フィンランドでは公平性と議論と健康が大事!? 個々のアイデアあふれる演奏をリズムでまとめるティンパニスト
世界各国のオーケストラで活躍する日本人奏者へのインタビュー連載。お国柄を感じるエピソードやカルチャーショックを受けた体験などを教えてもらいます。オーケストラの内側から、さまざまな国の文化をのぞいてみましょう!
第3回は、フィンランド・クオピオ交響楽団首席ティンパニ奏者の窪田翔さん。フィンランドでは仕事より健康が優先!? 長い夏休みの過ごし方や演奏も会議も意見交換が重要視されていることなど、フィンランドならではのエピソードが目白押しです。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
国際色豊かでサヴォ地方の地元民も個性が強い!
——所属されているオーケストラについて教えてください。
窪田 クオピオ市の音楽センターを本拠地とする市営の交響楽団です。創立はフィンランド建国以前の120年近く前に遡り、正団員の総数は常時45名程度。2管編成の大きくないオーケストラですが、これはシベリウスが理想としていたサイズだそうです。
フィンランドオーケストラ協会には33団体が登録されていますが、その中には団員数たったの4名で活動している団体もあります。企画や予算に合わせエキストラをフル活用し、他のオーケストラと合同でさまざまなプログラムを組むのがフィンランド流。交響楽団を呼称するのは4団体のみで、クオピオではマーラーなどの交響曲にも対応します。
フィンランド・クオピオ交響楽団首席ティンパニ奏者。桐朋学園大学、ルガーノのスイス・イタリア音楽院、フライブルク音楽大学で学ぶ。2011年度文化庁新進芸術家海外留学制度奨学生。スイス・イタリア管弦楽団の研修員として研鑽を積んで以来、レギュラーゲストとして演奏を続ける。NHK交響楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、ラハティ交響楽団、プロジェクト・マルタ・アルゲリッチなど数多くのオーケストラや音楽祭に客演。サヴォニア応用科学大学の講師として、フィンランドの若手打楽器奏者たちの育成にも力を入れている。
佐野恭一、ベルンハルト・ヴルフ、マイク・クイン、宮﨑泰二郎、ヨハネス・フィッシャーに師事。
窪田 このオーケストラは国際色豊か。団員の国籍数は12か国に及び、ほぼ半数が外国人です。
フィンランドといえばムーミンやマリメッコが思い浮かべられ、優しく物静かな人たちが住んでいるイメージがあるかもしれません。しかし、ここサヴォ地方の人々は、独特の方言と理屈っぽい性格が特徴で、豪放磊落な人が多く、会議も常にヒートアップします。
演奏でもアイデアや個人プレーの応酬となり、相撲のように押し合いへし合い、本番での着地点がまったく読めません。ティンパニストの私は、そのリズムの手綱を握るのも一苦労です。ウィーン・フィルの団員が以前「私たちは同じ学校で学び、同じスタイルで演奏しているから素晴らしいんだ」と言っていましたが、クオピオはまさにその真逆をいくわけです。
クオピオ交響楽団の紹介動画
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