インタビュー
2020.03.25
3月特集「音楽にまつわるバケットリスト」

角野隼斗のバケットリスト〜夢はピアニストとしてカッコよくあること!

2018年ピティナ・ピアノコンペティションの特級グランプリを受賞し、人気YouTuberピアニスト「Cateen」としても活躍する角野隼斗さん。今年はショパンコンクールにも参加します。そんな角野さんに、ちょっとした「やってみたいこと」から長期的な展望まで、語っていただきました!

お話を伺った人
飯田有抄
お話を伺った人
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

写真:各務あゆみ 取材協力:名曲喫茶 カデンツァ

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夢を語るのは大事だ。
語ってみなければ、頭の中でハッキリしない。
ハッキリしなければ始めの一歩も踏み出しにくい。
可能性あふれる青年たちには、どんどん夢を語っていただきたいものだ!

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というわけで、今をトキめくキラッキラのピアニスト、角野隼斗さんのバケットリスト(やりたいことリスト)を伺った。

角野さんといえば、2018年に4万人以上が参加したピティナ・ピアノコンペティションの頂点である特級グランプリに輝いた実力派でありながら、今やキッズから大人までを虜にする人気YouTuberピアニスト「Cateen」の顔を持つ人気者。東大大学院でAIの研究に携わり、この春には映えある「東京大学総長大賞」を得て東大大学院を修了! アンニュイなショパン似の面立ちで、もはやズルいくらいにイケてる青年なのだ!

最近はトイピアノもお気に入りです

そんな角野さんのバケットリストはコチラ!

角野隼斗さんのバケットリスト
  • YouTubeにクラシックの演奏動画も載せたい
  • 電子チェンバロがほしい
  • オシャレなスタジオを作りたい
  • AIの研究を進めていきたい
  • ショパンコンクールに「分析」の視点をもって臨みたい
  • 4月に免許合宿に行きたい
  • ピアニストとしてカッコよくありたい

YouTubeにクラシックの演奏動画も載せたい

——角野さんのチャンネルは、昨年秋には8万人ほどの登録者数でしたが、この半年で一気に増えて20万人に迫る勢いです。意外にもクラシックの動画はなかったんですね。

角野 もともとYouTubeは、僕の中では「趣味」という位置付けだったので、ゲームやアニメ音楽などのアレンジばかりだったんです。でもそろそろ僕自身にも興味を持ってもらえてきたかなという肌感覚があるので、今ならクラシックも聴いてもらえるかな、と。

YouTubeはコメント欄でインタラクティヴに交流もできますし、アーティストの「人となり」が伝わりますね。僕自身いろんな人の動画を見るのが大好きで、今はどんな時代の流れになっているか、人気動画はなぜ人気になるのかを探りつつ、1日に何時間も見ています。

電子チェンバロがほしい

——Roland社製の電子チェンバロ「C-30」ですね?

角野 そうです、知り合いの家にあったのを弾かせてもらったら、すごくリアルで楽しかった。オルガンやチェレスタの音源も入ってますしね。欲しいなぁ。30万円くらいなんですけど。

今、僕の中では、ピアノ以外のいろんな音に興味が湧いているのかもしれない。トイピアノも3ヶ月くらい前にふと買ってみたんですけど、面白いですね。カワイ楽器のトイピアノは高音域なので、中音域の、少し違う音色のものもほしいなぁ。

それから、まだ日本に入ってきていない「ハルペッジ」って読むのかな(Harpejji)、ピアノみたいなギターがあるんですけど、それも気になってます。完全受注製らしくて、これも日本円だと30万円くらい。

