電卓プレイヤー・あたりめ氏と《トルコ行進曲》を弾いてみた。
電卓を奏でる電卓プレイヤー、あたりめ氏をご存知だろうか? 音の出る電卓でクラシックからポップス、アニメソングまで多様な曲を弾きこなし、Twitter界隈で話題のあたりめ氏に突撃インタビュー!
なんで電卓を? どうやって? 難しいの? これらの疑問に答えてもらいました!
そして、新人編集部員Mも実際に電卓演奏に挑戦。果たして電卓演奏をマスターすることはできるのか……? 電卓という身近なモノから広がる音楽の世界に触れてみましょう。
電卓プレイヤー誕生秘話
電卓を演奏する——なかなか耳馴染みのない言葉の組み合わせですね。あたりめ氏は、昨年10月にTwitterに初めて電卓動画を投稿して以来、フォロワー数15万人を突破し、現在も新しい電卓演奏動画を配信しつづけています。まずはきっかけからお話を伺いました。
YouTubeで見つけた電話機でルパン三世のテーマを演奏している動画を見て思いつきました。Amazonで注文できる中国製の音が出る電卓があって、それを取り寄せました。
2018年10月の上旬に初めて米津玄師さんのLemonっていう曲をアップしたら、予想外の反響を呼びました。Lemonという大好きな曲と出会えなかったら、たぶん今続けてないですね。
2歳から音楽教室に入り、ピアノは小学校3年生から始めました。音楽教室とピアノのレッスンの両方に通っていました。母曰く、先生に「あたりめくんは、教室では音楽をしっかり耳で聴いていますよ。」とのお言葉を頂いたそうで、そのような環境の中で絶対音感が自然に身についていったのではないかと思います。当時は楽譜通りに弾くのが苦手で、好きな曲だけ弾いていました。たしかに耳で覚えるタイプで、楽譜を読むよりCDで聞いてから弾くほうが早かった。
今は大学で音楽教育の勉強をしています。音楽の先生を目指して教職をとりながら、副科でピアノを演奏しています。定番の教本やベートーヴェンのピアノソナタなども練習してきました。ドビュッシーやラヴェルなどのフランスの作曲家が好きで、最近ではドビュッシーの《喜びの島》を弾きました。
クラシック以外では、米津玄師さんがとても好きです。あとはバックナンバーやアレキサンドロスといったバンドもよく聴きます。
なるほど。幼い頃からの耳コピの才能、ピアノの経験、クラシックだけでなく幅広い音楽に親しむ姿勢、これらの要素がすべて合わさって電卓プレイヤーが誕生したのですね。
電卓演奏のハウツーを伝授!
最初の頃は耳コピして楽譜を書き起こして、その上に数字を並べて暗記していました。五線紙ではなく、ふつうのA4の用紙に適当に音符を書いていました。最近は楽譜を作ることはあまりなく、頭の中で考えて、演奏しています。
全音で1オクターヴの音階が出る2種類の電卓があり、調によって使い分けています。元々は1台でやっていましたが、必要に応じて追加しました。3台になって、5台になって……今では全部で9台の電卓を所持しています。それでも音域的に弾けない曲はあります。例えばアレキサンドロスの《ワタリドリ》は、耳コピして電卓でやろうとしましたが、キーが足りなくてできませんでした。
1台で2つの音を同時に出すことができないので、例えば、隣り合う電卓の2と6を同時に弾くと和音になります。3和音は指が届かないのであきらめています。
この配置は10分くらいで考えています。「ここでオクターヴがあるからこれとこれはここに置かなきゃいけない」とか。まず右手を考えて、右手ができてから左手を考えます。それから30分くらい練習します。
これを目にしても、筆者は電卓を増やしたら和音で演奏できるかも?なんて、なかなか思いつかなそうですが……。しかも30分でできてしまうとは驚愕! 実際に電卓の音を聴いてみると、ピアノでも減衰楽器でもない、鍵盤ハーモニカのような伸びを感じます。
編集部もやってみた!
クラシックのレパートリーをお願いすると、音の出ない設定の電卓でカタカタと《トルコ行進曲》を練習するあたりめ氏。
電卓5台を巧みに操って私も電卓プレイヤーデビュー!というわけにはいかず、サビのメロディが一番簡単なのでは? ということで、指1本分だけ参加させていただきました!
ここからは、あたりめ氏+編集部員3名の会話形式でお届けします。
編集部員は紙に書かないとできなかった。
まずは教えてもらって練習する。マイナス ぺけ マイナス 9 プラス ……なかなか思うように手が動かない。
1回音階を教わるとわかりやすいかも? ということで音階を確認するが、やはり音が飛ぶところでとちる。
なかなかできるようにならず、紙に書いてみることに。
― × ÷ ― × ÷ × ― + 9 + ― × + 8
― × ÷ ― × ÷ × ― + 9 × + 8 ―
注:《トルコ行進曲》のメロディです
編集部M メモを見ていても追いつかないかもしれない。難しい。ゆっくりお願いします。
編集部K いいねぇ、演奏している姿が事務仕事みたい。デスクでやればよかったね。
編集部員は紙に書いてもできなかった。
楽譜があっても間違える編集部M。後半の音が飛ぶところが難しい。
編集部M この列、見慣れなすぎて変換できません。電卓にドレミをはったら一番弾けるようになる気がする。
編集部S あ~旋律で覚えちゃうからね。
編集部M なんか混乱するんです。K氏もやってみませんか?
