2019.12.23
週刊「ベートーヴェンと〇〇」vol.2
ベートーヴェンと鳥の声
年間を通して楽聖をお祝いする連載、「週刊 ベートーヴェンと〇〇」。ONTOMOナビゲーターのみなさんが、まざまなキーワードからベートーヴェン像に迫ります。
第2回は、ベートーヴェンと鳥の声。《運命》の動機は「鳥の声」説があるようです。
ベートーヴェンを祝う人
ベートーヴェンを祝う人
増田良介 音楽評論家
ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会...
《運命》の動機は鳥の声?
《田園》の第2楽章〈小川のほとりの情景〉では、フルートがナイチンゲール、オーボエがウズラ、クラリネットがカッコウの声をまねる。川沿いを散歩していると心地よい鳥の声が聞こえてくる場面だ。違和感はない。
ところで、《田園》と同じ演奏会で初演されたもうひとつの名曲がある。ご存じ《運命》だ。驚いたことに、当時、《運命》冒頭のタタタターンの音型も鳥の声から取られたという説が流通していたらしい。こっちは違和感がありまくりだ。
この説の真偽はわからない。しかしこんな説があったということは、当時の人々が、鳥の声を現代人とはだいぶ違うものとして捉えていたという可能性を意味する。だとすると、《田園》の鳥の声も、単にさわやかな音の点景ではなさそうだ。
手がかりになる曲がある。ベートーヴェンが《田園》の少し前に書いた歌曲《うずらの鳴き声》WoO129(詩:ザウター)だ。この曲にも《田園》と同じく、うずらの鳴き声を表すタッタターという音型が何度も出てくる。そしてそこに宛てられた歌詞は「神を恐れよ」「神を愛せよ」「神を讃えよ」……。どうやらベートーヴェンの鳥たちは、ただ機嫌良くさえずっていただけではなかったようだ。
ヨーロッパウズラ
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