ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール2022が6月に開催! 注目のピアニストたち
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
1年の延期の末、この6月に開催が予定されている、第16回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール。アメリカ、テキサス州のフォートワースで通常4年に1度行なわれ、かつて辻井伸行さんが優勝し(ハオチェン・チャンさんと同位)、日本でもとても注目されたコンクールです。
前回優勝したソヌ・イエゴンさんのセミファイナルステージ
パンデミックの中でも国際的なイベントを開催する方法がようやく見出されてきたなか、今度は国際情勢が不安定となってしまいましたが、なんとか予定通り開催されるようです。
先だってはコンクール事務局が、3月の予備予選を前に、ロシア人の参加者も受け入れるという声明を発表。
その内容は、ロシアのウクライナへの侵攻は非難するけれど、ロシア生まれのピアニストは政府の役人ではないし、彼らの参加は国から支援されたものでもない、そして、若いアーティストを応援するという自分たちのポリシーに従って彼らの参加を認める、というもの。
そこには、このコンクールの名であるヴァン・クライバーンさんが、ソ連の第1回チャイコフスキーコンクールで冷戦下にもかかわらず優勝し、それが、芸術の価値は国際情勢の緊張を越えるものだと世界に知らしめることになった、という背景も影響しているとのこと。
3月30日、コンクール本大会に出場する30名のピアニストの名前が発表されました。
そこには、ロシアから6名、ベラルーシから2名、そしてウクライナから1名の参加者も含まれています。まずは彼らが何の問題もなく自らの芸術性を発揮できることを願いますが、さらにこれが何か良いメッセージを世界に発信することになれば、なお良いですね……。
と、そうしたコンクールの社会的意味も気になるところですが、シンプルに、コンテスタントがとにかく豪華で楽しみすぎます。さすが、アメリカでのキャリアを広げたい若手にとって決定的な意味を持つコンクール。ハイレベル。
まず驚いたのは、6年前のショパンコンクールで3位となり注目されるも、しばし腕の怪我で活動を休止する時期もあったケイト・リウさんのエントリー。また、先のショパンコンクール参加組からも、ゲオルギス・オソキンスさんやユトン・ソンさん、フェデリコ・ガド・クレマさんのお名前が。
日本からは、今若手として人気上昇中の亀井聖矢さん、吉見友貴さん、フランス/日本からはマルセル田所さんと、応援しがいのある顔ぶれ。
他にも名前を挙げきれませんが、素敵なピアニストがいっぱい。
個人的に、おお! と思ったのが、藤田真央さんが入賞した回、2019年のチャイコフスキーコンクールで4位となった、中国のティアンス・アンさん。カーティス音楽院で、小林愛実さんの同門で勉強していたピアニストです。
彼といえば、同コンクール本選の緊張のステージ。2曲のピアノ協奏曲を続けて演奏する場面で、“ソリストはチャイコフスキーの1番が始まると思っていたら、オーケストラがいきなりラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を弾き始めた”というハプニングが記憶に残ります。どうやら、オーケストラの事務方の確認ミスだったとのこと。
逆ならまだいいですよ(いえ、嫌ですけどね)。しかし「パガ狂」といえば、オーケストラによる一瞬の前奏から、すぐピアニストが一発ガツンと鳴らす曲ですからね。悪夢としか言いようがありません。
当然アンさんもびっくりしたようですが、一瞬遅れたものの、ちゃんと最初の音を鳴らしていて、逆にすごい反射神経だと思いました。
そのうえ、その後インタビューしたら、確認しなかった自分が悪いっていうんですもん……いい人。協議の結果、弾き直していいという提案があったそうですが、それも辞退しました
今日アンさんに会ったので声をかけたところ、あれは自分が演奏開始前に指揮者にどの曲からスタートするのか確認しなかったのが悪いので、僕のミスですって言っていました。どれだけいい人なんだ…そしてこの笑顔よ。アンさんには、まじでなにか良いことがあってほしい。 pic.twitter.com/OSRpvEl3E6
— 高坂はる香(音楽ライター) (@classic_indobu) June 26, 2019
と、クライバーンコンクールの話題からだいぶそれてしまいましたが、第18回コンクールの開催は、6月2日から18日の約2週間。ライブ配信ありで、しかもエンタメ大国アメリカのコンクールだけに、おそらく幕間のトークコーナーなども充実すると思います。ライブで聴こうとするとまた寝不足な日々になりそうですが、注目したいですね。
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