N響が6つの名曲の名演映像を、無料オンデマンド配信開始!
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
フル・オーケストラの豊かな響きを、十分な条件のもと、生のコンサートで味わうのが難しくなっている昨今、いよいよNHK交響楽団も、従来の放送だけでなく、インターネットでの映像配信に本格的に乗り出した。
「世界の巨匠とN響が奏でるマスターピース」と題して、近年のN響の演奏を収めた映像(HD画質)が、N響ホームページにおいて無料でオンデマンド配信されている。すでに第1回は公開中だ。
そのラインナップをよく見てみると、単なるコンサートの再現ではなく、「名指揮者とスタンダードなオーケストラ名曲」の組み合わせによる、30分~1時間程度の視聴プログラム、というコンセプトのもとに組まれているのがわかる。
- 7/21~8/4
トン・コープマン指揮 モーツァルト「ジュピター」※ハイレゾ音源配信あり - 8/4~18
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 ベートーヴェン「英雄」 - 8/18~9/1
井上道義指揮 ベルリオーズ「幻想」※ハイレゾ音源配信あり - 9/1~15
トゥガン・ソヒエフ指揮 リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」 - 9/15~29
アレクサンドル・ヴェデルニコフ指揮 チャイコフスキー「悲愴」 - 9/29~10/13
ファビオ・ルイージ指揮 リヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」
※すべてのプログラム日程は午前11時に切り替わる
※ハイレゾ音源による映像配信は、株式会社インターネットイニシアティブが運営する「PrimeSeat」にて同時に無料配信
2週間ごとに変わっていくというのは期間限定としてはちょうどいい長さだし、1曲だけ、というのもネット視聴には手ごろな長さである。曲目も親しみやすいものばかり。いまのN響の充実ぶりを知るには、最良のきっかけにもなっている。
早速、配信が始まっている第1回を視聴してみた。
トン・コープマンは、バッハのオルガン曲およびカンタータの演奏に実績ある大ベテランの古楽系指揮者。いい意味で愛嬌のある自由闊達な雰囲気を持った人であることが、映像からもよく伝わってくる。この人は昔も今もまったく変わらず若々しい。
そこにN響が敏感に反応して、巧者ぞろいの無類の安定感のもと、生き生きとしたモーツァルトを実現している。名プレイヤーたちの顔が見えるのもうれしい。元ウィーン・フィルのゲスト・コンサートマスター、ライナー・キュッヒルは、N響に参加するようになって久しいが、やはり存在感の凄い人だ。
今後のラインナップはどれも見逃せないが、個人的には、第2回のブロムシュテットの「英雄」が特にお勧めである。92歳にしてなおも精悍な巨匠が、最小限の動作で合図を送るのを、一瞬たりとも見逃さずに食らいついて音楽に反映しようとするN響の執念に、実演でも心打たれたのが記憶に残っている。
カメラワークによって、ブロムシュテットがどう振っているのかを、ライブ以上につぶさに観察できるのが楽しみである。
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