——30万円って、手が届きそうだけど、ちょっと躊躇する感じの、微妙な額ですね(笑)。

角野隼斗(すみの・はやと)
1995年生まれ。2018年、ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、及び文部科学大臣賞、スタインウェイ賞受賞。2019年、リヨン国際ピアノコンクール第3位。2018年9月より半年間、フランス音響音楽研究所 (IRCAM) にて音楽情報処理の研究に従事。フランス留学中にクレール・テゼール、ジャン=マルク・ルイサダの各氏に師事。2019年、パリにて3回のソロリサイタルを行なった他、ウィーンやポーランドにてリサイタル出演。国内でも多数のコンサート活動を行う傍ら、“Cateen”名義で自ら作編曲および演奏した動画をYouTubeにて発信し、総再生回数は1000万回を突破している。ワーナーミュージック・ジャパンより1stアルバム『Passion』リリース。

角野 あと、いいストリングスの音源も欲しいです。管弦楽法を勉強して、ピアノ以外のいろいろな音色を入れた作曲やアレンジをやれるようになりたいです。

——「音源」っていうのは、コンピューター上でミックスして楽曲制作する素材、ということですか?

角野 そうですね。ストリングスだけでも、映画音楽向けとか、クラシック向けとか、いろんな会社が作っています。

オシャレなスタジオを作りたい

角野 そういう音楽制作をするためにも、めっちゃオシャレなスタジオを作りたいんですよね……

——YouTube動画を作るのにもいいですね。

角野 ピアノがあって、電子チェンバロがあって、トイピアノがあって、Harpejjiがあって、壁にいろいろ飾ってあって……いつかそんなスタジオを作りたいです。

AIの研究を進めていきたい

——そのスタジオがAIの研究を進めるラボにもなりそうですね。大学院は修了されますが、これからもAIの研究は行なっていくんですよね?

角野 はい、秋からは研究所に就職してAIの研究も進めます。研究と演奏活動の両軸でいく予定です。

僕にとっては研究も、AIの進化そのものへの関心というよりは、新たな音楽表現を見つけたいというモチベーションあってのものなので、ベースはやはり音楽。AIとセッションするとか、即興し合うとかが可能になっていくと、人間が思いつかない何かが生み出されると考えているんです。

AI研究のもう一つの方向性として興味があるのは、音楽表現を機械的に分析することです。あまり音楽界では積極的に語られていないけれど、あらゆる表現はすべての要素に分解可能だと思うんです。

ピアノならば、打鍵のタイミングやスピード、ペダルの操作など、さまざまな要素の組み合わせで表現が生まれます。組み合わせの違いで、スタッカート(音を短く切って)になったりレガート(音を滑らかにつなげて)にもなる。マルカート(1音1音をはっきり)、ドルチェ(甘く優しく)、マエストーソ(荘厳に)といった表現は、さらに抽象的な段階として分析できます。音楽的表現をたんに感覚的なものとしておくのではなく、要素の組み合わせとして捉えいくということは、言い換えれば機械でも再生可能になるということを意味していて、僕はそこに興味があるんです。そこからまた、表現者である人間も触発され、新たな表現の地平を手に入れられるのではないか、と。

ショパンコンクールに「分析」の視点をもって臨みたい

——角野さんのそうした分析的な視点は、すでにご自身の演奏活動にも生かされていますか?

角野 そうですね、10月に行われるショパン国際ピアノコンクールを受けるんですが、他の人と同じように頑張ったところで勝ち筋はないので、分析的に考えたいと思っています。

ショパンコンクールは、ほかのチャイコフスキー国際コンクールやエリザベート王妃国際音楽コンクールなどと比べれば、課題曲がショパンだけに絞られているので、分析の重要度は相対的に高い。5年前のコンテスタントの動画を見ながら、それぞれの演奏の特性をまとめ、なぜ受かったのか、落ちたのか、そういう分析も進めています。こういう作業にAIの知見を活かせるのが本当は理想なんですけど。

——それこそ、AIがサササッとやってくれたら、コンテスタントはその時間を別のところに割いて、新たな角度からの研究を進められますね。角野さんは、ご自身の演奏を分析してみると、どこに強みがあると感じていますか?

角野 スケルツォ、ポロネーズ、ワルツは向いている気がする。クラシック以外のいろんなジャンルを弾いているからこそ持っているリズム感やタッチは生かしたいなと。それに対してバラードやノクターンなどはあまり向いてはいないと自分では思っているんです。だからこそ、どうやったら良い演奏ができるかを徹底的に分析したいですね。

ショパン:スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20(2018PTNA特級セミファイナルより)

——予選から本選まで、かなりの曲数を準備しなくてはならないですよね?

