
全国から熱い視線!リーデンローズ「オーケストラ福山定期」~本気でコアなプログラム

いま、ふくやま芸術文化ホール「リーデンローズ」(広島県福山市)の「オーケストラ福山定期」がクラシック音楽界から熱い視線を浴びている。
2024年度から始まったこのシリーズは、広島交響楽団と京都市交響楽団の2団体を招聘し、年間各5公演ずつ計10公演(うち4公演は青少年向けの無料公演)を主催するという全国にも類例を見ない大規模なもので、この春から3シーズン目に入る。
その背景にある、福山独自の歴史的・文化的背景から紐解いていこう。

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
西国の外様大名への睨みを利かせた、天下の名城・福山城が象徴するもの
山陽新幹線の福山駅で降りると、ホームのすぐ前に大きな城が見えるのに驚かれる方も多いことだろう。
それもそのはず、福山駅はかつての福山城の広大な敷地内に建てられているのだ。江戸時代そのままの石垣の向こうには美しい天守閣が見える。ここを訪れた人にとって、歴史の重みを感じる瞬間である。

江戸時代の初期、新たに築城が禁止されていた中、西国に睨みを利かせる幕府の重要拠点として、1619年に入封された福山藩初代藩主・水野勝成(徳川家康のいとこ)が短期間で完成させた巨大な城、それが福山城である。

水野勝成は海の埋め立てや治水工事、町の造営を次々とおこない、現在の福山の繁栄の礎を築いた名君として今もなお敬愛されている。

福山を象徴するもう一人の名君が、幕末の混乱期にあって27歳の若さで老中首座(現在の内閣総理大臣にあたる大役)に就任し、黒船来航の国難にあってはペリーとの交渉に立ち、日米和親条約締結に主要な役割を果たした阿部正弘である。

身分や縁故にこだわらない実力主義の人材登用・育成をおこない、近代日本への道を切り拓いた功績は計り知れない。39歳で早世したのが惜しまれるが、現実と未来を見据えて国を導く傑出した政治家である。
なお、こうした先見の明と人材育成への情熱は、現在のリーデンローズが取り組む教育プログラムにも息づいている。
西日本クラシック音楽界のリーダーとしてリーデンローズが存在感を高める
かつての福山の歴史的栄光を現代に蘇らせるかのように、西日本クラシック音楽界のリーダーとしての存在感を高めているのが、ふくやま芸術文化ホール「リーデンローズ」1994年開館、大ホール2003席、小ホール312席)である。
2024年春より開始されたリーデンローズの「オーケストラ福山定期」は、広島交響楽団と京都市交響楽団という二つのオーケストラを招聘し、年間5公演ずつ(計10公演)を主催するというもの。
公共ホールの自主企画としては、全国的に見ても類例を見ない大規模さである。
しかも、そのうち各2公演(計4公演)は福山市・府中市・神石高原町内の中学2年生全員(約5,000人)を対象とした無料招待コンサートとなっている。

プログラムは基本、広響、京響とも本拠地でおこなっている定期演奏会と同じものを持ってくる条件だ。これは、オーケストラにとってもっとも重要な芸術的成果の発表の場である定期演奏会をそのままリーデンローズに持ってくることによって、さらにクオリティを高めたものにする狙いがある。
中学2年生には、子供向けのプログラムではなく、プロの本気の演奏を聴いてもらおうという願いが込められている。思春期に一流の芸術に触れることほど重要なことはないが、それを行政側の全面的な後押しのもと実践しているというわけである。これは教育・文化政策としてもうらやましい限りだ。

