インタビュー
2024.11.22
月刊誌『音楽の友』連動企画 フレッシュ・アーティスト・ファイル 【Q&A】

【Q&A】関 朋岳さん~新風を吹き込むヴァイオリニスト、ハチャトゥリアン・コンクール優勝者

月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、演奏家たちの素顔を紹介していきます。第6回は、今年6月にハチャトゥリアン国際コンクール・ヴァイオリン部門で日本人初の優勝を飾った関朋岳さんにご登場いただきました。

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

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1998年生まれ。3歳からヴァイオリンをはじめ、10歳にしてオーケストラと初共演。東京音楽大学アーティストディプロマコース、フランスのパリ・エコールノルマル音楽院などで研鑽を積まれたほか、これまでアメリカ、ヨーロッパの各地へおもむきその演奏に磨きをかけてこられました。現在は東京を拠点に、ソリスト、オーケストラ奏者、室内楽奏者として活動されています。

大事な本番前には「ケーキ」が大切

Q1  名前の由来(朋岳/ともたか)を教えて。

「朋」は、“友”を意味する漢字で友情に恵まれること、「岳」には“山“のように壮大な人生が広がっていくように、という想いが込められているときいています。同じ名前(ともたか)のかたは多くいらっしゃるようですが、この漢字の組み合わせは珍しいようですね。普段周りからは「ともくん」と呼ばれています。

Q2  これまで訪れた国・土地のなかで、いちばん印象に残っている場所は?

イギリスとオーストリアのウィーン。なにかしっくりくるものがあり、この土地なら長期間居られるな、と思いました。ウィーンは気品があって、人種差別も感じない。そしてなによりクラシック音楽の文化が街に根づいているところがよいなと思いました。イギリスは英語で生活できる安心感があります。あと小さいころから英国の街並みに憧れがありましたね。スコットランドにも行ったことがあるのですが、街を歩いているとつねにバグパイプが聞こえるところも魅力的でした。

Q3 自身をどんな性格だと思う?

真面目ではあると思いますが、めんどくさがりや。あと頑固かな(苦笑)。完璧主義なところもある。目標を達成しようとすると、神経質になりすぎるところがありますね。

Q4 気分転換はどのようにしてる?

家でゴロゴロする、かな。映画・動画鑑賞や筋トレ、あとテニスの試合を観ることも好きです。この間、初めて錦織圭選手の生試合を有明コロシアムで観たのですが、やはり画面越しで観る試合とはまったく違う。なにごとも、“リアル”に勝るものはありませんね。

Q5  好きな食べ物は?

ピザと焼肉。

Q6  本番前の勝負飯は?

コンクールなどの大事な本番があるときは “けいきづけ”という意味で、ケーキを食べます。これを怠ると、うまくいかないことも(笑)。6月のハチャトゥリアン国際コンクールのときは、飛行機の乗り継ぎ時間を利用して、ウィーンでケーキを食べました。

関さんが、ハチャトゥリアン国際コンクールの前にウィーンで食べたチョコレート・ケーキ

ヴァイオリンを好きになるまで時間がかかった

Q7 好きな作曲家は?

ベートーヴェン。とくに室内楽作品が好きです。ベートーヴェンのクァルテットをよく弾いたり聴いたりするのですが、その音楽に凝縮されている想いや思考を感じ取るたびに彼の偉大さを感じます。

Q8 いつか演奏してみたい作品は?

マーラーとショスタコーヴィチの交響曲を全曲制覇したいです。これまでにマーラーは「第1番」「第4番」「第10番」、ショスタコーヴィチは「第5番」「第10番」「第11番」を演奏したことがあります。

Q9 憧れの演奏家は?

ギル・シャハムさん、ジュリアン・ラクリンさん、ジョシュア・ベルさんです。彼らは演奏がうまいだけでなく、いつも最大限に音楽を表現してくれるところが聴き手としてうれしい。私もそのような演奏家でありたいと思います。また、この3人は自分の信じる演奏を貫いているところもすてきだなと感じます。

Q10「Q9」で挙げたアーティストで、とくに好きな演奏は?

ギル・シャハムさんはバーバー「ヴァイオリン協奏曲」、ジュリアン・ラクリンさんはブラームス「ヴァイオリン協奏曲」、ジョシュア・ベルさんはヴィエニャフスキ「ヴァイオリン協奏曲第2番」。

Q11 楽器の練習を「辛い」と感じたこと、時期はある?

