2020.03.31
林田直樹のミニ音楽雑記帳 No.4
志村けんさんをしのぶ~世の中を明るくしてくれた音楽的なコメディアン
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
子どもの頃から、ザ・ドリフターズが好きでたまらなかった。
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かつて、土曜の夜の人気番組「8時だョ!全員集合」(TBS系列)は、1970年代前半に小学生だった自分にとって「生きがい」だった。あんなに熱心に毎週観た番組はない。学校でどんなに嫌なことがあっても、必ず土曜の夜にはドリフが笑わせてくれた。大人たちは眉をひそめていたけれど——ドリフがいたから、学校を頑張れた。
その中心にいたのが、志村けんさんだった。
少年少女合唱隊のコーナーで歌っていた「東村山音頭」も、「カラスの勝手でしょ♪」も、カトチャンとの「ヒゲダンス」も、後からよく考えてみれば、みんな音楽があるからこそ成り立つコントだった。
「全員集合」はライブな音楽番組でもあった。コントのあとには、ゲストの歌手が、生バンドをバックに吹き替えなしに歌った。オープニングもエンディングも、全員が声を合わせて歌うから、気持ちがお茶の間に伝わった。あの手作り感が、音楽にあふれている感が、番組のキモだった。
そもそもドリフは音楽グループである。なかでも志村けんさんはビートルズやブラックミュージック全般にも造詣が深く、人知れず音楽評論も書いていた。お笑いと音楽は、そんなに遠い関係ではなく、むしろ本来は表裏一体なのかもしれない。
この春から始まったNHK連続テレビ小説「エール」では、「この道」「赤とんぼ」で知られる作曲家・山田耕筰の役を演じ、一部収録も終えていたという。志村けんさんとクラシック音楽とのつながりが、新たに始まろうとしていた矢先の訃報。まだ70歳、あまりにも残念で、寂しい。
林田直樹のミニ音楽雑記帳
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