フォルテ:1597年に初登場! 時代とともに数が増えていく
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
第12回の記事でご紹介したピアノと対をなすフォルテ。イタリア語で強くを意味する言葉です。しかし、その歴史はピアノと少し違うようです。
強弱記号のピアノが初めて用いられた1517年から80年後、イタリアの作曲家G.ガブリエーリがソナタ「ピアノとフォルテ」(1597年)を作曲したのをきっかけに、少しずつフォルテが用いられるようになります。
17世紀までの主な用法として、アダージョの部分ではピアノ、アレグロの部分ではフォルテが書かれることが多かったようです。
しかし、レオポルト・モーツァルト(モーツァルトのお父さん)は著書『ヴァイオリン奏法』(1756年)のなかで、「フォルテは節度をもって弾きましょう。やけくそにガシガシと弾かないように」と記しています。フォルテと書いてある部分でむやみに弾く人が多かったのでしょう……。
18世紀には、フォルテよりも強い強弱を表すフォルティッシモ(ff)が用いられるようになりました。哲学者で作曲家のルソーは1768年に、「歌の人はいつも大音量で歌うから、歌のパートにフォルティッシモなんて必要ないのでは?」とまで言っています。
ベートーヴェンはそんな考えをよそに1812年、フォルティッシモよりもさらに大きいフォルティッシッシモ(fff)を交響曲第7番と第8番で初めて使いました。きっと初めて書くときには手が震えたことでしょう。
造語のため、ドイツではfffのことを主に「フォルテ・フォルティッシモ」や「ドライファッハ(三重の)・フォルテ」とも呼びますが、ベートーヴェンがこの強弱記号を使ってから、強弱記号はさらにバラエティに富んだものとなっていきます。
いろいろなフォルテを聴いてみよう
1. G.ガブリエーリ:サクレ・シンフォニーエ第1巻〜ソナタ「ピアノとフォルテ」
2. J.S.バッハ:イタリア協奏曲 BWV971〜第1楽章
3. モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》〜第2幕第19場「晩餐を共にしよう」
4. ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92〜第4楽章
5. ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93〜第1楽章
6. リゲティ:練習曲第13番「悪魔の階段」
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