読みもの
2021.06.26
鳥木弥生の「歌曲で解決! 恋愛お悩み相談室」第6回

別れた恋人の動向が気になる!~「もう彷徨うのはやめよう」を聴いて克服

読者から寄せられた恋愛のお悩みを、メゾソプラノの鳥木弥生さんが歌曲をもとにスパッと解決する連載。 鳥木さんがお悩みに効く歌曲を処方します。
第6回は、浮気が発覚して別れを告げたにもかかわらず、その元恋人の動向が気になって複雑な気持ちを抱えているというお悩み。解決の糸口は、「私が相談者様のキンカンになりましょう!」ってどういうこと!? 恋愛マスターが女性作曲家ホワイトによるしっとりとした歌曲で前向きに吹き飛ばします!

恋愛マスター
鳥木弥生
恋愛マスター
鳥木弥生 メゾ・ソプラノ歌手

武蔵野音楽大学卒業後、ロシア、セルヴィアなど東欧各地におけるリサイタルで活動を開始。第1回E.オブラスツォワ国際コンクールに入賞し、マリインスキー歌劇場において、G....

ライオネル・ウォールデン《黄昏時の星と三日月》(1925年)

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今回のお悩み

いつも楽しく拝読させていただいております!

私には付き合っていた人がいましたが、相手の浮気が発覚し、私は彼を罵ったあげくに別れてしまいました。でも、いまだに彼のことが忘れられません。

 

SNSでのつながりも断ちましたが、共通の友達がいるので彼の動向が目に入ってしまいます。少し覗いてみたら、あちこちの女性との関係が見え、私とはもう別れているのに、腹が立ちました。まだ楽しかった思い出を忘れられない気持ちと、別れを選んだときの悲しかった気持ちと、今たくさんの女性に手をつけようとしている(相手にされているかはわかりませんが!)ことへの憎しみとが入り混じって、複雑です。どうしたらいいでしょうか?

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恋愛マスターからのおことば

弱まった「好き」は「痒み」みたいなもの

ご愛読ありがとうございます!

別れた彼の見たくない動向が見えてしまう……。SNSは便利ですが、時に厄介ですね。

ところで、「痒み」というのが実は「痛み」の弱いものだ、というのをお聞きになったことはあるでしょうか? 私は常々、「好き」という言葉にも、それが弱くなったときに使う違う言葉があればいいのに、と思っています。

クリアーな「好き」が「痛み」だとしたら、「好きだったことを忘れられない」「好きだけど素直になれない」「なんだか彼が気になってちゃう……私、好きなのかな?」、これらはいわば「痒み」です。たかが「痒み」です。

ただもちろん、「痒み」のほうが嫌だし、イライラしたりもしますよね。でもそれは、すでに、弱いんです。 そんなに長く待たなくても治りますし、特に相談者様は彼をしっかり罵って別れられているので、ある意味コミュニケーション能力の高い方だと推察します。

ちょっとスッキリする、痒み止め的なお友だちの1人もいれば、あっさり完治でしょう。なんなら私が相談者様のキンカンになりましょう!

さて、そんなキンカンがあなたに捧げる1曲は、女性スキャンダルの合間に創作をしていたような天才バイロンの有名な詩に、フランス生まれでイングランドで活動した女性作曲家モード・ヴァレリー・ホワイトが、自然で溢れ出る泉のように力強い曲を与えた「もう彷徨うのはやめよう」です。

ジョージ・ゴードン・バイロン( 1788~1824年)
イギリス・ロマン主義を代表する詩人。『チャイルド・ハロルドの巡礼』や『マンフレッド』、『マゼッパ』など、音楽作品のもとになった著作も多い。
©Newstead Abbey
モード・ヴァレリー・ホワイト(1855~1937年)
フランスで生まれ、1歳のときにイングランドに移る。幼少期からピアノを演奏し、17歳で初めて作曲。王立音楽院で学び、女性初のメンデルスゾーン奨学金を授与される。音楽家や作曲家のほかに、小説や戯曲の翻訳家としても活躍した。

放浪と放蕩の限りを尽くしながら膨大な数の名作を残し、36歳で革命の戦士として命を落としたバイロンの作品を、同じく各国を巡りながらさまざまな言語と音楽様式を身につけ、発展させ、82歳で亡くなるまで着実に作曲活動を続けて名声を得たホワイトは、どのように感じ、どのような思いでこんなにも美しい曲をつけたのでしょうか?

詩の内容は「痒み」に近付きかけている恋の歌のようです。

今なら差し詰め、月明かりではなく、スマホの明かりの中を彷徨ってしまうところ……?

処方された歌曲

ホワイト作曲「もう彷徨うのはやめよう」(詞:バイロン)

「もう彷徨うのはやめよう」歌詞対訳

So, we’ll go no more a-roving

So late into the night,

Though the heart be still as loving,

And the moon be still as bright.

 

だからさ、もう彷徨うのはやめようよ

もうこんなに夜も更けたし

確かに気持ちはまだ欲してるし

月だってこんなにピカピカだけどさ

 

For the sword outwears its sheath,

And the soul wears out the breast,

And the heart must pause to breathe,

And love itself have rest.

 

剣は自分の収まるべき鞘を削ぐ

つまり魂は胸をすり減らすんだ

つまり心臓だって息をつくために休まなきゃだし

つまり愛そのものだって、休憩ありきだよ

 

Though the night was made for loving,

And the day returns too soon,

Yet we’ll go no more a-roving

By the light of the moon.

 

確かに夜ってのは愛するためにあるし

あっという間に昼になっちゃうけどさ

でもね、もう彷徨うのはやめようよ

こんなに月が光ってるからってさ

恋愛マスター
鳥木弥生
恋愛マスター
鳥木弥生 メゾ・ソプラノ歌手

武蔵野音楽大学卒業後、ロシア、セルヴィアなど東欧各地におけるリサイタルで活動を開始。第1回E.オブラスツォワ国際コンクールに入賞し、マリインスキー歌劇場において、G....

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