ノナカ@渋谷にお邪魔します! 〜バンドーレンのリード

クラリネットのリードはどう選び、どう“育てる”か——亀居優斗&福井萌クラリネットデュオの場合

インタビュー
2018.12.27

クラリネットやサクソフォンの奏者が神経を使うもののひとつが「リード」。マウスピースに取り付けて振動させ、音を出すのだが、ケーンという植物から作られた消耗品なので、中高生や愛好家には「いかに効率よくリードを使うか」が悩ましい問題。
東京・渋谷の管楽器専門店ノナカ・ミュージックハウスを訪れ、そこで練習していたクラリネット奏者の亀居優斗さんと福井萌さんに、リードの選び方や育て方を聞きました。

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photo: ataca maki
ノナカ@渋谷にお邪魔した人
加賀直樹 ノンフィクションライター・韓国語翻訳
加賀直樹
ノナカ@渋谷にお邪魔した人
加賀直樹 ノンフィクションライター・韓国語翻訳
1974年、東京都生まれの北海道育ち。東京学芸大学教育学部卒業後、朝日新聞記者に。富山支局、さいたま総局、東京版などを経て、2010年から「全日本吹奏楽コンクール」「...

吹奏楽の主旋律を奏でるクラリネット。ホールじゅうに響きわたる、あのふくよかな音色は、リードの良し悪しにかかると言っても過言ではありません。ただ、どんなリードを選べばよいか、どう保管すればよいか、迷っている人も多いはず。プロの皆さんはどうしているのかな……。

そんな折、期待の若手クラリネットデュオ・亀居優斗さんと福井萌さんが、1月の演奏会を目前に練習中であると聞きつけ、東京・渋谷の道玄坂にある管楽器専門店「ノナカ・ミュージックハウス」にお邪魔しました。こちらのお店は、世界中から厳選した管・打楽器、そしてアクセサリー類を取り扱う野中貿易の直営店。店内には小さなホールや練習スタジオも併設されています。

東京・渋谷の道玄坂にある管楽器専門店「ノナカ・ミュージックハウス」は、セルマーやバック、マリゴなど世界の一流ブランドが揃う。
今回は6階のノナカ・アンナホールにお邪魔します!

本番を控え、練習に熱のこもる2人に突撃取材してみると——。

リード選びは何が基準?

——お邪魔します! 練習中にすみません。ちょっとだけ、クラリネットのことで教えてほしいことがありまして、伺っちゃいました。

福井 こんにちは。

亀居 私たちで答えられることがありましたら。

左:亀居優斗さん。愛知県出身、東京藝術大学卒業。東京佼成ウインドオーケストラ・クラリネット奏者。2018年度「日本音楽コンクール」クラリネット部門入選。
右:福井萌さん。北海道出身、東京藝術大学大学院在学中。ぱんだウインドオーケストラ・シーズンメンバー。2018年度「日本音楽コンクール」クラリネット部門3位。

——ありがとうございます。すぐ帰ります。えっと、お2人は東京藝術大学のときの先輩・後輩でいらっしゃるのですよね。デュオを組まれたきっかけは。

亀居 福井さんが1つ上の学年で、2年ほど前から仲良くなったんです。

福井 東京藝術大のオーケストラの授業で一緒に演奏する機会があり、そのときにすごく音程感があったので、そこから一緒に演奏する機会が増えた気がします。

亀居 学生オーケストラで「シェエラザード」をやったんです。それが初めの共演でしたね。

——2018年度の「日本音楽コンクール」では、福井さんが3位、亀居さんは入選という輝かしい成績をおさめられました。亀居さんは秋から、日本吹奏楽界の最高峰「東京佼成ウインドオーケストラ」に入団されましたよね。若手ホープのお2人の、音色の魅力とは、どんなところにあるのでしょう。それぞれお互いをどう評価しているのでしょうか?

亀居 福井さんはすごい技量をおもちのかたなんです。ブレない軸をもっている。僕はすごく尊敬しています。

福井 私が亀居くんに思うのは、つねにどの音もきれいで良い音。どれをとっても粒が揃っていて奇麗な音がするな、と。

——それぞれ、尊敬し合う関係でいらっしゃるのですね。今日、お伺いしたいのは、クラリネットの「リード」のことについてなんです。

右手に持っているのがリードです。
クラリネットの「リード」とは

「マウスピース」に取り付け、振動させて音を鳴らすもののこと。「ケーン」と呼ばれる植物からできており、リードに使われる葦は主に南フランスなどで栽培。硬度、カットなどの種類は多岐にわたり、奏者にとっては音、感触、レスポンスについてさまざまな選択肢が与えられている。

——お2人がいま、使っているリードは、どんな種類のものなのでしょうか。

亀居 最近は、バンドーレン「トラディショナル」の硬度「3番」を使っています。大学に入りたての頃は、銀色のパッケージの「V.12」や、「V21」を使っているときもあったのですが、ここ1年半ぐらい前から、この「トラディショナル」の「3番」に落ち着きました。

——パッケージの色から「青箱」と呼ばれていますよね。

亀居 僕は「青」って呼んでいます。

1905年にパリ・オペラ座のクラリネット奏者が創業したリード&マウスピースのメーカー、バンドーレンの「トラディショナル」。B♭クラリネット用は1箱10枚入りで価格2,900円。

福井 私はバンドーレン「V.12」の「3半」(3と1/2)、通称「銀箱」を使っています。いろんなものを試したときもあったんですけど、今はずっとこれですね。

バンドーレン「V.12」。B♭クラリネット用は1箱10枚入りで価格3,700円。

——福井さんが使っている「V.12」は、「トラディショナル」より若干厚いんですよね。それぞれ、その種類を選んだのは、なぜでしょうか。

亀居 オーソドックス、スタンダードなものが良いと思っています。バンドーレンのリードのカットって、とてもきれいなんです。触り心地も含めて。信頼できるし、安定したものを手に入れられるというところが魅力かなと思います。

その一方、僕は仕掛けをすぐ変えたくなっちゃうタイプ。マウスピースやリガチャーは、気が向いたら「ほしい」と思って買って、時計を変えるみたいな感じで新しいものに変えているんです。

だけど、リードはバンドーレンだけ。リードがブレちゃうと、自分がどこにいるのかわからなくなっちゃう。

——リードだけは固定しておく。

亀居 ええ。それから、「トラディショナル」は、バンドーレンのなかでも一番安いんですよ(笑)。ほら、リードってたくさん買うでしょう? それを考えると、嬉しい点のひとつ。

「V.12」とは「ヒール」(リード全体の厚み)の分厚さの違いがあるんですけど、「トラディショナル」のほうが薄い。薄いほうが好みなんです。

ティップ(リードの先端)の厚さも、ヒール(リードの根元)の厚さも、わずかにトラディショナルのほうが薄い。

それでも、中学・高校のときは「トラディショナル」でも硬度「3と1/2」とか「4」を使っていたんです。数字が上がると硬度が増すんですけど。それが今の「3」に落ち着いたのは、いろいろ求めるスタイルが変わってくるうちに、そうなりましたね。

——「求めるスタイル」と言いますと?

亀居 大学2年のときに、開きの広いマウスピースを使っていて、それに対して硬い「4番」を付けて、結構、力で吹いていたんです。でも、海外のコンクールを受けに行ったときに周りの奏者を見て「それではないかな」って思い始めた。ちょっと柔らかめのリードを使って、柔軟な演奏ができるようになりたいと思って、少しずつ硬さを落とし、今、「3番」に落ち着いています。

——福井さんが「V.12」を選んだのは、なぜですか。

福井 いろんなリードに、それぞれ良いところがあると思うんですけど、このバンドーレンの「V.12」はやっぱり響きが違うな、と。ホールの後ろまで届くような、芯のある響きをもっている。いろいろな表現、鋭い表現、あるいは柔らかい表現を一番出しやすい。自分の思う表現が出てきやすいリードだと思います。

他にも吹きやすいリードがたくさんあって、発音がうまくいく、ダイナミックレンジが広いなど、いろいろ良いところが違うんですけど、やっぱり「響き」が大切。試行錯誤したうえで戻ってくるのは、やっぱり「V.12」です、毎回。

——自分自身がイメージする音を「再現しやすい」ということなのですね。

福井 はい。思ったように鳴ってくれるんです。もちろん、慣れているからというのもあるかもしれないんですけど、「このリードだから今、できていることがあるのかな」と思います。

保管方法でリードの状態が変わる?

——なるほど。それにしても、リードって、なんだかものすごく消費するイメージ。安い買い物ではないですよね。ご活躍の場を広げているお2人は、なおさら大変だと思うのですが、どんなふうにリードを選んで、保管しているのでしょうか。

亀居 僕は買ってきたその日に吹かずにパッケージを開けて、中の湿気除けの個包装も開けちゃう。そして数日間、置くようにしているんです。1回も吹かずに。

その数日後、今まで使っているリードを吹いた流れでそのまま、音出しのときに吹いてみるんです。それを何日か繰り返したときに、良いリードと悪いリードって、だいたい触感でわかってくる。

箱の中の個包装は、湿度が保たれた状態だが、亀居さんはあえて最初に全部を開封。

——箱には10個のリードが入っていますが、全部その日にバーッと出しちゃうわけですね。でもどうしてですか? 湿気の問題?

亀居 パッケージを開けてすぐ吹くよりも、ちょっと日本の湿気を馴染ませたほうが、持ちが良い。コシが生まれるような気がするんです。すぐに吹いちゃうよりも、ちょっと外気にさらしたほうが良いのかなって。

僕、あんまり「1日何秒吹いて、じゃあ次は十何秒吹いて、三十何秒吹いて」みたいにきれいに育てるタイプではない。最初から吹くよりも、ちょっと外気と馴染ませたほうが、のちのち使いやすくなるのかなって思ったんです。

——福井さんは?

福井 私は買ってきて、全部開けて。

——やっぱり全部開けちゃう。

福井 まず、全部吹きます、開けたその日に。それで、だいたい最初の日は10枚のうちの6枚ぐらい残るんですけど、さらにちゃんとした響きを持っているリードというのは1枚か2枚ぐらい。でも、その6枚で「育てていく」んです。

——「育てていく」! 素敵な言葉ですね。いとおしく思っているような。

福井 使っていく中で、「ちょっと重たい」とか、「バランスが悪い」とか、そういうリードは少し自分で削って、練習用に使うようにしています。

福井さんも、全部の個包装を開けたうえで、一気に吹いて選んでいく。吹いてみたあとの置き方で、リードの良し悪しがわかるようにしている。

リードの育て方

——その「育てかた」について、教えてください。削ること以外に、どんなことが?

亀居 僕はあんまり「育てる」という感覚になったことがないなあ。僕は気分でやっちゃうタイプ。「リードを最初に数日間置く」ぐらいが、自分のなかで一番マメにしていることです。

その後、毎日少しずつ吹いて、ある程度選別できたらリードケースに入れる。いま使っている金色のリードケースに、とりあえず「良い」と思った順に、「1番」から「12番」まで入れていって。でもやっぱり吹いていくと、消耗してダメになったり、ちょっと硬くなってきて、思ったように鳴らないなと思ったりする。変化していくので、その時々で番号に沿って順番を入れ替えるんです。

亀居さんのリードケース。12枚を収納可能で、リードを選んだあとに1番から良い順に並べておく。
福井さんのリードケース。このセルマーの旧型リードケースを福井さんが楽器店で発見して、コンパクトで持ち運びしやすいと藝大で流行ったとのこと。

——メンバーチェンジ。

亀居 時間がないときは「1番」のリードを選んで、時間のあるときはいろんなリードを吹いてみて、また順番を移動させてみる。硬くなったら少し削ってみるぐらいで、特別「育てて」はいないかな。

——湿度管理は買ったときだけなのでしょうか。水にちょっと漬けてみたりとかは?

亀居 水にも漬けないし、湿度調整のアイテムも買っていない。全然、たぶん湿度を守れていないですけど、ジップロックみたいなケースに入れています。

福井 私は、リードの乾いている時間が必要かもしれないと思うようになりました。それからは、逆に夏場はしっかり乾燥させてからリードケースに入れるようにしています。冬になるとまた変わりますけど、「ずっと湿っている状態」だと、だんだんボケて音にクリアさがなくなってくるような気がしています。

——ああ、ずっと湿らせているのも良くない、ということでしょうか。

亀居 うーむ、たしかに、それはあるかも。あんまり気にしていなかったけど。「ケースに入れたら乾くだろう」とだけ思っていたけど。

福井 ふふふ。

手際よくリードを選んでいく福井さん。最初はリガチャー(リードの留め具)も使わず、指で押さえて1音だけ試し吹きし、良さそうなリードはリガチャーありで音階を吹いて確認。

——福井さんはどうリードを育てていますか。

福井 私は、気分ではなく計算でわりと「育てたい」タイプなので、全然違うんです(笑)。最初に買ったときはわりとこう、繊維がはっきりしていて、吹くうちに透けるというか、向こうのマウスピースの色が見えてくるようになるんですけど、そこまでは絶対いかないように吹いていって。それが、だんだん日が経つにつれて、透けるまでの時間が長くなっていくように育てています。

——本番用と練習用に分けていますか?