編集部S お2人は鍵盤がない楽器だから、まだ一致しやすいんじゃないですか? (注:K氏はフルート、Mはヴァイオリン)
K いや、でも、自分もたぶん小さいころからピアノの頭だから変換できないと思います。
S 音階で覚えたら速そうじゃない?
音階を弾いてみるが、音が抜けて印象派みたいになる。
あたりめ この音だけがこっちにあります。
S あぁそれで2オクターヴあるのね。
今度は琉球音階みたいになる。
K あぁ! シがここにあるから! これは混乱する! あたりめさんすごいですね! ピアノも弾くと、ごっちゃになりません?
あたりめ そうですね、あんまりごっちゃにはならないです。
S 数学が得意だそうですし、やっぱり理系っぽいですよね。
K 今でも数字で覚えてるんですか?
あたりめ 数字で覚えているところもあるし、細かいところは場所で覚えているところもあります。
K ドレミと数字はシンクロしてない?
あたりめ してないですね。
K 頭の中でシステマティックに処理されている感じですね。
S 絶対理系ですよね。
K 書き留めた数列を見たところでできないんですよね。覚えましょう!!
S 最後の音が飛ぶところを覚えればなんとかなる!
M さらえばいけます! 隣り合っているところはできるんですけどね。
あたりめ ここまでいって戻る、とかは感覚でやってます。
S ピアノで指の動きを暗記してしまうのと同じですね。
M 想像していたよりずっと難しかったです。4度がここっていうのが……!
音を考えて、数字を考えてから、足りない部分はAmazonで取り寄せます。
K これ、2種類ある電卓の組み合わせを考えるってことですもんね。すごい。
あたりめ 先に組み合わせを考えてからやっています。
S 弾いてみて決めるのではなく、先に組み合わせを考えるんですね。
M 音を出しながら決めるんですか? それとも頭の中でできあがる?
あたりめ もうできあがっていて、音を考えて、数字を考えてから、足りない部分はAmazonで取り寄せます。
一同 笑。名言出ましたね。
あたりめ それが自然と5台になっていたので。
M これから先さらに増やしたいみたいな野望(?)はありますか?
あたりめ あります!
S もう一列作るかんじですかね(笑)。スタンドみたいにするとか。
K 昔の小室哲哉みたいに電卓スタンドにしたらいいですねぇ。
S ちょっと世代じゃないんじゃない? (笑)
S じゃあもう一度挑戦しましょうか。
M 9の次が×っていうのを覚えれば……!9×―……ぶつぶつ。
K ついに記号で覚え始めた!
ついに成功!
ゆっくりやってみたところ、なんとか成功!
M 達成感! ありがとうございました!
S すばらしい。
あたりめ あ、じゃあ速くしてみますか?
M インテンポでやりますか。
喜びもつかの間、苦手箇所をはじめミスが目立ちます。
S 今具体的にどこでロストしましたか?
M 一度間違えたらリカバーできません。
あたりめ そうですよね。一度間違えると、どこだったかわからなくなります。ピアノとはそこがちょっと違うかもしれません。
S なるほど。
M 完全なる迷子になりました。
K 頭が数字に追いついていってないもんね。
M もう数字とかじゃない。もはや認識できていない。
S オーケストラで「いま私はどこを弾いているんだろう?」ってヴァイオリンでならないですか?
M そうですね、フレーズの最初に戻ったりしたら復活できます。オケの中で落ちるのと同じ感覚ですね。
S 楽器ですね!
コナンとルパンからの、夢はオーケストラと共演?
最後に、今イチオシのルパンのテーマからのコナンのテーマを披露していただきました。《トルコ行進曲》では5台使っていた電卓は、今回は3台に。
この中で一番難しいのは、最後の1フレーズだそう。工夫して考えないとできない、難易度の高い運指です。安定した半音のトリルも、手が大きくなければできない難しい技。
ほかにも際立っているのが、ルパンの最初の音階。789+―を速く弾くために、指をくぐらせる超絶技巧のように見えます。何気ないパッセージのひとつひとつがいかに難しいか体感した編集部員は、改めて演奏を見て畏怖の念を抱きました。
指使いはその都度「3で終わったあと、1にいくのが大変だから」といったように、ピアノの運指1~5に基づいて考えているそうで、ピアノ奏者としてのベースが垣間見られます。
現在は音楽の先生を目指して勉強中というあたりめ氏。これからもいろいろなことに挑戦して、将来は音楽に携わる仕事をしたいということで、今後の活動にも目が離せません。
ふと編集部員がアンダーソンの《タイプライター》を思い出し、話を振ると、早速少し演奏してくださいました。「このタイプしている音がまさに!」と一同感激。
いつかぜひ、オーケストラでやってみてほしいですね!
関連する記事
-
ベートーヴェンやバッハなど7人の作曲家にまつわるコーヒーを飲んでみた!
-
スマホ1つでできる! リモートアンサンブル動画を作ろう
-
もう一度パイプオルガンを弾きたい! オルガン練習室で近藤岳さんに習ってみた。
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly