特集「いい音で聴く!」座談会

ストリーミング隆盛の時代にCD/SACD、LPにカセットテープ!? 自分好みの環境を見つけて、もっといい音を探そう!

レポート
2019.08.10

普段はスマホにイヤフォンでストリーミングという、ごく普通の音楽環境で過ごしているONTOMO編集部。びっくりするほど手軽に音楽が聴けるけれど「もうちょっといい音で聴きたい......」の気持ちも抱いてます。

そこで今回は、小社のオーディオ雑誌2巨頭「stereo」と「レコード芸術」から、ちょっとマニアックな先輩をお招きして、音楽の聴き方の多様性を語り合う座談会を開催!

ハード、ソフト、精神論まで? 今一度、自分が求める「いい音」を考えてみよう。

CD/SACD推し
田中基裕 「レコード芸術」編集者
田中基裕
CD/SACD推し
田中基裕 「レコード芸術」編集者
レコード芸術編集部所属。在籍年数不明。記すべきプロフィールも、うーん特に、です。
編集長はLP/カセット推し
月刊「stereo」編集部 オーディオ誌
月刊「stereo」編集部
編集長はLP/カセット推し
月刊「stereo」編集部 オーディオ誌
1963年創刊の老舗で、唯一の月刊オーディオ誌。クラシック音楽中心の音楽之友社にあって、ロック&アウトドア野郎が多数在籍する異色(異端?)の存在。庶民の心を持ち続け、...
ストリーミングじゃだめですか?
ONTOMO編集部
ONTOMO編集部
ストリーミングじゃだめですか?
ONTOMO編集部
神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

「いい音で聴きたい!」という思いは本来、音楽が好きな人であれば誰しも抱くのではないだろうか? 好きな音楽を、少しでも気持ちよく聴きたいという思いだ。

しかしSpotify、Amazon Music Unlimited、Apple Musicなどストリーミングが全盛の時代。毎日のように更新される新アルバムや、プレイリストを追うのに忙しく、音楽を手に入れるハードルはグッと下がったけれど、その分「音」へのこだわりも下がっている気がした編集部。

ここはひとつ、小社のマニアックな先輩たちを招いて、それぞれの音楽の聴き方に対するこだわりと愛情を教えていただこうではないか!

というわけで、まずは登場人物を紹介します。

レコード育ち、CD誕生以来はひと筋!「レコード芸術」編集者 田中基裕さん

基本的にはCDとSACDで音楽を聴く「レコード芸術」編集部代表。世代的にLP育ちだが、20歳のときCDとの出会い以来、浮気なしのCD一筋。

いい音で聴くために日々、少しずつ再生環境をいじっている。根っこにあるのはオーディオ好き精神であり、イヤフォンは耳が痛いから使わない。曰く「常に空気振動による再生を」

ちなみに田中さん、自宅ではテレビやラジオ、オーディオなど3、4か所で同時に音楽を鳴らしながら生活し、その中からいい音楽を発見できる特殊能力も持っている(仕事柄、膨大なソフトの中から優れた作品を見つけるための選抜試験らしい)。

CD世代ながら子どものころから本格オーディオで育ったサラブレッド 「stereo」編集長 吉野さん

CD世代ながら、幼少時よりアナログ再生や大きなコンポがある環境で育つ。友人宅で音楽を聴いたりすると、「ちゃんと聴こえねぇじゃん」と秘かに思っていたマセたお子さまだったらしい。

現在はストリーミングやネットも利用はするが、あくまで試聴と捉えており、いいなと思ったら、CDかレコードを探して買っている。デジタルには重きを置いておらず、CDの音は好きではないが、CDしか出ていないものも多いので仕方なく利用。レコードが絶滅危惧種となった90年代の音楽を聴くときには、カセットを探しているという。

「収録した時代の空気感まで聴く」ことをモットーとする。

演奏も聴くのも大好き! 試聴環境は......ストリーミングじゃだめですか? ONTOMO編集部からの2人

音楽はよく聴くけれど、ソフトやハードの質にまでは手が回っていないONTOMO編集部からはMとKが参戦。コアな世界を目の前にややビビってます。

ONTOMO編集部M
普段はスマホにイヤフォン、ストリーミング環境(Amazon Music Unlimited)でオーケストラ作品をよく聴く。自宅にはミニコンポあり、クラシック以外の好きなアーティストはCDで買ったりもする。
ONTOMO編集部K
再生環境はスマホ/タブレットやPCにイヤフォンとヘッドフォン。現在はほぼストリーミング(SpotifyとApple Music)で聴いている。好きなジャンルの幅が広いのでストリーミングは救世主。気づいたらCDは3年買っていない。

試聴開始! ONTOMO編集部、巨大なモニタースピーカーに慄く

先日のスピーカー試聴に続いて訪れたのは音楽之友社の秘密の部屋、stereo視聴室。

まずは普段、基本的にはストリーミングを使用しているONTOMO編集部2人のお気に入りの音源を試聴することに。

♪iPhone+Amazon Musicのストリーミング再生で編集部Mチョイスを試聴: プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲 第2番」第3楽章

オーディオ評論家の方々からの認められた理想的な環境を持つstereo視聴室。





M: 立体感もあるし、普段とは全然違う世界に感激です。

吉野: 今回使用しているのは、フォステクスのモニタースピーカー。家で音楽を聴くためというよりは、録音したものをプロの方々がチェックするために作られているんです。

田中: 余計な表情が出ない、プレーンで淡白な音がします。塩も砂糖も入っていないって感じ、と言ったら怒られるかな(笑)。

K: 自分はこういう音好きです。

吉野: 家にいて、これで聴こうとは思わないかな。すごい聴こえると疲れるんですよね。聴こえてほしくない部分もありますよね。バンド演奏とかで、細かい部分が聴こえても一体感がないと、曲としてはつまらなくなる。

田中: ONTOMOの2人は自分でクラシックの演奏をするから、こういうのが好きかもしれませんね。クラシックはホールで聴く音が原点。異様な静けさなのなかで、誰がなにをやっているのか、スコアを見るように、起こっている出来事を全部聴きたいという人が多いですよね。

M: 私はプレーンな音と、そうでないものをきちんと聴き比べたことがないので、好き嫌いがあまりわからないですね。

田中: それはスピーカーやケーブルを替えるとすぐ解ると思いますよ。音楽をやっている人ほど、基準がはっきりしているので、自分の好みの音が見つけやすいと思います。

K: 自分も好きなの聴いていいですか?

♪ダウンロード音源+iPadで編集部Kのチョイスを試聴:アイアート・モレイラ「トンボ・イン・4/7」

K: 気持ちいい!!

吉野: 気持ちいいですね。ドラムのキックの、腹にくる感じ、イヤフォンじゃ出ないですよね。

あと、スピーカーは2台で空気を合成してステレオの立体感を表現しているので、基本は三角形の頂点で音を聴くんです。イヤフォンだと、それぞれの耳に直線で音を出して、脳みそで疑似的に合成するのでちょっと気持ちわるくなることがありますね。

田中: スピーカー的な状態を再現するために開発されたヘッドフォンもあるけれど、値段が高かったり、大きかったり。こういう大きい振動板があると、コントラバスがあるのと同じですからね。小さなイヤフォンで、どれだけ電気的にブーストしても限界はありますから。

K: スピーカーは楽器なんですね!

吉野: まぁそういうことですね。だから、スピーカーによって特性がまったく違う。全部違います。音について考えることが面白いんですよね。こうゆう素材・形で、こういう音が出てくるんだと色々試してみる。

田中: 例えばこのスピーカーは3つに分かれているじゃないですか? 元々の楽器は1つなのに、3つに音を切り分けて、繋いでるわけですから、そこに違和感を感じる人もいます。

田中: 実際に、人がいて演奏しているわけではないので、いずれにしてもイリュージョンです。自分の中で好きなものや、聴き方が変わっていけば再生環境も変わっていくんです。