福井 最初に「このリードで本番をやるんだろうな」っていう気持ちで、それがダメにならないように、他のリードで回して練習しているんです。そのなかで、「ひょっとしたら、こっちのほうが良いかも」となった場合には、最終的に本番用にしようと思っていたリードと比べています……亀居くんと全然違うね(笑)。

消耗品のリードとの付き合い方

——第一線で活躍するお2人。やっぱり、リードってかなり早く消耗しちゃうものですか。1箱買って、次に買うサイクルって?

亀居 僕はコンクールの前だと、リードに不安を抱えたくないので、普段より多めにパッケージを開けて、使うサイクルを早くして「良い状態」のものを常に持っているようにするんです。でも、普段はそんな……、つねに最高でなくても何とかなってしまう。1ヶ月に2箱ぐらいを何とか回しています。

福井 私もやっぱりコンクールになると、すごいシビアになるので、かなり箱を開けていると思いますね。

——吹奏楽部の人たちや、音楽に親しもうと思う人たちに向けて、メッセージをお願いします。リードをどうやって選んだら良いかわからないままの人って、わりと多いはずだと思うんです。

亀居 僕が中学校に指導に行ったときなどで驚くのは、なんとカビが生えていて、「どうなっているんだ、これは」って状態のリードで吹いている子がたまにいるんですよ。部活だと、なかなか親に「買って」って言いにくくて、安くはないリードをたくさん買うことはできないかもしれない。

でも、良い状態のリードをつねに安定して持っていることは、自分のスキルアップに必ずつながると僕は思っているんです。

お小遣いをちょっと貯めて買ってみよう、とか、それぐらいはしたほうが、自分も吹いていて楽しくなるんじゃないかな。良いリードで気持ちよく吹けたほうが楽しくなります。

リードを吹き比べる亀居さん。12枚収納できるリードケースを4つ持ち、優劣の順番を入れ替えながら本番に向けて調整する。

福井 私も今、副科実技としてクラリネットのティーチングアシスタントをしていて、初心者の子たちを教えることがあるんです。そのときに思うのは、自分の実力がまだレールに乗っていない段階で、自分のせいなのか楽器のせいなのか、何で音がうまく出ないのかわからない人が、すごく音の出にくいリードで吹いていたりすることがある。

吹けないことを自分のせいにする前に、リードが1箱に10枚入っているのなら、1日10枚は吹いてみてほしい。そうすると、「あ、これだったらうまくいく」ということがあると思うんです。悩んでいるときに、あまり一つのことに固執しないで、いろいろなリードをたくさん試してみる。いろいろな選択肢をもって練習していけたら良いかなって思います。

——第一線で活躍するお2人にたいへん貴重なアドバイスをいただきました。良い音のため、良いリードを見極めていく力を養う必要性を強く感じました。お邪魔しました! 演奏会、楽しみにしています!

亀居福井 ありがとうございました!

バンドーレンのリードは、渋谷・道玄坂に立つ「ノナカ・ミュージックハウス」2階で入手できる。種類で迷うようなら、岡本店長(写真左)をはじめ、専門のスタッフに相談してみよう。
お店情報
ノナカ・ミュージックハウス

6階建てのビルに、サックスやクラリネットのほか、金管楽器やオーボエ、ファゴットのショールームを備えている。6階はイベントや公開レッスンを催すノナカアンナホール、1階は修理や調整を行なうノナカプレミアムワークショップとして、国内外の第一線で活躍するアーティストも日々訪れている。

住所: 東京都渋谷区道玄坂1丁目15−9

問い合わせ先: Tel.03-5458-1521 https://www.nonaka.com/nonakamh/index.html

福井萌&亀居優斗 コンサート情報
「第15回クラリネットアンサンブルコンクール グランプリ受賞記念コンサート 〜No Parking〜」

日時: 2019年1月10(木)19:00開演(18:15開場)

会場: スペースDo 管楽器専門店ダク 地下(東京都新宿区百人町2丁目8−9)

出演: 福井 萌・亀居 優斗

曲目:

B.Mantovani:METAL
B.Cavanna:Parking Schubert
M.Jarrell:P.M/M.P
D.D’Adamo:Goodbey universeX
T.Escaich:Grand VI ほか

料金: 2,000円

問い合わせ先:Tel. 090-1476-1077/E-mail:clcame3@gmail.com(亀居)

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