インタビュー
2022.04.22
4月の特集「音楽と部屋」

コレクションに驚愕?感激!? 音楽編集者のオタク部屋を公開!

Webマガジン「ONTOMO」を運営する音楽之友社にも、さまざまな分野を極めようとするなかで、部屋がすごいことになっている人(平たく言えばオタク)がいるらしい。噂をもとに本人に直撃! 楽器や楽譜、音盤コレクターの代表選手たちの部屋をご覧ください!

音楽之友社
音楽之友社 出版社

昭和16年12月1日創立。東京都新宿区神楽坂で音楽の総合出版、並びに音楽ホール運営事業を行なっています。

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ふと気がついたらこんな本数になっていました

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まず一人目は、この4月に23年間いた月刊誌「バンドジャーナル」から出版部書籍課に異動したばかりの赤井淳。おそるおそる聞いてみました。「あの~楽器をとてもたくさんお持ちという噂を聞いたのですが……」

いきなりおびただしい数のトランペットが登場!

——これはいったい何のコレクションですか?

赤井 意識的に集めたトランペットではなく、気がついたらこんな本数になっていた、というマイ楽器の数々です。いまおもに使っているのは、Bachの赤ベルのストラドと、ヤマハのシカゴモデルの第2世代、あとシャイアーズもたまに、という感じです。現在は地域の吹奏楽団で演奏をしているので、B♭管が多くなっています。

マウスピースは30本ほど持っています。いまメインで使っているマウスピースは、カンスタルがツーピースで発売したマウントバーノンBach時代の3Cの復刻版を、「トシ・トランペット・アトリエ」の亀山敏昭さんにワンピースでコピーしてもらい、それをさらに亀山さんの工房で微調整したものになります。自分の技量で足りない部分を、楽器やマウスピースに補ってもらっていると感じています。やはり道具(仕掛け)へのこだわりは重要と考えます。

マウスピースは約30本持っています。家のどこかにあと10本くらいあると思います。実際によく使うのは、2〜3本です。

——おすすめ&こだわりポイントを教えてください。

赤井 特にどのメーカーのどのモデルがよい、というようなこだわりはありません。吹いてみて、「あ、これ自分にとっていい感じで吹けるな」という楽器が、自分に合うトランペットだと思います。

大切にしている楽器では、中学生のときに初めて親に買ってもらったヤマハのYTR333(当時のインペリアルモデル)や、シリアルナンバー(18000番代)から1958年頃に製造されたと思われるBachのマウントバーノン時代のストラドなどでしょうか。ちょっとユニークな楽器だと、キャロルブラスのミニポケットトランペットや、プラスティックでできたタイガートランペットなどがあります。自分にとって、16本とも大切な音楽をするための道具です。

——どんな楽器があるのでしょうか?

赤井 楽器を購入し、歴代使用してきているトランペットを以下に紹介します。一部売却して写真にないものも含んでいます。

Akai Collection

ヤマハ   YTR-333 
ホルトン  T-101    
バック   C229 25H  
バック   C229 25H   
バック   198ミレニアム・モデル 
バック   180ML37/25 マウントバーノン シリアル18000番代
ヤマハ   YTR-8335LA 
ヤマハ   YTR-9335CHS 第2世代
ヤマハ   YTR-136
シャイアーズ モデルA シリアル300番代
ヤマハ    コルネット  YCR-8335S 
カンスタル  フリューゲル ZKF 1525-1 
ベッソン   ピッコロ  15SP-2 
マルカート  ポケットトランペット 
長野管楽器  信号ラッパ(陸上自衛隊仕様) 
タイガートランペット ピンク 
バック    180ML37/25 GBSP
バック    180ML37/25 GL 
キャロルブラス ミニポケット・トランペット N1000 B♭管

最近新たに加わった16本目の楽器です。とても小さいですが、きちんと作られていて普通に演奏できます。旅行や宴会のお供によく連れていきます。

——投資金額はトータルでいくらぐらいですか?

赤井 定価で換算すると、おそらく350万円くらい。実際には多少の値引きがあったりしているので、300万円前後でしょうか?

——家族からの反応は?

