文明化された動物たち──『ズートピア』とズーラシアンブラス
人気音楽ジャーナリスト・飯尾洋一さんが、いまホットなトピックを音楽と絡めて綴るコラム。第4回は、ディズニーの名作動物アニメーション『ズートピア』と、動物たちのオーケストラ「ズーラシアンブラス」。ふたつの共通点は、そう、理想の共生関係。大人も子どもも楽しめる一流のエンターテイメントには、奥深いメッセージが隠されていました。
音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...
肉食か、草食か。『ズートピア』の場合
かねてより不思議に思っていることがある。
なぜ「クマちゃん」はかわいいのか。一般に、テディベアに代表されるふわふわしてコロコロした愛らしい「クマちゃん」のイメージがあると思う。ファンシー雑貨にはそんなクマちゃん柄があふれている。
しかし、実在するクマは怖い。山で出会ったら恐怖しか感じない。クマに人が襲われる事件は絶えることがないが、たとえば人食いクマが次々と人を襲った「三毛別羆(さけべつくま)事件」などは、Wikipediaであらましを読んだだけでも背筋が凍るほどの大惨事であり、さらにこの事件をモデルにした吉村昭著の小説『羆嵐』を読めば、クマに対して二度と「クマちゃん」などといったラブリーな呼びかけはできなくなるだろう。
そう、動物は動物を捕食する。2016年公開のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの映画『ズートピア』を見て感動したのは、そんな自然界の基本原則を前提にしたうえで、子どもも大人も楽しめる動物アニメーションが成立している点だ。『ズートピア』の世界では、肉食動物も草食動物も仲良くひとつの都市に暮らしている。設定として、肉食動物と草食動物に捕食/被食関係があったのは過去の話であり、動物たちはすでに文明化しているため、そのような野蛮な行為はしないとされている。これは動物たちの平和なユートピアだ。
ところが草食動物の間には肉食動物に対するうっすらとした潜在的な恐怖感があり、それがストーリーの根幹に大きく関わっている。この映画は動物たちの社会を通して人間社会を描くという点できわめて秀逸なのだが、肉食動物と草食動物の共存関係ひとつとっても、よく考えられている。
ということは、三毛別の人食いクマが文明化したのが、あのふわふわしてコロコロした「クマちゃん」なのかもしれない。
『ズートピア』
MovieNEX(4,000円+税)発売中、デジタル配信中
(c) 2018 Disney
https://www.disney.co.jp/movie/zootopia.html
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disney-studios.jp/
動物が人間のように暮らす大都会、ズートピア。
誰もが夢を叶えられる人間も顔負けの超ハイテク文明社会に、史上最大の危機が訪れていた。
立ち上がったのは、立派な警察官になることを夢見るウサギのジュディ。
夢を忘れた詐欺師、キツネのニックを相棒に彼女は奇跡を起こすことができるのか…?
“夢を信じる”ウサギの新米警官ジュディが、“夢を忘れた”キツネの詐欺師ニックとともに、楽園に隠れた驚くべき秘密に挑む!
希少動物たちの団結、ズーラシアンブラス
ところで日本語吹き替え版「ズートピア」では、2ndエンドクレジットでテーマ曲《トライ・エヴリシング》のズーラシアンフィル・バージョンが流れる。これはオリジナル・サウンドトラックにも収録されているので、簡単に聴くことができる。
ズーラシアンフィルとは、動物たちによる金管五重奏ズーラシアンブラスを母体としたオーケストラ。ズーラシアンブラスは、「音楽の絵本」と題した親子のためのコンサートをはじめ、全国各地で活発なコンサート活動をくりひろげている。
ズーラシアンブラスのメンバーは6人(いや6体か)。トランペットのインドライオンとその弟分のドゥクラングール、ホルンのマレーバク、トロンボーンのスマトラトラ、チューバのホッキョクグマ、それに指揮者のオカピが基本メンバーだ。
聞きなじみのない動物名が多いのだが、それは全員が希少動物だから。たとえば実在のオカピはキリン科の動物で、ロバのようなシマウマのような姿をしている。もちろん、ズーラシアンブラスのオカピは文明化しているので、燕尾服を着て指揮棒を手に持ち、アンサンブルをしっかりとリードする。
親子コンサート「音楽の絵本」では、このメンバーを基本にゲストを交えながら(もちろんみんな動物だ)、クラシックを中心に幅広いジャンルの音楽を聴かせてくれる。
特に感心するのは、子どもが飽きないような演出上の工夫が凝らされている点。親子で楽しめるコンサートをうたった公演は数多いが、実際には子どもたちの関心を舞台に引きつけるのは大変なこと。ズーラシアンブラスの場合は、インドライオンは気取り屋さん、マレーバクはすぐに眠くなる……といったように各動物にキャラクター付けがしっかりとされており、これが演出の肝となっている。
しかも、演奏の質がとても高い。インドライオンのトランペットの抜けるような高音を聴くと、人間でもこれだけ吹ける人はそうそういないと感心する。親子コンサートのあり方として、お手本になるような存在ではないだろうか。
ズーラシアンブラスでも、インドライオンやスマトラトラといった肉食動物たちと、オカピのような草食動物が仲良く共存している。リーダーシップをとるのは草食動物のオカピだ。やはりリーダーは草食動物のほうがチームに安心感をもたらすのだろうか。そして、お互いに希少動物なのだから、捕食するよりも協力し合ったほうが生存戦略上はるかに有利だというのは納得がゆく。ここにも動物たちのユートピアのひとつの形がある。
日時: 2018 年7月29日(日) 14:15 開場(15:00 開演)
会場: 横浜みなとみらいホール 大ホール
料金: S席4,000 円/A席3,500 円/B席3,000 円/C席2,500 円/D席 1,000 円(全席指定) ※0歳から入場可
チケット販売:
・スーパーキッズチケットセンター
・横浜みなとみらいホールチケットセンター Tel: 045-682-2000
・チケットぴあ Tel: 0570-02-9999 P コード: 102-397
日時: 2018年8月12日(日) 16:30 開場(18:00 開演)
会場: 信州国際音楽村 野外ステージひびき
料金: スーパーシート( 指定席・限定60 席) 5,000 円【完売】/指定席 3,500 円/芝生エリア1,000 円 ※3 歳未満膝上鑑賞可能
お問い合せ: 株式会社スーパーキッズ Tel: 042-765-7284
チケット販売:
・スーパーキッズチケットセンター
・信州国際音楽村 Tel: 0268-42-3436
《東京公演》
日時: 2018 年8 月4 日(土) 14:00 開演(13:30 開場)
会場: サントリーホール 大ホール
料金: S席4,500 円/A席4,000 円/B席3,500 円(全席指定) ※0歳から入場可。2歳以下のお子様膝上鑑賞可
チケット販売:
・スーパーキッズチケットセンター
・サントリーホールチケットセンター 0570-55-0017
・チケットぴあ Tel: 0570-02-9999 Pコード: 102-395
《大阪公演》
日時: 2018 年8 月21 日(火) 14:00 開演(13:00 ロビー開場、13:30 開場)
会場: ザ・シンフォニーホール
料金: S席4,500 円/A席4,000 円/B席3,500 円/C席3,000 円/D席2,000 円(全席指定) ※0歳から入場可。2歳以下のお子様膝上鑑賞可
チケット販売:
・スーパーキッズチケットセンター
・ザ・シンフォニーチケットセンター Tel: 06-6453-2333
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