
シモン・ネーリング~ショパンコンクール・ファイナリストが照らす 天才作曲家の多面体

ポーランド出身のピアニスト、シモン・ネーリングは2015年の第17回ショパン国際ピアノコンクールでファイナリストに選出され、作品に対する深い理解と美しく研ぎ澄まされた音色、表現力によって世界中を魅了。以降、国際的に活躍を続けています。
そのネーリングが、来年1月にオール・ショパン・プログラムで浜離宮朝日ホールに登場! 考え抜かれたプログラミングや、独自のショパン観を伺いました。
ショパンのあらゆる面を一晩で示すプログラム
ネーリング ショパンは非常にたくさんの異なる側面をもち、圧倒的な芸術性の高さをもつ作曲家です。そんな彼のあらゆる面を一晩のリサイタルでお届けすることを目指して、プログラムを作り上げていきました。
――プログラムを拝見しますと、かなり若い時期のショパンを意識して取り入れられたように思われます。
ネーリング 今回皆様にお届けしたい側面のなかには、ショパンの芸術面だけでなく、人生についても含めています。若さと自然さ、そして謙虚さのある作品を並べ、改めて彼の天才ぶりを示すことができました。
また、前半は舞曲、あるいは小品を並べ、ショパン作品のキャラクター性の強さを表したつもりです。そして後半には内容の深い「バラード第2番」や「《葬送》ソナタ」(「ピアノ・ソナタ第2番」)など、創作技法や内面的にも深みを増した作品を入れることで、コントラストを作りました。

ポーランドの若い世代のもっとも才能のある、将来を約束されたピアニストのひとり。2017年アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールで優勝。2015年、クリスチャン・ツィメルマン奨学金を授与される。第17回ショパン国際ピアノ・コンクールに出場。ファイナリストとなり、聴衆賞のほか、数々の賞を受賞。これまでに、シンフォニア・ヴァルソヴィア、ワルシャワ・フィル、イスラエル響、バンベルク響、18世紀オーケストラなどと共演。シルヴァン・カンブルラン、パブロ・エラス=カサド、オメル・メイール・ヴェルバーなどの指揮者と共演。また、故クリストフ・ペンデレツキとも共演し、ペンデレツキのピアノ協奏曲をはじめとする数々の作品を録音。2019年、オルフェウム財団に招待されデヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団と共演。2020年にはベルリン・フィルハーモニーホールで演奏した。2022年、23年と続けて来日公演を果たし、2025年1月にはカンブルラン指揮ハンブルク響と共演し好評を博す。2024/25シーズンには、ミニマルな新作録音に加え、ショパンのソロ作品集をリリース。また、2025年3月にはシマノフスキの交響曲第4番をマリン・オールソップ指揮ポーランド国立放送響と共演
©Bartek Barczyk
「チェロ・ソナタ」でショパンに開眼
――プログラム中もっとも大きな作品は「《葬送》ソナタ」になると思いますが、やはり今回の中心となるのでしょうか。
ネーリング そうですね。第1楽章をはじめとする作品構成のすばらしさとともに、彼が生涯愛した故郷への想いなども反映された、とてもエモーショナルな曲です。書簡を読むと、ショパン自身もこの曲を弾いているときに感極まって演奏が止まってしまった、という記述があるほど、この曲に強い感情を抱いていたようです。
――お話をうかがっていると、改めてネーリングさんのショパンに対する深い愛情を感じます。
ネーリング ショパンは私にとってほんとうに大切な作曲家になっていますが、実はこれは最近のことなのです。5、6年ほど前にショパンの「チェロ・ソナタ」(Op. 65)のレコーディングを依頼されて向き合ったときに、恋に落ちました。この作品自体のこと、そしてショパンのことをもっと知りたいと強く思ったのです。
ショパンコンクールへの複雑な想い
――今年はショパン国際ピアノコンクールも開催されて、“ショパン熱”が高まっています。コンクール参加時のことを少しお話しいただけますか。
ネーリング コンクールはモチベーションを保ち、自分自身を見つめて掘り下げる機会として素晴らしいものだと思います。ただ、決して幸せな時ばかりでなく、私自身演奏に満足できなかったことがたくさんあります。音楽へのアプローチとして健康的なものとはいいがたいですから。
近年、コンクールというものに人々が熱狂的になりすぎている印象があります。個人的にはコンクールに偏重することなく、健全に音楽を楽しめる流れができてほしいとは思っていますね。
――今年のショパンコンクールはご覧になりましたか?
ネーリング はい、全部聴きました。あくまでも個人的な感想ですが、ワン・ズートンやヴィンセント・オン、ダヴィッド・フリクリなどの演奏がとても印象に残っています。
また今年はファイナルで《幻想ポロネーズ》を弾くことが課せられていましたが、とても大変なことですよね。ただでさえショパンの中でもとくに難しい曲のひとつなのに、あれをオーケストラ・メンバーの前で弾く、というのはとりわけ若手には酷だと思います。ただ、ショパンへの理解度を示すうえではとても重要なポイントになったと思いますね。
最後に、「ショパンを深く愛し、音楽に深く向き合ってくれる日本のお客様の前でふたたび演奏できることがうれしい」と話してくれた。
■東京公演
日時:2026年1月23日(金) 19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール
出演:シモン・ネーリング
曲目
~オール・ショパン・プログラム~
マズルカ Op.17
ボレロ Op.19
幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66
即興曲第3番 変ト長調 Op.51
スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
***
夜想曲第4番 ヘ長調 Op.15-1
バラード第2番 ヘ長調 Op.38
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」
※都合により内容は変更となる場合がございます。
チケット:一般 5,000円、U30(30歳以下) 2,000円
問合せ:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990(日・祝除く10:00~18:00)
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