赤井 相方はクラリネットを吹いていて、彼女も楽器や周辺の仕掛けによって、いろいろ違いがあることをよく分かっているので、私が楽器を買うことには干渉しません。むしろ「よい楽器があれば、一期一会だし買っちゃえば?」という感じです。よって、私が楽器を購入するときの相方への気遣いは皆無です。

逆にいうと、自分を止めてくれる人がいないので(笑)、購入する際には自身が慎重にならないと……。高額な楽器で購入を迷った場合は、日を変えて同じ楽器屋さんに通い、同じ個体を何度か試奏させてもらったりもします。買う・買わないに関わらず、後悔はしたくないので、必ず楽器屋さんで試奏をして、納得したものだけを買うように心がけています。

CDはどんどん増殖していくので、いつしか棚からあふれて床上に積み上がっていきます

続いては、「レコード芸術」編集長の浜中充。相当なコレクションをお持ちという噂です。もしかして、CDの収納方法など参考になるかも……!?

浜中 「レコード芸術」の編集者という仕事柄、CDは増えるいっぽうです。CD、大好きなので、もちろんうれしい。サンプル盤をいただくことも多いし、とうぜん自分でも買っちゃいます。とにかくモノをためこむのが好き。でも、近頃は収納の限界が見えはじめているので、どうしても欲しいものでなければ、買うのをあきらめるように心掛けています。

高校に入学したときに初めてのCDプレーヤーをゲットして(入学祝い!)、CDはその少し前から集めはじめました。いまどれくらいあるのかは、よくわからないです。たぶん、1万5千から2万枚くらいだと思う。筋金入りのコレクターから見たら、ぜんぜんたいした分量ではないです。CDは自宅、実家、編集部の3ヶ所に分散して保管していますが、自宅のCDの収納状況をちらっとお見せします。収納というか、収納しきれてないのですが。

願望では、すべての壁をびっしり棚で埋め尽くして、CDはもちろん、映像ソフトや本などなど、集めたものをキレイに並べたい。でも奥さんからは、全壁面棚尽くしは断固拒否されました。現状では、棚はCD用に1本、映像ソフト用に1本、書籍用に2本でがまんしてます。

これぞCDラックの鑑!

浜中 こちらはCDのラックで、1600枚収納タイプ。CDは基本的にプラスチック・ケースから特注ビニール袋に入れ替えていますが、そうすると厚さが3分の1になります。ぜんぶを入れ替えたわけではないので、棚1本に4千枚近く収まっているはず。探しやすいように、レーベル、作曲家、演奏家の順に、ちゃんと並べられているのがポイントです。と言いつつ、収まりきらないものは、棚の上に積み上げます。どんどん積み上がると、手が届きにくいのが難点。奥さんに、部屋干し用の物干し竿を渡されてしまったのは、不本意ですが、しょうがないですね。

床から生えるCDタワー。

浜中 CDはどんどん増殖していくので、いつしか棚からあふれて床上に積み上がっていきます。上の写真がその様子。けっこう斜めになっているように見えますが、絶妙なバランスで積まれているので、ちょっとした地震でも大丈夫。一種の耐震構造でしょうか。難点は、下のほうにあるものがひじょうに取り出しにくいこと。すぐそこに見えているのに、なかなか聴くことができない。このCDタワーは、奥さんからとにかく不評で、ひじょうに嫌がられています。

コンサートのプログラムなどが積み重なるタンス。

浜中 最後にお見せするのはタンスの上。この写真だと、わかりにくいんですけど、天井間際なので、手が届くギリギリの高さです。当初は本棚に収めていたコンサートのプログラム、映画のパンフ、展覧会の図録などが、やっぱりあふれだしてしまい、とりあえずここに積み上げています。ごちゃごちゃと積むうちに、CDボックスも積んでしまいました。ストラヴィンスキーとメシアンは、重石がわり。

下のほうには、バッハのカンタータ全集とソニーのブーレーズ・ボックスが埋まっています。これはしょっちゅう聴きたくなるのに、あまりにたいへんで取り出せないでいます。聴きたいときに聴けないので、ほんと不便。まあ、自業自得なんですけど。

オーディオもCDも30年以上日々是増殖

同じく「レコード芸術」編集部の田中基裕にも期待が高まります。というのも、以前に音楽の聴き方について語り合う座談会で「自宅ではテレビやラジオ、オーディオなど3~4ヶ所で同時に音楽を鳴らしながら生活し、その中からいい音楽を発見する」と発言していたのです……いったい自宅はどうなっているのでしょうか。

——これはなんのコレクションですか?