東京からでもぜひ足を運びたい!「オーケストラ福山定期」2026-2027
この春からリーデンローズの「オーケストラ福山定期」は3シーズン目を迎える。そのラインナップは一般向けに薄くてわかりやすいものをという妥協は一切なく、ますます本気度の強いコアなものとなっている。
以下、その内容をご紹介する。福山駅のすぐ前では福山城博物館をはじめ、ふくやま美術
■4月19日(日)15時 ※発売中
ジョシュア・タン指揮 広島交響楽団 ミシュカ=ラシュディ・モーメン(ピアノ)
ヴォーン・ウィリアムズ:ソレント海峡、ピアノ協奏曲、バックス:交響曲第6番
本国の専門家筋からも問い合わせが来ている本格的イギリス音楽特集。シンガポール出身のタンは欧米でも活躍する注目の指揮者だ。メインの作曲家バックスは、アイルランドとケルト文化に心酔した神秘主義者で、シベリウスとも尊敬し合っていた、知られざる交響曲の巨匠。巨人の歩みを思わせる「第6」を体験できる貴重な機会。


■6月21日(日)16時 ※発売中
アレナ・フロン指揮 京都市交響楽団、阪田知樹(ピアノ)
ドヴォルザーク:序曲《謝肉祭》、ピアノ協奏曲 ト短調、交響曲第7番 ニ短調
1992年チェコ生まれの女性指揮者アレナ・フロンは「プラハの春」国際音楽祭にデビュー、すでにチェコ国内のほぼすべてのオケを指揮するなど注目の的。今回は日本のみならずアジア・デビューの一環となる。実力派の阪田知樹との共演も楽しみ。ドヴォルザーク・プロのメイン「第7」は強い悲劇性でこれが最高傑作という声もあるほど。

右)阪田知樹 ©Ayustet

■10月12日(月・祝)16時 ※6月20日(土)発売
上岡敏之指揮 京都市交響楽団
ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》前奏曲と愛の死、ブルックナー:交響曲第6番 イ長調
ヴッパータール市立歌劇場音楽総監督、新日本フィル音楽監督、コペンハーゲン・フィル首席指揮者等を歴任するなど国内外で活躍する上岡敏之の京響初登場。得意のワーグナーとブルックナーの巨大な交響世界を堪能できる。ブルックナーは渋いながら大河的スケールと勇壮さを併せ持つ「第6」というのも嬉しい。

■11月23日(月・祝)16時 ※7月11日(土)発売
沖澤のどか指揮 京都市交響楽団 五嶋みどり(ヴァイオリン)
バーンスタイン:《キャンディード》序曲、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調、プライス:交響曲第1番 ホ短調
2025年1月に沖澤のどかはボストン響定期にデビューした際に五嶋みどりと共演しているが、両者は今回のショスタコーヴィチでどんな鬼気迫る名演を繰り広げるか? フローレンス・プライス(1887-1953)はアメリカの黒人女性作曲家として近年注目の存在で、アフロ・アメリカンの民謡や讃美歌の要素が盛り込まれた代表作が楽しみだ。


左)沖澤のどか ©Felix Broede
■2027年1月24日(日) ※10月3日(土)発売
クリスティアン・アルミンク指揮 広島交響楽団 エディクソン・ルイス(コントラバス)
スーク:管弦楽組曲《おとぎ話》、細川俊夫:コントラバス協奏曲、ヤナーチェク:オペラ《死の家から》組曲
広響コンポーザー・イン・レジデンスの細川俊夫による初のコントラバス協奏曲を、ベネズエラのエル・システマ出身でベルリン・フィルのメ
ンバーである名手エディクソン・ルイスが演奏。スラヴの伝承によるスークの美しい組曲と、ドストエフスキー原作によるヤナーチェク最後のオペラからの組曲を、アルミンクがどう聴かせてくれるかにも期待。


■2027年3月7日(日)15時 ※11月14日(土)発売
川瀬賢太郎指揮 広島交響楽団 小曽根真(ピアノ)
シューマン:交響曲第3番 変ホ長調《ライン》、小曽根真:ピアノ協奏曲《もがみ》
川がテーマのコンサート。滔々と流れるようにスケール豊かなシューマンと、ジャズ・ピアニストの小曽根真が2003年の山形県国民文化祭の開会式のために作曲し、ジャズや日本の民謡(最上川舟唄)の要素を盛り込んだ協奏曲との興味深い組み合わせ。川にちなんだ二つの作品が、福山の中心である芦田川とどう響きあうかも楽しみだ。


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