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2023.03.17
音楽ホール 最新事情2023~ヤマハホール

ヤマハホール~楽器メーカーならではのネットワークで独自の企画。カフェも楽しめる

ヤマハホールはヤマハ銀座店の階上にあり、ヤマハが楽器・音響機器メーカーとして幅広いジャンルのアーティストと関係が深いことが、コンサート企画にも反映されています。2階のカフェでアフター企画が味わえるのも魅力。そんなヤマハホールの今シーズンについて、マーケティング統括部主事の山田美輪子さんに伺いました。

片桐卓也
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...

ヤマハホールの内観

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「ヤマハ」あるいは「YAMAHA」の名前を人生で一度は誰もが目にするのではないだろうか? 学校の音楽教室のピアノ、弦楽器、あるいは吹奏楽部に入ったことがある人なら、それぞれの管楽器。さらに言えばヤマハ株式会社全体では、音響機器、半導体、自動車部品なども手がけているので、ヤマハと無関係に人生を過ごすことは難しいかもしれない。

そんな「ヤマハ」の魅力の一端を具体的に教えてくれる場所、それが東京・銀座のヤマハ銀座店である。そして、その階上にあるのが木に包まれたような感覚となるヤマハホールだ。コロナ禍を経て、ようやく以前のコンサートのスタイルに戻ってきたヤマハホールでは、2023~24シーズンも多彩な音が鳴り響く。

山田美輪子さん(ヤマハ・マーケティング統括部主事)に、今シーズンのヤマハホールの企画について、語っていただいた。

お話を伺った、ヤマハ・マーケティング統括部主事の山田美輪子さん(撮影:ヒダキトモコ)

ブラスファン待望のコンサート

山田「今シーズンは、新型コロナの影響で延期されていた、特に海外アーティストのコンサート企画がようやく実現できる、そんなコンサートも多くなります。特に『ボストン・ブラス meets エリック・ミヤシロ』(5/20)というアメリカを代表する金管五重奏団に、日本で活躍するトランペットの第一人者エリック・ミヤシロさんが加わるコンサートは、管楽器のファンの方にとって待望のコンサートになると思います」

エリック・ミヤシロ(左)とボストン・ブラス(上)の共演は、ブラスファン待望のコンサートになるだろう

平日午後の「エレガント・タイム・コンサート」はアフター企画が復活

山田「また、お昼の時間に気軽に楽しんでいただける『エレガント・タイム・コンサート』(7/10)では古川展生さんが中心となったチェロ・アンサンブルが出演してくださいます。このコンサートでは、アフター企画として、2階にあるカフェ『NOTES BY YAMAHA』でのパーティ(約30名限定)も行なっております。コロナ禍もありこのアフター企画はここ数年、数は少なめでしたが、とても楽しみにしていらっしゃる方も多いと思います。ステージ以外でも、アーティストや音楽の魅力を伝えられる機会をこれからも徐々に増やしていきたいと考えています」

2022年3月にカフェで行なわれた 宮田大、大萩康司アフター企画
の様子

アーティストと密に相談し、一緒に新しいプログラムに挑戦するホール

ヤマハ銀座店は、リニューアルしてからカフェやイベントスペースが作られ、楽器の展示の雰囲気もかなり変わってきたので、お店だけを見に行くのも楽しいはず。楽譜を買いに行くだけでは物足りないと思っている方も多いだろう。

山田「今シーズンの特徴的な企画としては、ピアノの仲道郁代さんによる『ベートーヴェン“ピアノ室内楽”全曲演奏会』があり、その第2回が4月26日に、冬にも公演が予定されています。第5回まではヤマハホールで予定されていますので、ぜひご注目いただきたいと思います。

今シーズン、ベートーヴェンのピアノ室内楽全曲演奏会を行なっている仲道郁代

また、ヴァイオリニストの伊藤亮太郎さんもここ数年、アンサンブル中心のコンサートを考えてくださっていますが、人気曲だけではなく、なかなか演奏会では演奏されない曲を取り上げたり、アーティストの方と密にプログラムや演出を話し合い、彼らの創造性を大事に新しい挑戦を続けていけるのも、このコンサートホールの魅力となっていると思います」

 

楽器・音響機器製作を通した世界的なアーティストとのネットワークが強み

いわゆるホール主催のコンサート企画はそれほど多くはないと山田さんは言うけれど、それでもこの客席数(333席)を考えると、このサイズでこの演奏家たちを聴くことができるというとても贅沢な感じがある。

秋にはフランスを代表するピアニストの一人、ピエール=ロラン・エマールが登場(12/1)。またヴァイオリンの三浦文彰を中心としたクァルテットの公演(12/11)など、独自のコンサート企画も目をひく。

山田「ヤマハの場合、楽器の開発、販売などメーカーとしての活動を通じた世界的なアーティストとのネットワークがあります。楽器の種類も西洋音楽のあらゆるジャンルを網羅していると言ってもいいくらいなので、アーティストとの関係性が近く、深いという点が、ヤマハホールのコンサート企画の特徴かもしれませんね。時には公演に向けて楽器を調整したり、選定したり、楽器の面からもプログラムに合うものを音楽家の方と一緒に考え、取り組んでいます」

ピョートル・アンデルシェフスキをはじめ、海外ピアニストのリサイタルが近い距離感で楽しめるのも人気

楽器店の中にあることで音楽への関心をキャッチしやすい

今回の取材のなかで興味深かった話題としては、マンガ原作でアニメ化もされた『ぼっち・ざ・ろっく!』に関連するイベントを東京、名古屋、大阪のヤマハのブランドショップで実施したところ、想像以上の集客で驚いたという話題だ。

山田「ヤマハ銀座店では予約制で行ないましたが、それでも初日は開店前から行列ができるほどの人気でした。これまで楽器にあまり興味をお持ちでなかった方にも、意外なところで楽器とのつながりができる、特にマンガやアニメーションからというのは新しい層の方が興味を持つきっかけになり、ちょっと嬉しいですね。日常的には意識していなくても、どこかで音楽に関心を持たれている方はどの世代にも多いと思うので、そうした方の関心を音楽、楽器に惹きつけるような存在として、コンサートホールも常にさまざまなアプローチをしていきたいですね」

一部ではバンドブームの再来とも言われているらしく、何かきっかけさえあれば、楽器を手に取りたいと思っている方は多いのだろう。ジャズをテーマにしたアニメーション作品、オーケストラを題材にしたテレビドラマなども現時点で見られる。そういうところから音楽に関心を持つ方をキャッチする場所として、楽器店の存在、コンサートホールの存在は大きいのかもしれない。

また、ヤマハ銀座店1階カフェ・スタンドでは、オリジナル・スイーツ“DORA”YAKIも販売している。スイーツ・ファンはぜひ試してみていただきたい。舌でも音楽が味わえる(?)かもしれない。

銀座駅から徒歩5分のヤマハ銀座店。この7階にヤマハホールはある
ヤマハホール

[運営]ヤマハ(株)

[座席数]333席

[オープン]1953年

[住所]〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14

[問い合わせ]Tel.03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)

https://www.yamahamusic.jp/shop/ginza/hall.html

片桐卓也
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...

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