読みもの
2020.05.26
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その5

トッカータ:語源は触る。触って何を確かめていた?

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

フローベルガー「トッカータ第3番」の自筆譜より。

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作品の名前につけられる楽語、トッカータ。本来は「触る」という意味のイタリア語“toccare”の名詞形で、英語ではタッチ(touch)にあたる言葉です。

では、トッカータとはどのような曲のことを指し、一体何を“触る”のでしょうか。

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トッカータが演奏されるようになった16〜17世紀のお話です。

オルガンなど持ち運びができない楽器は、教会や宮廷など広い場所に置かれ、昼夜の大きな寒暖差や湿度差にさらされました。その結果、翌朝には調律が狂ったり、鍵盤が上がらなくなることがありました。

曲を弾く前に、このような異常がないかを調べるため、まず音階やアルペジオ、反復音をいろいろな音域を使って即興で試し弾き、ついでに技巧的に指慣らしをしたのがトッカータの始まりなのです。このような歴史から、音階やアルペジオを用いた即興的な作品としてのトッカータが作曲され、さらには長大な作品の最初に演奏される曲としても登場しました。

時代とともに楽器が改良されると、トッカータの趣旨も変わってきます。まるで調律もすぐに狂わず、頑丈になったピアノの鍵盤の反応をこれでもかと確かめているかのごとく、19世紀以降のピアノ作品では連打や反復音の多いトッカータが増えてきます。そしてこの名目を借りた「トッカータ」は、マシンガンのように速く、楽器の極限を見極める曲へと化していったのでした……。

バッハ「トッカータとフーガ ニ短調」BWV565
冒頭から音階とアルペジオが使われ、まさに鍵盤の様子を確かめるかのように上から下までの音域を網羅しています。
そしてこのAdagioは「好きなように」の意味合いで使われています!(第3回の記事をご参照ください)
ラヴェル「クープランの墓」よりトッカータ
終始素早い連打により曲が構成されています。

トッカータを聴いてみよう

1. フローベルガー:トッカータ第3番
2. バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 〜トッカータ
3. ラヴェル:《クープランの墓》〜トッカータ
4. プーランク:3つの小品〜トッカータ
5. サンカン:トッカータ
6. 
カプースチン:8つの練習曲〜第3番 トッカティーナ(トッカータ風)

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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