イベント
2018.03.30
春、体感する音楽。上野の森バレエホリディ

上野の森で出会うバレエの世界

美しいダンサーたち、華麗なダンス、煌びやかな舞台…… 観るだけでも楽しいバレエを、この春は踊って、買って、食べて!? 体感できるイベントが上野で行なわれます。パリを中心に世界中であるゆるバレエを観てきた渡辺真弓さんが、ご自身のバレエ原体験と共に紹介します。

渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家、共立女子大学非常勤講師

お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊学を専攻。週刊オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経てフリー。1990年『毎日新聞』で舞踊評論家としてデビューし、季刊『バレエの本』(...

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上野で出会ったバレエの感動

 うららかな春の日差しが心地よい季節になった。GWも間近だが、昨年からスタートした「上野の森バレエホリデイ」をご存知だろうか。ここにはバレエ・ファンにも、初めて観る人にもバレエと出会うステキな企画が待っている。

 私がバレエを見始めた頃、忘れられないのは、東京文化会館で初めてバレエを観たときの思い出である。中学3年生のとき、ボリショイ・バレエの引越公演に連れて行ってもらい、プロコフィエフ作曲の大作《ロミオとジュリエット》を観た。

 本格的な劇場で公演を見るのは初めて。主役のカップルは絵を見るような美しさだったし、敵対する両家が剣を交えて争うシーンは活劇風で迫力満点。舞台美術も重厚華麗で、ルネッサンス時代のヴェローナへタイムスリップしたような気分になった。バレエ団だけでなく、オーケストラも同行したので、まさに踊りと音楽が一つになったスケール大きい舞台に圧倒され、その感動はしばらく続いた。 

 幸いNHKホールの開場記念公演の一環でもあったので、TVで3演目中継してくれたのもうれしかった。まだビデオがそれほど普及していなかった時代、音楽をカセットテープに録音して何度も聴き、LPまで入手するほど夢中になった。

 《ロミオとジュリエット》は、幕開けの前奏曲からドラマティックで大好きだし、舞踏会の音楽を聴くと、すぐに荘重な「クッション・ダンス」(キャピュレット家の舞踏会のシーンで最初に踊られるクッションを持った踊り)が目に浮かぶ。そして何と言ってもロミオとジュリエットが出会うバルコニーのシーンは音楽的にもクライマックスを築き、若い恋人たちが死をもって結ばれるエンディングの音楽は実に悲劇的。何度聴いても舞台の感動が蘇ってくる。音楽がすべてを物語っているようなものなので、初めてバレエを見たときも説明はいらなかった。舞台を見ているだけで、物語が手に取るようにわかるのだ。バレエのメリットは、セリフがなくても踊りやマイムで物語や登場人物の感情を伝えることができることである。

 この体験を機に、同じバレエでもバレエ団によってどのように解釈が違うのか、興味をもつようになり、パリ・オペラ座バレエ団からシュトゥット・バレエ団、松山バレエ団などいろいろなバレエ団の上演を見比べるようになった。今は、DVDやYoutubeなどでもバレエを気軽に見られるようになったとはいえ、やはり生の舞台は別物。ぜひ劇場に足を運んで、一期一会の感動を体感してほしい。

五感で楽しむバレエのお祭り

 さて、GWの上野公園を賑わせる「上野の森バレエホリデイ」は、ただ観るだけでなく、踊る(初心者向けレッスン)、聴く(ミニ・コンサート)、知る(バレエ大学)、買う(マルシェ)、食べる(フォレスティーユ精養軒のバレエカフェ)……と多様にバレエを楽しんでもらおうという趣向がいろいろ用意されている。

