読みもの
2020.10.20
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その26

クーラント:フランス語で「流れるような」という意味の舞曲

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

アブラハム・ボス《クーラント》(1650~1658年)

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バロック音楽の中でよく目にするクーラント。例外もありますが、3拍子の踊りです。しかし、メヌエットのように「1、2、3!」というリズム感が薄く、流れるような音楽が特徴です。クーラントという名前は、その特徴をしっかりと捉えています!

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クーラント(courante)はフランス語で「流れるような」という意味の言葉で、例えば「流暢なフランス語」というときもフランス語で“français courant (フランセ・クーラン)”と言ったりもします。まさに音楽も流れるように書かれています。

もっとも早い時期に書かれたクーラントは、1549年、フランスのピエール・ファレーズ(1510?〜1573年)が書いたものとされています。その後、フランスやドイツでは踊りを集めた曲(組曲やパルティータなどなど)では、必ずと言ってもいいほどクーラントが書かれるようになりました。

流れるような音楽には流れるような高貴な踊り。ルイ14世の時代には大臣を決めるとき、候補者に踊りを踊らせて、上手に踊れば「はい、キミ採用!」ということもありました。特にフランス発祥のクーラントは、高貴で品のある踊りが特徴なのです。

一方イタリアでは、クーラントの代わりにコレンテ(corrente)という踊りが踊られました。こちらも「流れるような」という意味なのですが、フランスのクーラントよりもテンポが速いです。そして、踊りもジグザグに走るような、フランスのものとはかなり違うものでした。

もはや別物となってしまったクーラントとコレンテですが、J.S.バッハはこの2つの踊りを明確に分け、両方とも作曲しました。

バッハ :フランス風序曲 クーラント
バッハ: パルティータ第5番より「コレンテ」
クーラントの舞踏譜。半円が頭、短い直線が足、そして曲線は足の動きを表しています。振付家のラウール=オージェ・フイエによる《コレオグラフィ 人物・図形・指示記号による舞踊記述法》より。

クーラントを聴いてみよう

1. ファレーズ:アルマンド、クーラントとガイヤルド
2. プレトリウス:舞曲集《テルプシコーレ》〜クーラント「ラ・ムリーヌ」
3. ヴィヴァルディ:ヴァイオリンソナタ (マンチェスター)RV755〜第4楽章 コレンテ
4. J.S.バッハ:フランス風序曲 BEV831〜第2曲 クーラント
5. J.S.バッハ:パルティータ第5番 ト長調 BWV829〜第3曲 コレンテ
6. ダンディ:ピアノ三重奏曲第2番 作品98 〜第3楽章 クーラント

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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