インタビュー
2025.03.18
特集「ホールへ出かけよう! 2025」

サントリーホール~世界最高峰から子ども向けまで良質なコンサートに触れる晴れ舞台

日本を代表するホールとして華やかな存在感を放つサントリーホール。今年は世界最大級のこどものためのクラシック音楽フェスがゴールデンウィークに開催され、オルガンの奥深~い世界へ誘う新シリーズや、カーネギーホールのユースオーケストラが初来日するなど、最上質でかつ親しみやすい企画が目白押し。そして気になる<ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン>の指揮者は?主催公演の企画意図や2025年の注目公演について、企画制作部長の中鉢智博さんにお話を伺いました。

取材・文
山崎浩太郎
取材・文
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

写真:ヒダキトモコ

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

1986年開場、来年40周年を迎えるサントリーホールは、名実ともに日本を代表するコンサートホールだ。今も連日連夜、さまざまなコンサートが華やかに開催されている。

中鉢「サントリーホールの特徴として、貸館公演の多さがあげられます。昨年度は634公演のうち、主催事業は約90でした。主催事業と貸館公演をあわせたトータルなイメージで、新たなチャレンジも歓迎しつつ、きちんと基準を設けて、上質なものを提供する姿勢を続けています。

主催事業については、ウィーン・フィルのような最高峰のオーケストラや、現代音楽や室内楽のフェスティバル、あるいは共催による子ども向けのコンサート、地域を活性化するようなものなど、他の事業者が取りあげにくい、多彩な内容を実現することを心がけています」

お話を伺った、サントリーホールの企画制作部長・中鉢智博さん
続きを読む

「こども音楽フェスティバル」が5月に開催、オルガンの魅力にハマる新シリーズも

今年度の大きな企画に、5月のゴールデンウィークに開かれるこども音楽フェスティバル」(5/3~5/6)がある。

中鉢「子ども向けとしては世界最大級の音楽フェスといっていいもので、ソニー音楽財団との共催で、4日間に14公演が行なわれます。公式アンバサダーと配信総合パーソナリティを務める清塚信也さんなど一流の音楽家の出演で、0歳から対象年齢にあわせて、さまざまな催しがあります。バラエティに富んだ内容で、1時間ほどの長さなので、クラシック音楽への第一歩にふさわしいものです。オンライン配信で、全国の方にもお楽しみいただけます」

こども音楽フェスティバルは全14公演で、0才から未就学児、⼩・中・⾼校⽣や10代の⻘少年まで、それぞれの年齢に合わせたバラエティ豊かなプログラムからなる。公式アンバサダーの清塚信也をはじめ、角野隼斗、鈴木優人など、クラシック音楽界の最前線で活躍するアーティストの演奏がリーズナブルな入場料で楽しめるのも魅力 ©池上直哉/Naoya Ikegami SUNTORY HALL

全4回の「伊集院光と行く!奥深~いオルガンの世界」(5/29, 7/29, 11/27, 2026年2/5)は、オルガンの魅力を知ってもらうために新たに始まるシリーズだ。

中鉢「伊集院さんならではの掘り下げで、パイプオルガンの仕組みなどをオルガニストにうかがっていただくトークを前半に、後半は本格的な演奏を行なう、70分ぐらいの公演です」

教養番組にも多数出演している伊集院光が誘なう「奥深~いオルガンの世界」。毎回日本のトップ奏者を迎え、「楽器の仕組み」「オルガニスト」「作曲家」「音色」とオルガンの教養を深めていく
第4回「音色」(2026年2/5)に登場するオルガニスト石丸由佳。“レジストレーション”について知り、ベートーヴェン《運命》第1楽章ほかが演奏される

ウィーン・フィルの指揮者はティーレマン、世界レベルのユースオーケストラが初来日

世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルとは1999年から「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン」(11/11~16)を開催して、緊密な関係を築いている。今年11月の公演を指揮するのは、ドイツやオーストリアで圧倒的な名声を誇る、クリスティアン・ティーレマンだ。

中鉢「ウィーン・フィルは定期演奏会などでも、ティーレマンを指揮者たちの最上位に置いていると感じます。2019年から22年にかけて完成させたブルックナーの交響曲全集の録音と映像収録などを通じて、信頼関係はますます厚いものになっているので、今回も非常に期待できると思います」

ウィーン・フィルが厚い信頼を置くティーレマン ©Wiener Philharmoniker/Dieter Nagl

初来日の団体としては、ジャナンドレア・ノセダ指揮の「カーネギーホール ナショナル・ユースオーケストラUSA」(7/26)がある。

中鉢「世界レベルのユースオーケストラを聴く機会はなかなかないと思います。アメリカのカーネギーホールが力を入れているもので、16歳から19歳の若者たちを全米からオーディションで集める際には、演奏能力だけでなく人間性にも重点を置き、音楽を通じた人間教育を意識していることも特徴です」

初来日するカーネギーホール ナショナル・ユースオーケストラUSA。一流指揮者に導かれた音楽性の高さを楽しめるだけでなく、音楽を社会的な視点でとらえたプロジェクトに触れることで、これまでにない気づきを得られそうだ ©Chris Lee

クラシック・コンサートへの入り口として魅力的な企画の数々

このほか、日本フィルハーモニー交響楽団との共催で、俳優の高橋克典をナビゲーターに、平日の午後に年3回開催される「にじくら~トークと笑顔と、音楽と」(4/15, 9/17, 2026年1/21)、エイベックス・クラシックスとの共催で、辻井伸行と三浦文彰という若いスター奏者をアーティスティック・リーダーとして10月に開催される「ARKクラシックス」(10/3~7)、クリスマスにはバッハ・コレギウム・ジャパンの「聖夜のメサイア」(12/24)、大友直人指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団による「サントリーホールのクリスマス」(12/25)などがある。

中鉢「クラシックのコンサートへの入り口として、これからサントリーホールのファンになっていただく方を意識したコンサートです。1回だけの体験でも、その思い出が20, 30年後の来場につながるかもしれない。それまで、我々も姿勢を変えずに良質な音楽を提供することを続けていれば、いつか戻ってきてくれると思うのです。

これらも含め、サントリーホールでは最上質の公演や季節の催しなど、バラエティに富んだ『晴れの舞台』を提供して、このホールならではの特別な時間を過ごしていただきたいと思います。華やかな雰囲気のなかで、音楽を中心にトータルに楽しんでいただけるようなコンサート文化をこれからも発信していきます。どうぞ、お気軽にいらしてください」

サントリーホール内観 ©SUNTORY HALL
サントリーホール 

[運営](公財)サントリー芸術財団

[座席数]大ホール:2006席、ブルーローズ(小ホール):384席(A型)・432席(B型)・380席(C型)

[オープン]1986年

[住所]東京都港区赤坂1-13-1

[問い合わせ]Tel.0570-55-0017(チケットセンター)

取材・文
山崎浩太郎
取材・文
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