ダンス&クリエーション photo : Kiyonori Hasegawa
はじめてのバレエ・レッスン
ティアラ教室
バレエマルシェ
バレエウェアコレクション

 メインのバレエ公演は、東京文化会館大ホールの東京バレエ団によるシェイクスピア原作の《真夏の夜の夢》(振付アシュトン)と『セレナーデ』(振付バランシン)の2本立て。《真夏の夜の夢》は、メンデルスゾーンの《結婚行進曲》などの名曲に乗せた喜劇的バレエで、いたずら好きの妖精パックをはじめ、さまざまなキャラクターたちが織りなす舞台からは、セリフが聞こえてくるようだ。妖精パックの魔法でロバの姿に変えられた職人ボトムがトゥシューズで立って踊るシーンはユーモラスで、バレエ初心者が見ても楽しめる。

 《セレナーデ》のほうは、筋がない抽象バレエで、爽やかな女性群舞が美しい。

 お子様と一緒に家族で鑑賞したいという人のために、《真夏の夜の夢》1本立てのファミリー公演(4歳以上の児童対象)もあり、こちらは入場料金が本公演の約半額と大変お得。野外ステージ(キャノピー)では、団員によるオリジナル作品の上演も無料で見られるので、クリエイティヴなダンスに触れるにはよい機会だろう。

《真夏の夜の夢》 photo : Kiyonori Hasegawa

 東京文化会館の小ホールはコンサート・ホールだが、今年はここで本格的なコンテンポラリー・ダンスが見られるのが楽しみ。新潟市を拠点に活動する気鋭のダンスカンパニーNoism1(ノイズムワン)が『Mirroring Memories――それは尊き光のごとく』を上演する。芸術監督の金森穣が過去10年間に創作した作品から「黒衣」にまつわる10シーンを選出し、自身も出演する作品を加えた全12作品のオムニバスである。現代的な音楽に乗ったシャープでしなやかな踊りは、バレエとは別世界の魅力が溢れ、今という時代を強く実感させてくれることだろう。

『ASU』 Photo:Kishin Shinoyama
劇的舞踊『ラ・バヤデールー幻の国』 Photo:Kishin Shinoyama
『Namaless Hands-人形の家』 Photo:Isamu Mura
『Nameless Voice-水の庭、砂の家』 Photo:Kishin Shinoyama
『psychic 3.11』 Photo:Kishin Shinoyama

 春風に誘われて、「上野の森バレエホリデイ」に出かけてみたら、もうそこは別世界。バレエやダンスの魅力にじっくり触れるチャンスだ。

イベント情報
上野の森バレエホリディ

●開催期間:2018年4月26日(木)〜30日(月・祝)

●場所:東京文化会館

 

親子で楽しむ! GWファミリー公演 東京バレエ団「真夏の夜の夢」

●日時・出演

4月28日(土) 12:00開演
オベロン:柄本 弾/タイターニア:川島麻実子
4月29日(日) 12:00開演
オベロン:秋元康臣/タイターニア:金子仁美
4月30日(月・祝) 12:00開演
オベロン:柄本 弾/タイターニア:川島麻実子

●対象:4歳以上

●料金:SS席 6,000円  S席 5,000円  A席 4,000円  B席 3,000円
※子ども(4歳〜中学3年生)は半額
※3歳以下は入場不可

Noism1(ノイズム ワン) 特別公演 「Mirroring Memories(ミラーリング・メモリーズ) ― それは尊き光のごとく」

●日時:4月28日(土) 17:30開演
4月29日(日) 15:00開演
4月30日(月・祝) 13:30開演

●出演:井関佐和子/中川賢/池ヶ谷奏/吉﨑裕哉/浅海侑加/チャン・シャンユー/
坂田尚也/井本星那/鳥羽絢美/西岡ひなの/金森穣

●料金:S席 6,500円  A席 5,500円  学生券 1,500円
※未就学児は入場不可
※学生券は3月23日(金)よりNBS WEBチケットのみで発売。10~25歳の学生対象。当日学生証必携

渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家、共立女子大学非常勤講師

お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊学を専攻。週刊オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経てフリー。1990年『毎日新聞』で舞踊評論家としてデビューし、季刊『バレエの本』(...

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