恋心は相手への敬意でもある!〜恋の始まりを思い出し、恋人を讃えながら「もうちょっと私を大切にして!」とねだる歌
読者から寄せられた恋愛のお悩みを、メゾソプラノの鳥木弥生さんが歌曲をもとにスパッと解決する連載。 鳥木さんがお悩みに効く歌曲を処方します。
第14回は、恋人に本心を言えないでいる友人にもっと幸せをつかんでもらうにはどうしたらいいか? というご相談。恋愛マスターが「リスペット」という形式で書かれた古い恋の詩を処方します!
武蔵野音楽大学卒業後、ロシア、セルヴィアなど東欧各地におけるリサイタルで活動を開始。第1回E.オブラスツォワ国際コンクールに入賞し、マリインスキー歌劇場において、G....
いつも素晴らしい鳥木さんの名解答に、もっと読みたいなと思いながら初めて投稿します。
40代後半の友人の話です。彼女には付き合って16年のひとつ年下の恋人がいます。結婚をしたいけど自分からは言い出せないと言い、彼とは一緒に住んでいるわけでもなく、どこか寂しげにも見えます。
古くからの友人として「彼に本心を伝えたら」と勧めますが、今のままで良いと言うのです。過去の恋人とつらい別れをした経験があってか、臆病になっている気がしてなりません。
もちろん本人次第ではありますが、そんな彼女が幸せを掴み取りたくなるような歌曲があれば教えてください!
恋愛マスターからのおことば
ご愛読ありがとうございます!
つまりこの度は、いつもご友人の恋愛相談にのっていらっしゃる相談者様が、さらに私にご相談くださった、ということですね。恋愛相談での「友達の話なんだけど」は、その実ご自分の話というのがセオリーですが、私は友人の話と言われたら、友人の話と信じる派ですよ!!
さて、相談者様は「ご友人」と、どのようにお話をされていますか? 会ってお茶をしながら? 電話で? LINEで?
もしもご相談者様が「ご友人」とまるで一心同体のような関係で、言葉にすることもなく頭の中だけでテレパシーで相談をされているとしたらですが……まずはひとつ、相談者様にお勧めしたいことがあります。あ、「ご友人」へのおすすめです!
それは、自分の状況や気持ちを「文章」にすることです。一番のおすすめは詩にして曲をつけて歌うことなんですが、ちょっとハードルが高いでしょうか?
今回、ご相談者様に……いえ、「ご友人」に処方いたします歌曲は、恋の始まりを思い出し、恋人を讃えながら「今はもう恋人同士なんだから、もうちょっと私を大切にして!」とねだる、「あなたがあの角から現れるのを見た時」です。
歌詞は、ルネッサンス時代にイタリアで流行した「リスペット」という形式で綴られた、読み人知らずの古い恋の詩から採られています。
曲はぐっと新しく1902年「スザンナの秘密」などのコミカルなオペラ作品で知られる、ヴェネツィア生まれのエルマンノ・ヴォルフ=フェラーリによって書かれました。
一目惚れの湧き立つときめきと、深まった愛、そして生まれた欲! という起伏に富んだ恋心が、短い詩と曲の中にギュッと詰め込まれています。
もし相談者様が……いえ「ご友人」が、16年の恋をリスペット形式で綴ったら、その最後の行には、どんな気持ちが溢れてくるのでしょうか?
ちなみにイタリア語で「リスペット」とは「敬意」という意味で、多くは恋の歌に使われる詩の形式がこう呼ばれるのは「恋心」とは相手への「敬意」でもあるからです。恋が始まって何年経とうと、相手を敬う気持ちに変わりがなければ、形式にとらわれない関係でも良いのではないでしょうか? もしかしたら「ご友人」も、どこかでそう思われているのかもしれませんね。
ぜひ次回はご相談者様、ご自身のお話を聞かせてください! お待ちしています!
処方された歌曲
E.ヴォルフ=フェラーリ作曲、作詞者不明「あなたがあの角から現れるのを見た時」
Quando ti vidi a quel canto apparire
Ti assomigliai alla spera del sole.
私があなたを見たのは
あなたがあそこの角から
太陽のように日輪をまとって現れた時
Abbassai gli occhi e non seppi che dire:
Allora incominciava il nostro amore.
私は目を伏せ 言葉を失って
その時に私たちの恋は始まっていた
Ora che il nostro amor è cominciato
Vogliami un po’ di ben giovin garbato.
もう私たちの恋は始まっているのだから
優美な若者よ
私をもう少しだけ愛してください
日時: 2024年4月20日(土)11:30
会場: 新国立劇場3階レストラン 「Maestro (マエストロ)」
出演: 鳥木弥生、伊藤達人、髙田絢子
チケット: 5,000円(ミュージック2,800円、ランチ2,200円)
問い合わせ: pivotopera@yahoo.co.jp
詳しくはこちら
日時: 2024年6月4日(火)
会場: 東京オペラシティ リサイタルホール
曲目: G.ヴェルディ 《ドン・カルロ》友情の二重唱、G.プッチーニ 《蝶々夫人》花の二重唱、G.プッチーニ《つばめ》ドレッタの夢、G.プッチーニ《トゥーランドット》誰も寝てはならぬ、G.ビゼー 《カルメン》ハバネラ、沖縄民謡、ミュージカル、ほか
出演: 小林厚子(ソプラノ)、佐藤亜希子(ソプラノ)、鳥木弥生(メゾソプラノ)、藤原藍子(ピアノ)、与儀巧(テノール)、原田勇雅(バリトン)
チケット: 一般 4,000円、Under30 3,000円
チケット1枚につき1,000円を令和6年能登半島地震支援金としてお預かりし、「のとルネ」協力のもと被災者の方々の生活と心を支える資金として活用させていただきます。
問い合わせ: info@yayoitiriki.com
詳しくはこちら
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly