最近人気のカセットテープを聴いてみよう!その歴史と聴くためのおすすめ器機も紹介
最近カセットテープが人気だとか。そこで今回はマクセル、デノン、ソニー、TDKという4つのメーカーの高品質のカセットテープを解説。また、カセットテープ体験におすすめのラジカセとヘッドホンステレオもご紹介します。
カセットテープは小型のオープンリールをケースに収めたもの
最近カセットテープが人気だとか。そういえば中古市場でもカセットデッキ、ラジカセ、ウォークマンからカセットテープそのものもとても高値で取引されています。
でもカセットテープに興味はあるけど、使ったことがない、という方も多いのではないでしょうか。そこで今回はカセットテープを取り上げたいと思います。
1950年代、録音テープといえばオープンリールテープのことでした。昔の映画やドラマなどで見たことがあるかもしれませんが、大きくて、テープがむき出しのため取り扱いが面倒で、録音再生する機械も大きなものでした。
そこでいろいろなメーカーがもっと使いやすいように、テープを小さくしてケースに入れたものを開発します。なかでもオランダのフィリップスが開発した「コンパクト・カセット」というテープは非常によくできているうえに、特許を無償公開したため世界中で作られるようになりました。これがいわゆる「カセットテープ」です。
はじめの頃のカセットテープは音質が悪く、音楽に使うのは難しいと言われていました。もともとフィリップスは会議記録やインタビューなどに使うためにカセットテープを開発したのです。
カセットテープは4つの性能に分かれている
さて、さっそくカセットテープを見てみましょう。
かつて日本は世界最大のカセットテープ生産国でした(1989~90年くらいがピーク)。またソニー、TDK、マクセルという御三家に加えて富士フイルム(アクシア)、太陽誘電(That’s)、松下電器(ナショナル)など10を超えるメーカーがカセットテープを販売していました。
しかし、ちゃんとしたブランドで高品質なカセットテープを販売しているのはマクセル1社。しかも1モデルだけです。
これがマクセルで唯一生産されている「UR」というテープです(最新モデルは若干デザインが変わってます)。カセットテープは性能によってタイプ1(ノーマル)、タイプ2(ハイあるいはクロム)、タイプ3(フェリクロム)、タイプ4(メタル)と4種類ありますが、URはもっともスタンダードなノーマルです。
これは1991年に発売されたデノン(当時はデンオンと呼んでました)のHG-Xというカセットテープで、ハイ・ポジションになります。ハイ・ポジションはノイズが少なく、高音の伸びが良いのでクラシック音楽の録音などに向いていると言われています。
1978年に発売されたソニーのデュアドは数少ないフェリクロムです。フェリクロムは、低音の厚みがあるノーマルと高音に伸びがあるハイ・ポジションの良いとこ取り、を謳っていました。
国産初のメタルテープがこのTDKの MA-Rです。
メタルテープは低ノイズ、ワイドダイナミックレンジで、文句なく高性能ですが、テープそのものが高価だったことと、使える器機が限られていたので、ややマニア向けのテープになっています。
レコードなどと同じように、レコード・レーベルが楽曲を記録したテープも販売されています。最近では山下達郎が新譜をカセットテープでも発売し話題になりました。
URやMA-Rをご覧いただくとわかると思いますが、カセットテープの構造は、小型のオープンリールをケースに収めたものと言ってよいでしょう。
コンパクトで持ち運びが楽、そのうえ技術の進歩で音質も向上したので、どんな場所でも音楽が楽しめるツールとして、1970年代になって爆発的に普及しました。
次はどんな器機でカセットが使われたのか見てみましょう。
カセットテープ体験におすすめのラジカセ2台
最近人気なのは、1970年代の大型ラジカセ*だそうです。たとえばこれは1977年に発売されたソニーのCF-6500で「ZILBA’P(ジルバップ)」という愛称がつけられたヒットモデルです。大型ではあるのですが、重量は電池を入れても7kg程度で常識的な範囲だと思います。
カセットを再生してみると、とても迫力のある音を鳴らします。正確で細かい音までをノイズレスで再生するデジタルの対極にあるような音ですが、レコードよりも押し出しの強い音は人気が出たのも頷けます。
