ルイサダにきく 若いピアニストの指導哲学〈後編〉演奏における自由と感情表現について
9月2~3日、日本ピアノ教育連盟の第36回全国研究大会に特別講師として招かれたジャン=マルク・ルイサダさんにインタビュー!後編では、愛してやまない映画を生徒と共に見ることの意味や、演奏における感情の扱いについて伺いました。
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
演奏における自由を失ってはならない
――例えばショパンを演奏するうえで、彼に近い経験をすることがより本物の表現の助けになるという考え方もあります。それについてはどう思われますか?
ルイサダ その必要があるとは思いません。ショパンのように結核になる必要はありませんし、革命を経験しなくても《革命のエチュード》は演奏できます。作曲家の置かれた状況を知る必要はありますが、知っているからいい演奏ができるわけではありません。
フランス人ならドビュッシーやフォーレの演奏に優れていると思われがちですが、そうとも限りません。逆に、フランス人がポーランド人よりはるかに上手にショパンを演奏することもあります。
その話でいうと、最近のポーランドでのショパン演奏の教育は、少し厳格すぎるような気がしています。結果的に、ロマンティシズムと自由を失っていると思うのです。そのせいで若い世代の演奏が最高水準に届かないなら、残念なことです。私たちは自由でなくてはいけません。もちろん、しかるべき自由の形は保たれていなくてはいけませんけれど。
――俳優の演技と音楽家の演奏には類似性があると思いますか?
ルイサダ 確かに共通点はありますね、同じではありませんが。例えば演技は監督に依存する部分があり、俳優があれもしたい、こう演じたいと思っても、監督がただ冷静にやってくれということもあるでしょう。しかし演奏家は自分が自分の監督で、望む通り表現することが許されています。
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