バルカローレ:ヴェネツィアのゴンドラで口ずさまれた歌をショパンらが芸術作品に!
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
日本語で舟歌と訳される、バルカローレ。ショパンなどの作曲家がピアノのために多くの舟歌と呼ばれる作品を書きましたが、もともとはその名の通り、舟の上で歌われる歌に由来します!
場所はイタリア、ヴェネツィア。古くより地中海貿易で栄え、「水の都」と呼ばれることもありますね。
ヴェネツィアは、アドリア海(地中海の一部)に面しているのはもちろんのこと、街には車が通れるような道路はありません! 人が通るような狭い道以外は、水路で結ばれているのです。なので何か緊急事態があろうとも、救急車や消防車、パトカーは入れないため、みんなボートで来てくれます……!
もうおわかりかもしれませんが、ヴェネツィアでの主な交通手段は、昔から舟。ゴンドラ(gondola)という名前で親しまれています。
このゴンドラでは、船を漕ぐ船頭がオールを使って、えっこらえっこらと漕いでくれます。しかし、オールを漕ぐにしても、むやみやたらに漕ぐよりリズムよく漕ぎたいですよね。そこで、リズムよく漕げるように、適当に口ずさみながら歌った歌が、舟歌なのです!
代表的な舟歌「ゴンドラを漕ぐ女」と、この曲を題材にした曲
1. イタリア民謡:「ゴンドラを漕ぐ女」(ヴェネツィアの代表的な舟歌)
2. ベートーヴェン:民謡集 WoO.157〜第12番「ゴンドラを漕ぐ女」
3. パエール:「ゴンドラを漕ぐ女」の主題による歌とピアノのための変奏曲
4. リスト:巡礼の年第2年 補遺《ヴェネツィアとナポリ》〜第1番「ゴンドラを漕ぐ女」
5. アーン:ヴェネツィア方言による6つの民謡〜第4番「ゴンドラを漕ぐ女」
バルカローレは、イタリア語で舟歌を指すbarcarolaの複数形(barcarole)で、フランス語ではbarcarolleと書かれます。barcaという言葉はイタリア語で舟を指し、元をたどると、地中海を挟んで対岸のエジプト語(かつて古代エジプトで話されていた言葉)に行き着くそう。
船頭たちが何気なく歌う舟歌は、ゆらりゆらりと気持ち良いリズムが続き、曲全体にはどこかメランコリックな雰囲気が漂います。メロディもシンプルなため、ヨーロッパ中で人気となります。
特に、ショパンやメンデルスゾーンがピアノのための作品として舟歌を書いたことで、その後も多くの作曲家がピアノをはじめとした器楽のために舟歌を書きました。
ピアノの舟歌では、左手で船が揺れているかのような心地よい伴奏を弾き、右手で船頭が歌うようなメロディを弾くように書かれていますが、繰り返されるメロディーに装飾や、複雑なハーモニーが付け加えられることで、耳を傾けたくなってしまう魅力的な「作品」へとなりました。
さらにオペラの中では、もともとの舟歌がもつ雰囲気から、メランコリックな場面で象徴的に用いられるようにもなりました。
こうして舟歌は、船頭が口ずさむ何気ない歌から、芸術へと昇華したのです……!
バルカローレを聴いてみよう
1. F.クープラン:クラヴサン曲集第4巻〜第23組曲より「デロスのゴンドラ」
2. メンデルスゾーン:無言歌集 作品62〜第5曲「ヴェネツィアの舟歌」
3. ショパン:舟歌 作品60
4. オッフェンバック:歌劇《ホフマン物語》〜第4幕より「美しい夜、あぁ、愛の夜」(ホフマンの舟歌)
5. フォーレ:舟歌第6番 変ホ長調 作品70
6. レオンカヴァッロ:ヴェネツィアの舟歌
7. ラフマニノフ:組曲第1番《幻想的絵画》作品5〜第1曲 舟歌
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