角野 全部で2時間半くらいの曲目ですね。本当は4月には予選が行なわれるはずで、その前にパリでレッスンを受けて……などと考えていたのに、新型コロナウィルスの影響で、予選が9月スタートということになり、4月の予定が全部なくなってしまいました!

4月に免許合宿に行きたい

——では、4月にやりたいことは?

角野 これだけまとまった時間がポン! と取れることは今までなかったので、このチャンスに免許合宿に行くしかないな、と。

——普通自動車免許! 今取るしかないかもですよ、角野さん! これからどんどん忙しくなっちゃうから。

角野 本当は早く自動運転の時代になってほしいんですよ。取るならオートマ限定で十分かな。MT、ATのさらに下に、3日で取得できる「超AT」みたいなのができないかな〜と待ってたんですけど(笑)。

——どんなクルマに乗りたい?

角野 スタイリッシュなクルマがいいな。

ピアニストとしてカッコよくありたい

——スタイリッシュという言葉が出ましたが、角野さんはふわっとしたヘアスタイルやラフなシャツ姿での演奏動画がかっこよくて、ファンの方々の心を掴み、少年少女の憧れの対象にもなっています。

角野 それはとても嬉しいです。ファンの方から可愛い靴下や手袋など、小物をもらうことも多くて愛用しています。ファッション・センスは確かに磨いていきたいですね。僕はクラシックよりもポップスやロックのアーティストから触発されることが多いです。

クラシックでは作曲家という圧倒的な存在があり、演奏家はあくまでも作曲家の残した音楽を聴衆に伝える媒介者という立場だと考えると、そこで自我を出すべきではないという考え方はあります。でもそれだけにこだわる必要もない。

クラシック音楽は「若者に人気がない」と言われますが、それは「わかりにくい」からじゃなくて、「カッコよくない」というイメージがあるからなんです、きっと。若い人にクラシックを浸透させようとするときに、わかりやすい解説をつけたり、キャッチーなものだけ聴かせたりして、「敷居を下げる」というようなことばかり考えられがちだけど、曲解説があるから興味をもつのかといえば、そういうことでもないんじゃないかな。僕がアーティストを「好き」になるときは、カッコいいなとか、すごく感覚的なものも大きい。

子どもたちに「あんなふうにピアノが弾けるようになりたい」と思ってもらえたら、すごく嬉しいですね。ピアニストとして、カッコよくありたいです! クラシック、カッコよくしていきたいです!

新しい環境を手に入れた角野隼斗さんの、新たな世界

——日本の最高学府である東京大学に進み、ピアノのコンクールでグランプリに輝き、最新鋭のテクノロジーであるAI研究に携わる。そんな角野さんは、すでに数々の夢を「叶えてきている系」の人なんじゃないかなと思います。夢を叶える秘訣ってありますか?

角野 う〜ん……どうですかね。僕自身はあまり、「夢を叶えてきた」という自覚はないんです。東大に入るとかグランプリ受賞とかはむしろ、「新たなスタートに立つ」というイメージ。絶対賞を取ってやるぞ! みたいな自信もなかったし、目標という感じでもなかった。結果としてもたらされた、新たな環境みたいな感じですかね。その新しい環境を手に入れたら、また次に何がしたいか、どういうことができるかという世界が見えてくる。そうなったらまた新たな環境づくりに向けて努力する……その繰り返しですかね。

音楽家としてはオンリーワンであることが大事ですから、目標とするアーティストがいたとしてその人に近づけたとしても、そこが到達点では絶対にないわけです。3ヶ月前には僕は自分がトイピアノを弾いているとは思ってなかったし(笑)、つねに新たな発見の中で新たな表現を求め続けたい。そんなふうに思っています。

お話を伺った人
飯田有抄
お話を伺った人
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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