赤ちゃんから大人まで! 刺激的な「新しい音」を面白がってみる——ボンクリ・フェス2019
「人間は生まれながらにしてクリエイティヴだ」とは、なんて素敵な言葉でしょうか。そんな我々のクリエイティヴな細胞を、「新しい音」で刺激してくれる音楽フェスティバル「ボンクリ」が、9月28日(土)東京芸術劇場で行なわれます。
子どもたちは素直に、大人たちは童心に帰って思いきり楽しむ方法をアーティスティック・ディレクターを務める作曲家の藤倉大さんの言葉とともに、林田直樹さんが紹介してくれました。
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
全国各地にあまたある音楽祭のなかで、「ボンクリ」は飛び抜けて異彩を放っている。どれひとつとして、似ているものはない。
「ボンクリ」とはBorn Creative(ボーン・クリエイティヴ)の略。人間は生まれながらにしてクリエイティヴだという意味を持っていて、そのコンセプトはアーティスティック・ディレクターの作曲家・藤倉大さんが、福島県相馬市で子どもたちを集めた作曲教室を通じて得たものなのだ、という。
この説明を聞いても「ボンクリ」がいかなる音楽祭なのか、「ああ、なるほどね」と判る人はまずいないだろう。前例がないのだから、当然だ。
それぞれの「部屋」で同時多発する新しい音
「ボンクリ」の最大の特徴は、「部屋」がたくさんあることである。
「電子音楽の部屋」「電子楽器工作の部屋」「デヴィッド・シルヴィアンの部屋」「箏の部屋」「トーンマイスター石丸の部屋」「ノマドの部屋」「プンクトの部屋」などなど。
東京芸術劇場の各所で、同時多発的にいろいろなことが行なわれる。そこでは、どうやら、ものすごく変わった音、新しい音が体験できるらしい。世界のエレクトロニクス音楽の最先端のアーティストも参加するという。
2018年の「部屋」の様子
デヴィッド・シルヴィアンの名前を見て、興奮した人もいるかもしれない。
ロック・バンドの元ジャパンのメンバーで、坂本龍一や、キング・クリムゾンのロバート・フリップとも共演歴がある、あの耽美的な音楽を作るシルヴィアンだ。本人は来日しないけれど、「ボンクリ」のために未発表の音源を提供し、それが披露される「部屋」もあるという。
プロフェッショナルたちが繰り広げる「好きなこと」
そもそも、「ボンクリ」にたくさん出てくる「部屋」って何なのだろう? 音楽祭の中心人物である藤倉大さんに、「部屋」の定義について質問を投げかけてみると、こんな答えが返ってきた。
「これだけ世界には新しい音を求める、いろんなジャンルの音楽がある。そのトップアーティストの人たちに一部屋をお渡しして、『好きなことやってください』というのが定義です」
「そこには、たとえばノルウェーのインプロヴァイザー(即興音楽家)たちが、赤ちゃんから大人まで入れる部屋に、暖かい新しい音がいっぱい広がる音楽をその場の観客の雰囲気を感じながら作り、電子楽器工作の部屋みたいに電子音が出る簡単な機材をみなさんと工作して、そのあと音を作ってみるとか……」
「ほかには、ジャンルの確定できない音楽を創作する、邦楽器のアーティストで箏奏者の八木美知依さんの部屋」
「もともと舞台や映画で効果音を作ったり、音の響きそのものをコントロールするお仕事をしているトーンマイスター石丸さんによる部屋」
昨年のボンクリに先立って行なわれた実験にONTOMOが潜入。0:38辺りから音響を調節しているのがトーンマイスター石丸さん。
「“なんでもあり”で音が溢れる今日、アンサンブルの音楽ではどんな演奏ができるのかを聞かせるノマドの部屋」
「などなど、赤ちゃんから大人まで聴きに来られるのがボンクリフェスでの『部屋』です」
なるほど、つまり新しい音を求めて活動するプロフェッショナルが、「赤ちゃんから大人まで」(ここが重要)楽しめるような、さまざまな楽しい音の部屋を作るということなのだ。
新しい「音」を追求して集合させる場所
次にもうひとつだけ、藤倉大さんに投げかけてみたのは、もっと根源的な質問である。
チラシを読んでいて気になったこと、それは「音と音楽の違い」。藤倉さんはどれをどう考えているのだろうか?
「これは僕の中の定義です。音が集まってできるのが音楽。音楽というと今までのそれぞれの歴史によって確定された音楽のスタイルなどがありますが、音というのは地球が生まれたときからあるもので、おそらく“新しい音”というのは、人間がこの地球に生まれ立ったときから追求してきたもの」
大胆な定義である。
音が集まってできたものなら、どんなに変わった音の集合体であっても、それは音楽になりうるということだ。そして、地球が生まれたときにまでさかのぼる、その感覚。
人類の歴史よりもはるかに長い、太古の昔から音楽はあったのだろうか? そして、人類の音楽の営みを、新しい音の追求としてとらえ直すのも、面白い。藤倉さんはこう続ける。
「“新しい音”を追求する、世界のいろんな場所でさまざまなジャンルで活躍するアーティストが9月28日、東京芸術劇場のボンクリ・フェスで大集合するのです」
0歳児も参加可能! 映画『蜜蜂と遠雷』の演奏曲もいち早く
とてもスケールの大きなコンセプトのもと、赤ちゃんから大人までを対象とした、いままでにないタイプの音楽祭、それがボンクリなのだ。
無料のコンサートもあるし、メインの「スペシャル・コンサート」(部屋に散らばっていたアーティストも総出演)では、秋に公開される話題の映画『蜜蜂と遠雷』の中で登場する藤倉さん作曲の『春と修羅』も聴けるという。
『春と修羅』を演奏予定のピアニスト萩原麻未さんのメッセージ
生まれたばかりの赤ちゃんを連れていける土曜昼のコンサートは、実は案外少ない。世界の一流アーティストの実験的な新しい音をたくさん浴びられるのなら、子どもたちにとっても最高の刺激になりそうだ。
とても気楽な催しだし、これならクラシック音楽に詳しくない大人でも、童心に帰って楽しめそうだ。
さあ、今年の「ボンクリ」では、どんな変わった音が体験できるのだろう?
坂本龍一の三味線作品を日本初演する本條秀慈郎さんのメッセージ
アーティスティック・ディレクター藤倉大さんのメッセージ
開催: 2019年9月28日(土)
会場: 東京芸術劇場 コンサートホールほか館内各所
アーティスティック・ディレクター: 藤倉大(作曲家)
※「スペシャル・コンサートのチケットで楽しめるプログラム」の申し込みは、8月24日(土)より開始
詳細はこちら
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