波多野睦美と高橋悠治の言葉と音楽〜本のような新譜とシェイクスピアがテーマの演奏会
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
何という言葉の厚みと豊かさだろう。最小限のピアノの音の雄弁なことだろう。
届いたばかりの新譜「ねむれない夜 〜高橋悠治ソングブック〜」(作曲・ピアノ:高橋悠治、歌:波多野睦美/SONNET)を聴いて、まるで一冊の本を熟読したかのような、ずしりとした手ごたえを感じた。
波多野さんの声で発語され、歌われた言葉は、いつだって特別だ。
柔らかくて静かで、落ち着いていて、深い。
悠治さんの歌曲とピアノは、いつも謎をはらんでいて、いびつで自由だ。
常套的にまとめること、主従関係を作ること、管理・強制することから、もっとも遠い。
岡真史、辻まこと、アイヴァ・ガーニー、森崎和江——この4人の詩の言葉と、音楽を通じて対話する時間の何と豊かなことだろう。まるで一冊の本みたいだ。
音楽がある場所で 人は ひとりではないことを感じます
アルバムによせた文章の中で、波多野さんが引用した悠治さんの言葉だ。
このお二人と一緒に、1月13日(水)には彩の国さいたま芸術劇場で、シェイクスピア(この劇場がずっと上演してきた)をテーマにしたコンサート「イレブン・クラシックス Vol.2 波多野睦美&高橋悠治」のナビゲーションをさせていただくのも楽しみである。
予定されている楽曲は、前半がシューベルトの「シルヴィアって?」(シェイクスピア詩)、「狩人よ、憩え」(スコット詩)、「アヴェ・マリア」、連作歌曲集「冬の旅」(ミュラー詩)から「春の夢」「道しるべ」「最後の望み」。
後半がショスタコーヴィチ「ハムレットと良心の対話」(ツヴェターエヴァ詩、高橋悠治訳)、作者不詳「柳の歌」、ヴォーン=ウィリアムズ「オルフェウスがリュートをとれば」(「ヘンリー8世」より)、フィンジ「来たれ、死よ」(「十二夜」より)、ガーニー「緑の森の木の下で」(「お気に召すまま」より)、バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1巻」より第6番ニ短調、高橋悠治「バッハと歩哨」(ガーニー詩)。
シューベルトや悠治さんの曲のみならず、ショスタコーヴィチ、さらには英国のフィンジやヴォーン=ウィリアムズの抒情的な曲も入っているのは楽しみである。トークの時間には朗読も予定。
劇場とは、ライブでこそ感じられる言葉や音楽のきらめきに出会う場所である。
お二人ならではそんな凝縮された時間を、平日午前という静かで空気のきれいな、耳の新鮮なときに、少しでも多くの人と一緒に体験できればと願っている。
日時: 1月13日(水)11:00開演(12:40終演予定・休憩あり)
会場: 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
出演:
波多野睦美(メゾソプラノ)、高橋悠治(ピアノ)
林田直樹(ナビゲート)
曲目:
第1部 シューベルトの歌曲
- F. シューベルト:
シルヴィアって? D 891(詩:シェイクスピア 『ヴェローナの二紳士』より)
エレンの歌 第2番 D 838「狩人よ、憩え」、第3番 D 839「アヴェ・マリア」(詩:W.スコット)
歌曲集《冬の旅》D 911より〈春の夢〉〈道しるべ〉〈最後の望み〉(詩:W.ミュラー)
第2部 詩と音楽~シェイクスピアの周辺
- D. ショスタコーヴィチ:
コントラルトとピアノのための組曲《マリーナ・ツヴェターエヴァの六つの詩》作品143より〈ハムレットと良心との対話〉(詩:M.ツヴェターエヴァ/日本語訳歌詞:高橋悠治) - 作者不詳:柳の歌 (詩:シェイクスピア『オセロー』より)
- R .ヴォーン・ウィリアムズ:オルフェウスがリュートをとれば (詩:シェイクスピア『ヘンリー八世』より)
- G. フィンジ:来たれ、死よ (詩:シェイクスピア『十二夜』より)
- I. ガーニー:《5つのエリザベス朝の歌曲》より〈緑の森の木の下で〉(詩:シェイクスピア『お気に召すまま』より)
- J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第6番 二短調 BWV 851 ※ピアノソロ
- 高橋悠治:バッハと歩哨 (詩:I.ガーニー)
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