トッパンホールからTOPPANホールへ。25周年を迎え2025/26シーズン主催公演ラインナップ発表
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
3月21日、トッパンホールにて、2025/26シーズン主催公演ラインナップ発表の記者会見が開かれた。
まず、この4月1日にTOPPANのグループブランド統一の観点から名称を「TOPPANホール」に変更することが発表された。
この秋に開館25周年を迎えるTOPPANホール。上質な木をふんだんに使った贅沢な空間、豊潤さと明晰さを兼ね備えた室内楽にうってつけの音響をもち、これまで独創性に富む多くの主催公演を重ねてきた。2016年には「サントリー音楽賞」をコンサートホールとして初めて受賞している。
プログラミング・ディレクターの西巻正史氏は、「2001年5月に着任し、体中から音楽を発信したい、伝えたいと思っているアーティストを並べてラインナップを作ることを始めた。ホールの中で音楽をつくり、それを聴いていただく。ホールというのはメッセージを発する場であり、創造する場であるという考え方にもとづいてホール運営をスタートした。地道に室内楽の奥義を極めていくことが、クラシック音楽の奥深さを伝え、今の時代において意味のあるものだと訴えていく手段であると思っている。なんでもすぐに手に入る今のような時代に、ホールに足を運ぶことでしか味わえないライブの面白さを追求し、オンリーワンのホールを作ろうとしてきた」とこれまでを振り返った。
また、ベーゼンドルファー・ジャパン所有の1909年製ベーゼンドルファーModel250がトッパンホールへ貸与されることも発表され、このピアノを使用した川口成彦/兼重稔宏(ピアノ)、笹沼樹(チェロ)の演奏が披露された。
ベーゼンドルファー250は、かつて「リスト・フリューゲル(リスト・グランドピアノの意)」の愛称で親しまれ、当時創業者の息子で2代目を継いだルートヴィヒ・ベーゼンドルファーと、フランツ・リストとの長年にわたる友情を物語る。通常のモダンピアノより4鍵盤拡張された92鍵盤で、深い倍音、あたたかなウィーンの響きが堪能できる。
モンポウ「歌と踊り 第9番」とショパン「ノクターン第2番」を演奏した川口成彦は、「このピアノは繊細な表現にもチャレンジできる。たとえば、ショパンの曲ではペダルを踏みながらスタッカートをすることがよくあるが、現代のピアノだとスタッカートがぼやけてしまう場合がある。このピアノはペダルを踏んだほうがスタッカートがよく出る。これはほんの一例だが、古楽器奏者として古楽器にアプローチするときの色々な表現の模索がこの楽器でもできる」と述べていた。
今後さまざまなアーティストの手によって、このピアノからどのような表現が生まれるのか、とても楽しみだ。
以下、月ごとにTOPPANホール2025/26シーズンの主催公演ラインナップをご紹介する。
2025年
10月
■TOPPANホール25周年 室内楽フェスティバル(全5公演)
フォーレ四重奏団を核に、共演者を加えたさまざまな編成のプログラム。
出演:フォーレ四重奏団、アネッテ・ダッシュ(ソプラノ)、日下紗矢子(ヴァイオリン)、ニルス・メンケマイヤー(ヴィオラ)、笹沼樹(チェロ)、石川滋(コントラバス)
11月
■ハーゲン プロジェクト フィナーレ(全5公演 Part1)
この20年をTOPPANホールとともに歩んできたハーゲン・クァルテットが、2025/26シーズンをもって解散することを決めた。それぞれ残りの人生を、やり残したことを成し遂げることに充てたいというのが理由。名作曲家であり、当代有数のクラリネット奏者であるイェルク・ヴィトマンによる「クラリネット五重奏曲」の日本初演を含む3公演。
出演:ハーゲン・クァルテット、イェルク・ヴィトマン(クラリネット、第3夜のみ)
■イェルク・ヴィトマン(クラリネット)mit 青木尚佳(ヴァイオリン)&笹沼樹(チェロ)&永野英樹(ピアノ)
メシアン《世の終わりのための四重奏曲》を含む室内楽プログラム。
12月
■ジャン=クロード・ペヌティエ(ピアノ)
ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第32番」を含む、今回のために編まれた特別なプログラム。翌日にはマスタークラスも開かれる。
■キリル・ゲルシュタイン&藤田真央(ピアノ)
師弟によるピアノ・デュオ。藤田はまだ高校生だった2016年にTOPPANホールに初登場している。
2026年
1月
■TOPPANホール ニューイヤーコンサート2026
このたび貸与される1909年製ベーゼンドルファーの持ち味をいかしたプログラム。
出演:山根一仁(ヴァイオリン)、川口成彦/兼重稔宏(ピアノ)ほか
2月
■ティル・フェルナー(ピアノ)mit Trio Rizzle [毛利文香(ヴァイオリン)/田原綾子(ヴィオラ)/笹沼樹(チェロ)] &郷古廉(ヴァイオリン)
3月
■ベルリン古楽アカデミー(全2公演)
■ゴーティエ・カプソン(チェロ)&フランク・ブラレイ(ピアノ)
ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲。10年前にこのプログラムをレコーディングしている二人の時を経た進化も聴きどころ。
■北村陽(チェロ)
4月
■アンナ・プロハスカ(ソプラノ)with ジョヴァンニ・アントニーニ指揮 イル・ジャルディーノ・アルモニコ
バロック・オペラのアリアによるプログラム。
5月
■レオンコロ弦楽四重奏団
■ニコラ・アルシュテット プロジェクト(全2公演)
出演:ニコラ・アルシュテット(チェロ)、イリア・グリンゴルツ(チェロ)、ヨーナス・アホネン(ピアノ)ほか
6月
■トリオ・ヴァンダラー(ピアノ三重奏団)
7月
■ハーゲン プロジェクト フィナーレ(全5公演 Part2)
ハーゲン・クァルテットの最後のステージになるかもしれない注目公演。
Vol.136~141(6公演)
各12時15分開演 無料開催(要事前申込)。1909年製ベーゼンドルファーを活かした特別企画を3本含む予定。
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