レッジェーロ:イタリア語で「軽い」を意味する形容詞
楽譜でよく見かけたり耳にしたりするけど、どんな意味だっけ? そんな楽語を語源や歴史からわかりやすく解説します! 第75回は「レッジェーロ」。
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
まるでつま先立ちをしながらピョンピョンと跳ぶような音を表すときに使われる楽語、レッジェーロ。イタリア語由来の形容詞で、leggiero、もしくはleggeroと書かれ、軽いという意味をもちます。ラテン語で、同じく軽いを意味するlevisが語源で、英語のlightや、ドイツ語のleichtはここから派生しました。
おそらく、少し音楽に詳しい方だったら、「なぜか同じレッジェーロでも綴りがちょっと違うけど、なんでだろう?」と思ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この2つの違いは、使われている時代にヒントがあります。leggieroは古い綴りで、leggeroは新しい綴りなのです。
副詞として用いられる場合は、leggermente(レッジェールメンテ)、leggeramente、もしくはleggieramenteと書かれます。安心してください……綴りは違っても、全部同じ意味です!
さて、レッジェーロが使われるようになったのは、割と新しい時期です。なかでもベートーヴェンは、早い時期にもっともよくレッジェーロを用いた作曲家なのですが、その使い方は、非常に幅広いのです。
例えば、《ディアベッリ変奏曲》の中にもレッジェールメンテが3回出てきます。その用法がとても興味深いので、3つのうち2つの箇所を見比べてみましょう。
まずは第2変奏に登場するレッジェールメンテです。シンコペーションという、リズムがずれた音型にて登場します。このような、ずれたリズムを強調して演奏していると、段々と演奏がもたついてきてしまうのですが、おそらくベートーヴェンはそうなることを恐れ、「もたつかないで、サラッと軽めに演奏してね」という意図でレッジェールメンテをつけたのでしょう。
ベートーヴェン以降、多くの作曲家がレッジェーロやレッジェールメンテを使うようになりました。ですが、フェザータッチのように軽い音や、羽が生えてどこかに飛んでいってしまうような一段と軽い音やフレーズが欲しいときには……そう、レッジェーロの最上級の形、レッジェリッシモ(leggierissimo)が使われます!
例えば、エルガーのチェロ協奏曲の第2楽章は、まさにそんな様子が浮かんでくるようなレッジェリッシモです。
こうして、レッジェーロやレッジェールメンテを通して、まさに情景が浮かんでくるような音色が生まれることもあるのです。
レッジェーロを聴いてみよう
1. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番 作品74《ハープ》〜第3楽章 プレスティッシモ、レッジェールメンテ
2. ベートーヴェン:《ディアベッリのワルツによる33の変奏曲》作品120〜第2変奏
3. ベートーヴェン:《ディアベッリのワルツによる33の変奏曲》作品120〜第10変奏
4. メンデルスゾーン:《無言歌集》作品67〜第2番 アレグロ・レッジェーロ
5. ブラームス:《4つの小品》作品119〜第3番 間奏曲
6. エルガー:チェロ協奏曲 作品85〜第2楽章
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