吉野: 考え方ですよね。どんな音を求めているのか自分と対話しないといけないんです。

田中: ケーブル一本かえて、違和感が拭えず、また戻して……なんてことは、オーディオ好きには日常茶飯事だと思いますよ。

ソフトに施された工夫を聴く――CDとSACD

田中: 再生機器だけではなく、ソフトの側にも、いい音で聴くための工夫がされています。

今回は面白いものを持ってきました。同じ音源が、CDとSACD両方発売されています。

♪田中さんのチョイスをCDとSACDで聴き比べ:メシアン作曲《アッシジの聖フランチェスコ》(シルヴァン・カンブルラン指揮:読売日本交響楽団)

右側がSACD(左下にSACDマーク)。

K: 全然違う! のはわかるんですが、CDとSACDは何が違うんでしょうか?

田中: 信号の種類が違ったり難しいこともあるのですが、簡単に言うとデータ量が違います。CD1枚は700~800MBですが、SACDは4.7GBです。デジタルカメラの画素数のようにデータ量が増えれば、解像度が高くなり、細かいところまで情報を入れられる、といえばわかりやすいかな?

M: 普段の聴きなれたCDの音よりも、まろやかで滑らかに聴こえるので、情報量が多いというのは、よくわかる気がします。 

K: SACDだと、合唱の歌詞の子音や、木管楽器の音程の感じまで細かく聴き取れますね。ある意味疲れてしまうくらいかも。

吉野: 今現在、SACDはクラシックばかり出ているんですよね。ほかのジャンルはリリースが減っている。細かいところまで聴き取りたいジャンルだからかな。

田中: この音源は同じエンジニアが、CDとSACDのためのそれぞれのメディアにあわせてマスタリングを施しているから、どちらも素晴らしいんです。CDのほうは、限られた情報量の中で工夫された音になっている。SACDでは、より広い空間の中で細かな音を再現していて、SACDのスペックを活かしたメリットが出ている。いい音で聴いてほしいという、作り手の気持ちがよく表れた典型的な例だと思います。

M: この違いは家庭の一般的な再生環境でもわかりますか?

田中: わかります! ただ、きちんとした作り方がされていなければ、SACDだからいい音というわけではありません。CDより音が悪いSACDもたくさんありますから。スペックだけ良くなっても、中に入れるものがいい状態にされていなければ意味がありませんから。

K: 再生するソフトの選び方でも、工夫ができるということですね!

アナログでしか出ない音の「におい」を感じる

吉野: 自分はレコードと、同じ音源をCD化したものを聴いてもらおうと思います。これはいわゆる、オリジナル盤っていうもので、当時の新鮮なマスター音源に最も近いもの。先ほどのSACDのように高音質を目的として作られたものではありませんが、その音源、作品という点では、一番真実に近いんじゃないですかね。

K: 真実に近い!

田中: レコードってプレスを重ねるごとに劣化していくんですよ。溝を打ち付けていくので、ハンコの要領で減っていくんです。

吉野: だから、マニアはプレス番号が若いものを血眼になって探すわけです。

CDとレコードで吉野さんのチョイスを聴き比べ:The Butterfield Blues Band/East-West(1966年)から"Walkin' Blues"

使用レコードプレーヤーはテクニクス SL-1200G、カートリッジはシュア M75B。

K: さっきのCDとSACDとの解像度の違いとはまた違う感じがしますね。なんだろう……。

吉野: 濃さが違うんですよね。デジタルって1と0でできている世界だけど、レコードはアナログだから、リニア、直線。

田中: デジタルが常に解像度を上げて、できるだけ細かくするのは、アナログのリニアな状態を目指しているとも言えると思います。

吉野: もう1曲いいですか?