こちらは1975年に発売された初期のステレオ・ラジカセCF-2580です。1980年代のはじめにかけて人気になる大型ラジカセに比べるとまだまだ小型で、電池を入れても5kg強ですが、音の迫力はすでに十分。
このころのラジカセは、もちろんラジオを録音再生するのにも使われましたが、外部入力といってレコードプレーヤーなども接続できたので、コンポを買えない若者が自分の部屋に置く「ステレオ・コンポ」として使うことも多かったのです。
そのためラジカセといえど、とても多機能で高音質でした。そのあたりが今カセットテープを使おう、というユーザーのニーズにも合っているのでしょう。
とりあえずちゃんと作動するこのあたりの大型ラジカセを1台持っていると、カセットテープで遊ぶには十分です。
ウォークマンから始まったヘッドホンステレオ百花繚乱
音楽録音用カセットデッキ*、高性能なラジカセに続いてカセットテープが若者の必須アイテムになったもうひとつのきっかけがウォークマンの登場です。
1979年、それまでカセットテープは録音できることに意義がある、という常識を打ち破った製品がソニーから登場しました。TPS-L2、初代ウォークマンです。
スピーカーを内蔵していないためヘッドホンでしか聴けない、というのも画期的でした。
*カセットデッキ: カセットテープの録音・再生装置。増幅装置(アンプ)に接続し、録音時にはマイクを、再生時にはスピーカーを接続して用いる。
当初社内でも「売れない」と言われたのですが、当時ソニーの会長だった盛田昭夫氏の英断で発売に踏み切ったという逸話があります。結果、大ヒットとひとことで言えないほど大きなブームとなり、多くの人のライフスタイルを変えてしまいました。
こうしたヘッドホン専用のコンパクトなカセットプレーヤーを、メーカーにかかわらず「ウォークマン」と呼んでしまうのはこの初代ウォークマンの大ヒットがあまりにも印象的だったからです。一般名称としては「ヘッドホンステレオ」と呼ぶのが適当です。
そんなウォークマンの大ヒットを他のメーカーが黙って見ているはずもなく、さまざまなメーカーが追随しました。中でも、当時ソニーのグループ会社だったアイワの「カセットボーイ」はウォークマンより安く、むしろウォークマンより多機能なモデルが多いこともあって、とくに若年層を中心に大きな支持を得ました。
ちなみにアイワは世界で最初にラジカセを作ったメーカーと言われています。ソニーよりも若い人に人気のブランドでした。
また家電メーカーもこぞって参入。写真は左が三洋電機の「JJ」、右がシャープの「Being」。東芝の「ウォーキー」も有名です。中でも松下電器は並々ならぬ執念でウォークマンの追撃を続けます。
1980年頃は「ウェイ」、その後、「GO」、「ジャンプ」とシリーズを連発。ですがウォークマンの牙城を崩すには至りません。
ところが1993年にMD*が発売されます。圧倒的に便利なMDは大ヒット。1995年中頃にはポータブルモデルも普及し、カセットテープのヘッドホンステレオは徐々に勢いを失います。そのような状況で、ついに松下電器のヘッドホンステレオが大ヒットします。それが「ショックウェーブ」シリーズです。
*MD:ソニーが開発した直径64ミリのミニディスク。再生だけでなく録音もできた。
まるでG-SHOCKのようなタフなイメージと重低音を特徴としたボディは、それまで小型化に邁進してきたヘッドホンステレオの流れとはまったく違いました。もともとアメリカの若者の間で大ヒット。そのブームを逆輸入した形で日本でもヒットしました。
写真はシリーズ最後期の1998年に登場したRQ-SW77というモデルです。
*
さて、ざっとカセットテープ、ラジカセ、ヘッドホンステレオをご紹介してきました。
当初便利なだけだったカセットテープは、やがて「カッコいい」アイテムとして若者の必需品となっていきました。そこにはラジカセやヘッドホンステレオの魅力も大きかったと思います。
次回はこうした器機を使って、自分の好きな曲を詰め込んだカセットテープを作ってみたいと思います。
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