田中 「引っ越しのサカイ」のパンダが好きでずっと大事にしております(ウソです)。中はすべてCD。本当は後ろの棚のように並べたいのですが、引っ越し時のママ、パンダ顔で待機中です。

パンダの奥に広がる広大なコレクション。

——おすすめ&こだわりポイントを教えてください。

田中 オーディオは「光る」ことが重要です。煌々と輝く2つの赤い目玉はパワーアンプのフロントパネル。本当です。しかも音楽のダイナミックレンジと同期してビカビカーッと光ったりシュンとなったりします。聴きながらウトウトしてしまい、なんか眩しいなと目を開けたらこの目玉がギラギラしていたことが何度かあります(ウソです)。

愛用中のアンプ。

田中 それから、Bluetoothで飛ばして聴くストリーミング用スピーカー。なかなかこれはというものが見つからなかったのですが、あるときこちらを試したら即気に入り、現在フル稼働中。元々はスピーカーではないらしいです。モノーラル? あまり気にしてません。光るし。

愛用中のストリーミング用スピーカー。

——どれくらいの期間で出来上がったのでしょうか?

田中 オーディオもCDも30年以上日々是増殖。たまに反省しますが、すぐ忘れます。

——投資金額はトータルでいくらくらいですか?

田中 遠くを見たい気持ちになります。

——ご家族からの反応は?

田中 おまえ死んだらこれどうするつもりや!(怒)

私の人生における最大の趣味がプレヴィン

最後は、出版部部長の中沢十志幸が登場! 中沢さんは“人物マニア”代表です。

——これはいったいなんのコレクションですか?

中沢 指揮者・ピアニスト・作曲家であるアンドレ・プレヴィン(1929~2019)のディスク——LPレコード、CD、SACD、LD、DVD等——を中心としたコレクションです。プレヴィンはマルチな音楽家だったので、クラシック音楽だけではなく、ジャズ、映画音楽(映画のDVD等も含む)など、さまざまなジャンルにまたがっていて、それゆえコレクションも膨大なものになっています。

プレヴィンが演奏しているものだけではなく、彼の作曲・編曲した作品もコレクションしています。また、作品の楽譜、書籍や雑誌、資料など、プレヴィンに関するものは何でもコレクションの対象です。

主にクラシックのディスクを中心としたLPレコード棚の一部です。プレヴィンの若き日のポートレイトも飾っています。

——おすすめ&こだわりポイントを教えてください。

中沢 同じ音源のディスクでも、LP、CD、SACD、国内盤、海外盤と、フォーマットや仕様等が異なるものはすべて集めています。以前ONTOMOでも紹介しましたが、たとえば1973年にロンドン交響楽団を指揮して録音したホルストの《惑星》のディスクだけでも、15枚以上あります。

もちろんコレクションだけではなく、プレヴィンの演奏会もあらゆる機会を捉えて通いました。1988年以降の来日公演は、地方公演や同一曲目の公演でもほぼすべて行きました。また、ロンドンやウィーンへ彼の追っかけツアーをしたこともあります。

クラシックのディスクを中心にしたCD棚の一部です。ジャズ、ポピュラーのディスクを中心にしたCD棚の一部です。
ジャズ、ポピュラーのディスクを中心にしたCD棚の一部です。

——どれくらいの期間で出来上がったのでしょうか?

中沢 13歳、中学1年生の3月に、ホルストの《惑星》のLPレコードを買ったのが最初なので、45年超ということになります。

学生時代は小遣いやバイト代など、そのほとんどを「プレヴィン代」に費やしていました。社会人になってからも、独身のうちは使い放題でした。

——投資金額はトータルでいくらくらいですか?

中沢 総額については数えるのが怖いので計算していませんが(苦笑)、おそらく車が数台買えるぐらいの金額にはなるのではないでしょうか。とにかく私の人生における最大の趣味がプレヴィンなので、相当な出費をしていると思います。

——ご家族からの反応は?

中沢 半ば呆れられているので、放任状態です。ただ、コレクションが膨大すぎて自宅に置けなくなってしまったので、近所にレンタルルームを借りて、そちらにも分けて置いています。レンタルルームの費用が毎月1万5000円くらいかかりますが、これは駐車場代(車は持っていないので)のようなものだと思って必要経費だと諦めています。

プレヴィン作品の楽譜のコレクション。

弊社のマニアックな人たちのお部屋はいかがでしたか? 今すぐ真似してコレクターを目指したくなりますね!(白目) 音楽に占領された部屋……もとい音楽とともに暮らす部屋、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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昭和16年12月1日創立。東京都新宿区神楽坂で音楽の総合出版、並びに音楽ホール運営事業を行なっています。

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