エヴァ・ゲヴォルギヤン〜ショパン・コンクール最年少ファイナリストの「今」をきく
2021年のショパン国際ピアノコンクールで最年少ファイナリストとして世界の注目を集めたエヴァ・ゲヴォルギヤンさん。今年の夏には、浜離宮朝日ホールと神戸朝日ホールでリサイタルを開催します。プログラムに選んだのは、彼女にとって特別な存在だというショパン、シューマン、ラフマニノフ。それぞれの作品に込めた思いや、ショパン・コンクールからの4年間の歩みについて、お話をうかがいました。
2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...
ショパン・コンクール以降の歩みを聴いてもらいたい
エヴァ・ゲヴォルギヤンは、2021年に開催された第18回ショパン国際ピアノコンクールでファイナリストとなり、世界から注目を集めた。当時、彼女は17歳。その後もワルシャワやスペインで研鑽を積みながら演奏活動を続け、コンクールの翌年からは、毎年日本を訪れている。
エヴァ ショパン・コンクールは、私にとってもっとも大きなコンクールで、私の音楽人生を大きく変えました。コンクールを通して新しい人々と出会い、新しい場所とも出会うことができ、この4年間で音楽家としての歩みを大きく進めることができたと思います。
2004年生まれ。ピアノ王国ロシアの新世代でもっとも期待されているピアニストのひとり。2021年の第18回ショパンコンクールでは最年少ファイナリストの中で円熟さえ感じられる重厚な表現と鋭い感性、鉄壁のテクニックで会場の聴衆と世界中のリスナーを虜にした。モスクワ音楽院の名門中央音楽学校でナタリア・トゥルル教授に学ぶとともにロシアン・ピアニズムを代表する巨匠たちに師事。エフゲニー・キーシンやデニス・マツーエフなどの支援を受け研鑚を積んできた。数多くの受賞歴の一例をあげると、サンタ・チェチーリア国際ピアノコンクール第1位、ジュリアーノ・ペカール国際ピアノコンクールグランプリ、青少年のためのショパン国際ピアノコンクール(ポーランド)第1位、ヤング・ショパン国際ピアノコンクール(スイス)第1位、ロシア国立交響楽団によるコンクールグランプリなど50を超える。「あとが大事」と言われるショパンコンクールにおいて現在のエヴァの演奏活動は際立っており、モスクワ音楽院、スペインのクィーン・ソフィア高等音楽院に在学しながらロシア、ドイツ、スペイン、フランス、アメリカなどで年間90回以上のコンサートに出演している。
今夏のリサイタルでは、ショパン、シューマン、そしてラフマニノフの作品を披露する。
エヴァ ショパンとラフマニノフは、私の人生の始まりからともにあった作曲家です。それから、ショパンからもインスピレーションを受けたシューマン《謝肉祭》を、ポスト・ロマン派のラフマニノフへの橋渡しのように挟みました。
ショパン作品については、特別な思いもある。
エヴァ ショパン・コンクール以降、
ラフマニノフはもっとも好きな作曲家のひとり
シューマンの《謝肉祭》については、「何度でも取り上げたい気持ちになる作品のひとつです」と語り、CDにも収められている。
エヴァ 謝肉祭に集まる人たちは、仮面を着けることで自由に振る舞えること、そして、シューマンの《謝肉祭》には自由さが表現されていて、当時としてはそれは革新的なことなのだと教授から教わりました。私自身も、とくにその終曲の行進には、「芸術家も自由でありたいのだ」との彼の主張を感じるのです。
ラフマニノフは「私のもっとも好きな作曲家のひとり」だそう。
エヴァ ロシアで育ちましたので、幼い頃からラフマニノフの作品をよく聴きました。いつか、ラフマニノフ作品をすべて演奏したいと思っているほどです。彼ならではのスタイルや個性、そして、人間的にとても正直で謙虚で目立ちたがりではない……彼の性格も大好きです。
ただ、ラフマニノフは女の子がピアノを弾くのを嫌がっていたそうです(苦笑)。もし彼が生きていたら、彼の前で弾いてみたかったけど!
《音の絵》作品39は、ラフマニノフがロシアを離れてから書き上げられた作品だ。
エヴァ 第2番(イ短調)は、海を見つめて作曲したと言われていて、編集者は《かもめ》とタイトルをつけようと考えていました。海は、その向こうの故郷につながると思います。彼の望郷の念は、彼の創作の至るところに見ることができます。
また、彼の《ロマンス》には「リラの花」が出てきますよね。この花は、ロシアでは4月から5月の春の訪れと結びついています。その時期になってリラの花を見ると、ラフマニノフのその音楽を思い出します。
リサイタルは、浜離宮朝日ホールと神戸朝日ホールで行なわれる。
エヴァ コンサートの良いところは、その2時間、すべてを忘れて音楽に浸れることです。みなさまに、このプログラムをぜひ楽しんでいただきたいと思います。
今は指揮の勉強や弾き振りにも取り組む
ところで、エヴァの母はヴィオラ奏者。音楽家として最初に影響を受けたのは母だったという。
エヴァ 私が生まれたとき、母はまだモスクワ音楽院で勉強していました。試験のために練習する母の姿をずっと見ていました。私のまわりでは、彼女が唯一のプロの音楽家です。
ピアノ以外で夢中になったことを訊いた。
エヴァ 小さい頃から作曲もしていました。それから、子どものころは、映画を観たりお友達とおしゃべりしたりするのも好きでしたが、その後は、音楽漬けの日々です。
今は指揮にも興味があります。本格的に取り組んでいるのは、ここ6か月ほど。指揮者になるためではなく、指揮者とはどういうものなのかを知りたくて、その勉強もしています。
今年2月にプロコフィエフの協奏曲を弾き振りしました。今度は、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第23番」と「交響曲第40番」の指揮をする予定です。
指揮には、絶対的な法則があるわけではなく、その人によってどのようにオーケストラをリードしていくか、指揮者によってさまざまなやり方がある……そこがすごく面白いですね。
日時: 2025年7月31日(木)19:00開演
会場: 浜離宮朝日ホール
日時: 2025年8月3日(日)14:00開演
会場: 神戸朝日ホール
出演: エヴァ・ゲヴォルギヤン(ピアノ)
曲目: ショパン/幻想曲 ヘ短調 Op.49、ワルツ第3番 イ短調 Op.34-2、ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2、練習曲集 Op.10より 第3番《別れの曲》、第4番、第5番《黒鍵》、第6番、第11番、第12番《革命》
シューマン/《謝肉祭》 Op.9
ラフマニノフ/練習曲集《音の絵》Op.39より 第1曲、第2曲、第3曲、第6曲、第9曲
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