インタビュー
2025.10.19
中川優芽花、進藤実優、山縣美季、Hao Rao、桑原志織にきく 

ショパンコンクール~ピアニストたちは「ポロネーズ」「マズルカ」にどう取り組んだ?

第19回ショパン国際ピアノコンクールの第2ステージと第3ステージには、それぞれポロネーズとマズルカの演奏が課せられました。コンテスタントたちは、これらの「舞曲」にどのように取り組んだのでしょうか。日本人出場者を中心に伺いました。

取材・まとめ
道下京子
取材・まとめ
道下京子 音楽評論家

2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...

上列)左から中川優芽花、進藤実優、山縣美季
下列)左からHao Rao、桑原志織

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【ポロネーズ】(第2ステージ)

中川優芽花「ショパン特有のノーブルさを試してみたいと思った」   

演奏曲:「ポロネーズ」作品53(《英雄ポロネーズ》)

「24の前奏曲」の全曲演奏は長いので、(ポロネーズの課題曲のなかでは)プログラム的に《英雄ポロネーズ》しか合わないという理由もありました。それから、このポロネーズにはショパン特有のノーブルさが多く使われていて、彼にしては珍しいので試してみたいと思いました。弾き始めたのは2、3か月前から。以前は、作品44のポロネーズを演奏していました。

コンクールのオープニング・コンサートで、オーケストラが演奏する「ポロネーズ」作品40-1を聴き、「これか!」と感じました。聴いていて楽しかったですね。

10月11日、第2ステージにおける中川優芽花 ©Wojciech Grzedzinski
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進藤実優「旋律とリズムのバランスを心がけた」

演奏曲:「ポロネーズ」作品53(《英雄ポロネーズ》)

音楽的にもっとも弾きかった作品です。しっかりと練習を始めたのは、1年前くらいですね。ポロネーズのリズムに集中しすぎると、旋律感がなくなってしまいます。毎回、もっとも良いバランスで演奏するのは難しいですね。

(フィルハーモニーホールで演奏したことについて)本当に幸せでした。今朝、歩いてホールへ向かうときも、空はどんよりしていたのですが、このポロネーズをワルシャワのホールで弾くことができるので、とてもワクワクしていました。

10月12日、第2ステージにおける進藤実優 ©Krzysztof Szlezak

山縣美季「さまざまな感情をもつこのポロネーズに、恋に落ちた」 

演奏曲:「ポロネーズ」作品53(《英雄ポロネーズ》)

まず、「24の前奏曲」を全曲とり上げる場合、ほかのポロネーズを選曲すると時間的に厳しいかなという、現実的な問題もありました。

最初、この作品には力強いイメージをもっていました。でも、作品を読み込み、紐解いていくうちに、苦しい叫びや嘆きなどさまざまな感情をもつこのポロネーズに、激しく恋に落ちてしまいました。ポロネーズにはポーランドの誇りなども感じられます。その曲をショパン・コンクールの舞台で弾くことができたら、どんなに幸せだろうとも考えました。

プログラムを《英雄ポロネーズ》から始めるのを、少し前までは怖いと思っていました。でも、いざ弾いてみると、作品のもつさまざまなキャラクターがどんどん広がっていく感じも楽しめましたし、ワルシャワのショパン・コンクールの会場で弾いていることを素直に楽しめました。

10月12日、第2ステージにおける山縣美季©Krzysztof Szlezak

Hao Rao「ショパンの若いエネルギーを感じながら演奏した」   

演奏曲:《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》作品22

ショパンの若い時の代表的な作品ですが、彼がこのポロネーズを作曲した年齢よりも、いまの私は少し上です。この作品には、彼の若いエネルギーがみなぎり、そのようなパワーを感じながら演奏しました。この素晴らしい舞台で、ショパンのもっとも有名な創作のひとつを演奏できたことを、とても嬉しく思っています。

今回の舞台について、自分の演奏には満足しています。自分の良い音楽を、みなさまに伝えられることを幸せに感じています。

10月12日、第2ステージにおけるHao Rao ©Krzysztof Szlezak f

【マズルカ】(第3ステージ)

桑原志織「気品のあるルバートを心がけた」

演奏曲:「マズルカ」作品33

歌おうと思えば思うほど、ルバートがかかりすぎてしまいます。最終的に、自分の思っているルバートに、少しセンプリーチェ(「単純に」「素朴に」)をプラスするぐらいが、ショパンを演奏する際には上品でいいのかなと考えました。たとえば、イン・テンポで弾く練習などを取り入れてみました。気品のあるルバートを自分なりに心がけています。

ふだん練習しているときよりも、このホールそのものが湛えている空気感が助けてくれるように感じています。ああでもない、こうでもないと練習していたころよりも、ずっと自然に楽しんで弾けていたと思います。

ほんとうはパデレフスキ版の曲順が好きなんです。選べるのであれば、パデレフスキ版の順番で演奏したかったですね。

10月14日、第3ステージにおける桑原志織 ©Wojciech Grzedzinski

進藤実優「いま、自分のできる限りのことはできた」

演奏曲:「マズルカ」作品56

旋律と舞踏のリズムが常に絡み合っていて、バランスよく聞こえるように心がけています。

(本番について)リラックスして臨めたのではないでしょうか。やれることはもっとあったと思いますけれど、いま、自分のできる限りのことはできたと思っています。

取材・まとめ
道下京子
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道下京子 音楽評論家

2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...

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