読みもの
2023.11.02
特集「ソロ活」

音楽ソロ活はノーリスク&ハイリターン! 音楽ライターによるソロ活のすすめ

日本でも海外でも基本はソロ活という音楽ライターの高坂はる香さん。ソロ活の歴史とともに、音楽ソロ活の素晴らしさを教えてもらいました! 「友達を誘ってもいいけど、友達も楽しんでくれているのか落ち着かない」に共感する方は、ぜひこれを読んでソロ活に一歩踏み出しましょう!

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

近年のソロ活より、イスラエルの死海で浮く筆者

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私のソロ活遍歴〜インドも死海も臆せずソロ活で満喫

人を何かに誘うことが苦手なのは、子どもの頃からでした。友達の家を訪ねて「あそびましょ」と声をかけるなどという行動は、大胆すぎて夢のまた夢。とはいえ、遊びたくないわけではなく、誘われたら喜んで出かけます。要は、自分などと遊びたい人はいないという自信のなさから人を誘えない、という思考回路であります。

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ご飯に行こうという誘いですらおそるおそる。コンサートという趣味の出る誘いに至っては、びびりながらの大チャレンジです。断わられることより、無理に付き合わせることになるかもしれないのがこわい。

加えて、一人の時間も苦にならないので、結果的にソロ活が多くなります。思い起こせば、学生時代のはじめてのアメリカ滞在やインド旅行にはじまり、社会人になってからの取材や休暇の海外も、出国時はだいたい一人です。

しかしそんな海外一人旅で少しさみしい瞬間が、海やプールなど普通あまり一人で遊びにこない場所を満喫したいとき。

これまで、南はインド、ゴアのビーチから、北はポーランド、ワルシャワのホテルのプール&サウナ、最近ではルービンシュタイン・コンクール取材で訪れたイスラエルの死海のビーチ&スパと、あちこちでソロ活をしてきました。

するとさみしい以前に、泳いでいる間の荷物が心配というセキュリティ問題が浮上します。それでも果敢に泳ぐ。その度胸といい加減さこそが、水辺好きのソロ活に求められるものであります(お金持ちは真似しないでください)。

イスラエル、死海に浮く様子
朝8時の死海には人がひとりもいなくて、究極のソロ活になりました。もちろん撮ってくれる人がいるはずもなく、動画のスクショです。

もう一つ困るのが食事です。美味しいものを食べたいけれど、家族連れで賑わう店や高級店に一人で突入するのは勇気がいります。

以前、イタリアのサチーレにあるファツィオリの取材のついでにヴェネツィアに滞在したときのこと。一人で入りやすい雰囲気ベースでレストランを選んだところ、せっかくのイタリアなのに一度もおいしいものに巡りあえず、残念な思いをしました。

ヴェネツィアの食事の一例、運河のほとりのオープンエアのレストランで食べたピザ。写真は微妙にばえてるっぽいけど、味は普通でした。

ちなみにそのことを、後で演奏旅行が多くグルメな某指揮者さんに愚痴ったところ、「おいしい店を見分けるポイントは、おじさん3人組が食事しているかどうか。カップルや家族の食事、仕事の会食など、レストランにはいろいろな目的の人がいるけれど、おじさん3人はたいていあれを食べようといって集まっているから」とのこと。

そして実際この前、カレー研究家の知人男性が、「よくフランス料理を食べに行く男3人の仲間がいる」と話していて、ここにドンピシャの実例がいたよと思ったところでした。

コンサートはソロ活に最適! いいことだらけのソロ鑑賞

さて、だいぶ遠回りしましたが、ここからが本題。

その意味でコンサートは、気後れせず一人で楽しめる筆頭の場です。演奏がはじまればどのみちおしゃべりはできません。少し手持ち無沙汰になるのは休憩中ですが、そのまま自席でホールの内装を眺めるとか、ピアノ・リサイタルなら調律師さんの様子を観察するという楽しみもあります。ソロ活常習となると、読書で休憩時間を有効活用するようになります。

演奏に感涙しそうでもこらえることなく静かに堂々と涙を流し、そんな涙に濡れた顔のまま家路についてもまったく問題なし。電車で他人の目さえ気にならなければ。

逆に友達を誘うと、自信のない誘い下手だけに無駄な気遣いが発動して落ち着きません。クラシックから遠い環境で育った私にはもともとクラシック大好きという友達はほぼいないため、いざ誘うと、その人が退屈していないか、本当に楽しめているかとやきもきしっぱなしになるのです。でもソロ活ならそんな心配とは無縁!

さらに、休憩中何の気なしに感想を語りあい、あとで前の席が出演者の親御さんだったと気づき、変なこと言ってなかったか冷や汗をかく、ということも起きません(そんなのレアケースだと思うでしょうけれど、気づいていないだけでけっこうあるはず……)。黙って行って帰ってくるソロ活は、ノーリスク&ハイリターン

音楽ソロ活ワンポイントアドバイス
平日夜などのシブいプログラムの公演なら、そもそも一人で聴きに来ている人がたくさんいるので、ソロ活でもまったく浮かないのではないでしょうか。
 
ちなみに、駅直結かつ楽しげな飲食店が通り道にない会場だと、「みんなお友達と楽しげに感想語り合ってていいなぁ」と感じる隙もなく電車に乗って帰れるので、さみしんぼの方にはおすすめです。究極は、築地市場駅からの浜離宮朝日ホールですね。

ソロ活でフェスを1/3だけ味わってもいいじゃないの

そんなソロ活推進派の私でも、一人では行きにくい種のコンサートがあります。それは何か。みなさんおわかりですね。そう、「フェス」です。

最近はクラシックでもフェススタイルのイベントが出てきました。料理やお酒を楽しみ、オープンスペースでリラックスして聴けるなど、クラシックに馴染みがなくても足を運びやすいオプションがわんさか用意された、まさにお祭り。

まぶしすぎて一人では近づけない! 絶対誰かと行ったほうが楽しい!

先日、この悩みをとあるフェスの出演アーティストに話したら、「こういうイベントこそ友達誘えばいいじゃないですかー」「誘われたら行ってみたい人は多いはずですよ?」と言われ、またしても、陽キャの人との思考回路の違いを見せつけられたのでした。それができないから悩んでる!!

でもいいんです、取材で行ける機会に一人だけど取材ですって顔で会場をうろついて、フェス本来の楽しみの1/3だけ味わって帰ってくるんで。

結論。コンサートに友達を誘える人はうらやましいけれど、ソロ活も悪くないです。 

デリーの公園で観たインド音楽のフェス
高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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