6種

“ポーランドでつくったスープ”は、10月12日(水)から全国の無印良品およびネットストアで6種類は発売中。ポーランドでは米やパスタ、豆などを入れた「食べるスープ」が主流で、その食文化を日本に紹介するべく商品化されたとのこと。
平岩理恵
平岩理恵 ポーランド語通訳・翻訳家

東京外国語大学大学院修士前期課程修了。ワルシャワ大学音楽学研究所に政府給費留学(2001~03年)。ポーランドの舞曲やモニューシュコを研究。訳書 『ショパン家のワルシ...

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