中学生のころは練習を辛いと感じることが多かったですね。幼いころからつねにヴァイオリンを弾く環境があったので、好きだから弾くというよりは「コンクールでよい結果を残したい」「ほかの人より上手くなりたい」という一心で練習をしていました。なので、ほんとうに心からヴァイオリンを好きになるまでには時間がかかったと思います。中学校までは公立の学校に通っていたので練習の辛さを友達と共有できなかったのですが、音楽高校に入ってからは同じような境遇の仲間が増えて心強く、救われた部分もありました。その後自分の思うような演奏ができるようになったり、アンサンブルの仲間が増えていったりすることで、練習の辛さよりも音楽をする楽しさのほうが勝ってきたと思います。

高校1年生のときに仲間と弾いたベートーヴェン「弦楽三重奏曲第1番」とドヴォルジャーク「弦楽四重奏曲第12番《アメリカ》」はほんとうに愉しくて、いまでも強く印象に残っています

Q12 自身の世界観を変えた言葉はある?

映画『風立ちぬ』(宮﨑駿監督、スタジオジブリ)に登場するイタリアの航空設計技師・カプローニの言葉で「創造的人生の持ち時間は10年だ。芸術家も設計家も同じだ。君の10年を力を尽くして生きなさい」。誰にでもセンスを伸ばす時期、物事が順調に進む時期があると思っているのですが、まさにいま、私は音楽家として成長するうえでその最中にいると感じます。この言葉をきいて、音楽にかかわらずいろんな物事と精一杯、誠実に向き合いたいと思いました。

Q13 好きなドラマは?

ドラマ『THIS IS US/ディス・イズ・アス』がすごい好きです。36歳を迎えた3つ子の兄弟が、その後の人生をどういうふうに生きるか、というストーリーです。

Q14 小学生のころの憧れの歴史上の人物は?

戦国武将の加藤清正(1562~1611)です。

Q15  好きなファッションブランドは?

ヴァレンティノ。最近はディオールのヴィンテージを探すのが好きです。

Q16 これまでに感動した舞台は?

2019年、NHK交響楽団で井上道義さんの指揮で演奏したショスタコーヴィチ「交響曲第11番」。このときの楽団員全員の気持ちの高ぶりと曲の盛り上がり、終演後のお客さんの歓声······ まさに井上さんワールドで一体となった会場の熱気が忘れられません。

Q17 会ってみたい作曲家は?

ハチャトゥリアンです。彼の自伝を読んでいると、ハチャトゥリアンは温かい心の持ち主だったのだと感じます。それを間近で感じてみたいです。

ハチャトゥリアン作品の魅力をきくと、「聴きやすく爽快な作品が多いのですが、アルメニアの民族性をしっかりと曲に反映させている。この二つの要素を同時に体感できること」と話してくれた

指揮者のいない大編成のオーケストラを創る

Q18 これまで音楽、ヴァイオリンを続けてこられた理由は?

一つひとつの本番に自分なりのご褒美を見つけていたからですかね。たとえばコンクールの結果をプレゼントとして受け取ろうとか、これを頑張ったら両親になにか買ってもらおうとか。「Q11」のとおり、私はヴァイオリンを好きだから弾くのではなくただただ練習していた時期があったので、そのときはやめたいなと思ったことはあります。

Q19 20年後(46歳)にどうなっていたい?

年齢相応の音楽の魅力を出せていたらいいなと思います。固定観念にとらわれず、垣根を超えた演奏家になるのが夢です。そしてクラシック音楽、ヴァイオリンは伝統だと思うので、これを次世代につなぐ取り組み、後進に教えることもしたいです。

Q20 26歳、いま挑戦していることは?

指揮者のいない大編成のオーケストラを、来年中に東京で創設する予定です。近ごろ、海外では指揮者なしで大きな編成の作品を演奏するのが流行っており、それを日本に取り入れたいと考えています。日本では前例のない、ベートーヴェン以降の作品、マーラー、ショスタコーヴィチの作品などにも挑戦する予定です。創設のきっかけは、フランスで活動する「レゾナンス」という、いろいろなオーケストラの首席奏者が集う楽団の演奏に感動したことでした。新しく創設するオーケストラでは、すべての楽団員が心から音楽を発信できるオーケストラを目指します。

ハチャトゥリアン国際コンクールの優勝記念であり、デビュー・コンサートといえる演奏会が東京と神戸で開催される。今後のさらなる活躍から目が離せない!
関朋岳さんInformation
ハチャトゥリアン国際コンクール優勝記念公演  関朋岳 ヴァイオリン・リサイタル

日時:①東京公演 11月28日(木)19:00開演/②神戸公演  12月1日(日)14:00開演

会場:①浜離宮朝日ホール/②神戸朝日ホール

出演:関朋岳(vn)、北端祥人(p)

曲目:ハチャトゥリアン(ハイフェッツ編)《剣の舞》、バルトーク「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番」、J.S.バッハ「無伴奏パルティータ第2番」から〈シャコンヌ〉、ラヴェル《ツィガーヌ》、ハチャトゥリアン《アイシャの踊り》、バルトーク《ラプソディ第1番》

問合せ:Mitt 03-6265-3201

公演詳細はこちら

月刊誌『音楽の友』Information

『音楽の友』12月号(11月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、関朋岳さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!

「音楽の友」2024年12月号記事詳細はこちら

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