Grateful Dead/Workingman's Dead(1970年)から "Uncle John's Band"

一同うなる

田中: こうやって比べちゃうと、CDは生ぬるく聴こえちゃうかもな。もちろん全部がこうではないし、SACDの話と同じで、レコードなら全部良いってことにはならないんだけど。

吉野: 希少価値など、さまざまな要素がありますが、高価な盤はヤバイ音が入っていることが多いです。少しでも真実に近づければと願うんですよ(笑)

田中: LPで育った世代としては、音の悪いものも山ほど聴いてきましたから。CDは安定したコンビニエントなもの、ハンドリングのいいものなんですよ。でも、どうしてもこれが好き! ってCDを聴いて思ったら、そのオリジナルのLPを手に入れたくなる気持ちもわかりますよ。

吉野: やはり当時のものを聴くと、そこが当時の空間になる気がする。においが出てきますよね。

M: レコードだと歌っている、発音している口がすぐ近くに浮かぶというか、近くで歌っている感じですね。シャープな感じもしました。びっくりです。

K: シンプルに音楽そのものの良さが伝わってくる感じですね。声帯の感じとか、へたしたら着ている服の感じまで伝わってきそう。

吉野: アメリカのくさいにおいが、ジャケットからしても伝わってくるんですよね。

一同(笑)

カセットテープから考える「いい音」のこれから

吉野: アナログっていえば、今はあえて新譜が出るくらいカセットテープブームでもあるんです。まずは聴き比べてほしいんですけど、90年代のニール・ヤングのアルバム。時代からいってCDが一番売れたと思うんですけど、多分その次にカセットが売れたんです。アナログも少数はプレスされてたんだけど、希少性から高価なので持ってないです。

♪CDとカセットテープで聴き比べ:ニール・ヤング「Ragged Glory」(1990年)から"Country Home"

同じ内容のものがCD、レコード、カセットテープで同時に発売された、ニール・ヤング1990年のアルバム『傷だらけの栄光(Ragged Glory)』

K: なんかテープのほうが泣けますね。なんでだろう。ケースもめちゃくちゃかわいい。

田中: 厚い音だよね。しっかりとした存在感のある音。

吉野: 気持ちいい音ですよね。正しいかどうかなんて、どうでも良くなるっていうか(笑)。

田中: CDは光をあててデジタル信号を読み込むわけだけど、カセットはテープをヘッドにあてて、ダイレクトに読んで再生する。だから実体感があって、厚みがあるのかな。レコードだって針を溝でこすってるわけだし。

カセットデッキは1983年発売ラックスマンの高級機、K-04。

K: さっきはスピーカーが楽器のようだって話になりましたけど、こちらも弦楽器みたいに、ある意味楽器に近い感じがしますね!

吉野: 今、新譜で出ているカセットはテレコで、現地フィールド録音をして、そのままコピーして売られていたりします。ファッション的な感覚で手にした若いお兄ちゃんたちも聴くと、うぉーー! アナログすげぇー! ってなるポテンシャルを秘めてます。

田中: リアルなアナログの力ですね。さっきも言った通り、デジタルはアナログに近づこうとしている面がある。だけど、デジタルも、写真が何千万画素ってとこまでいけば、データが重くて扱いにくいけど、こんなところまで写るの? って実物みたいになってくるようになる可能性はあると思いますね。これからどうなるかわからないし。たとえばSACDのようなとても大きいファイルが、軽いテクスト・ファイルのように簡単に扱えるようになったりする技術が現れるかもしれない。

K: デジタルも、まだこれからってことですね! そしたらストリーミングにも、もっと可能性が出てくるかもしれませんね。

座談会を終えて

今回用意したような巨大なスピーカーを家に置ける人は少ないだろうし、そこまでお金をかけられるわけじゃない。しかし、いい音を体験してみて自分の好みを知り、工夫次第で、自分が愛おしいと思える「いい音」に出会うことができるようだ。

最後に「これでも聴いてみて!」と吉野編集長が持ってきたのは、何の変哲もないチープなラジカセ。試聴に使った立派なコンポからは想像できないくらい小さいし、値段も安い(約3000円)。

「当時ほとんどの人はカセットテープを、これくらいのラジカセで聴いていた。そこに思いを馳せるのもまた一興です」と吉野編集長。

なつかしのカセットデッキ。約3000円。

このラジカセの音質は確かに巨大なコンポには及ばないのかもしれない。しかし、それは「悪い音」なのか? それは人の価値観次第。

少なくとも編集部員には、グッとくる「いい音」に聴こえた。皆さんも、自分の好みにあった、心地よい「いい音」を探してみてはいかがだろうか。

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