インタビュー
2026.01.21
オーケストラが語るショパンコンクール vol. 2

ワルシャワ・フィルのチェロ奏者がショパンコンクールを初体験!「舞台上でコンテスタントをサポートできる特別で光栄な機会」

ショパン国際ピアノコンクールのファイナルステージでは、コンテスタントがピアノ協奏曲を披露します。それまでのソロ演奏から一転、舞台にはワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団が登場。舞台をともにするオーケストラのメンバーに、ステージ上から見たコンクールの姿を伺いました。第2回はチェロ奏者のマリア・レシュチンスカさん。
*2025年10月23日の第2回入賞者コンサート前にインタビューさせていただきました。

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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舞台上でコンテスタントを支えられるのはとても光栄

——オーケストラに入って間もないとお聞きしました。

レシュチンスカ はい、1月に入団しました。

——では、初めてコンクールで演奏してみて、どうでしたか?

レシュチンスカ なにより、コンテスタントを支える立場として演奏できることが光栄だと感じました。ほかの人たちとは違うかたちでサポートできるんです。

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そして、彼らと一緒に音楽を作り上げられるのは本当に素晴らしいことでした。もちろん集中力を保つのは大変でもありましたが、最善を尽くして、一緒に音楽を作りたいと心がけました。

リハーサルは限られた時間なので、協奏曲を通したあとに、少しだけ部分的に合わせ直すのが精一杯で。なので、相手の演奏をよく聴いて呼吸を合わせるのが大事だと感じました。

私はそのときの流れや雰囲気で音楽を作っていくことが大好きなんです。耳で聴きながら一緒に作っていく……それこそが音楽の醍醐味で、とても楽しいです。

8歳からチェロをはじめ、デュッセルドルフ音楽院で学んだマリアさん

——コンテスタントと一緒に舞台に立つというのは、特別な経験ですね。

レシュチンスカ はい、とても光栄ですね。彼らは素晴らしい演奏家たちなので心配はしていませんが、「今この瞬間、最高の演奏をしてほしい」と心から願うような緊張感があります。

このホールで演奏できること、特にコンクール期間中にここで演奏できるのは本当に幸せです。ショパンは私にとってとても特別な存在で、両親の影響もあり、家でもショパンが常に身近にありました。

私はショパンの2つの協奏曲が大好きで、一緒に演奏できて本当にうれしかったです。

——ご両親も音楽家なんですか?

レシュチンスカ はい。実は母が審査員席に座っています。

——そうなんですか!? もしかしてエヴァ・ポヴウォツカさんの……?

レシュチンスカ そうです! 私にとってこのコンクールはとても特別です。物心ついたときから家の中にこのコンクールがあったようなものなんです。

前回の大会では、コンテスタントの送迎など、サポートをしていました。今回はチェリストとして参加することになり、同じ場所でまったく違う立場で関われるのがとても感慨深いです。

ファイナリスト全員が優勝! と思っている

——協奏曲を弾きながら、「この人が優勝するかも」と思う瞬間はありましたか?

レシュチンスカ 実は、エリック・ルーの《幻想ポロネーズ》を聴いているとき、涙が出そうになりました。あまりに感動して、胸がいっぱいになったんです。彼との協奏曲の演奏では、心の底からすべてを捧げたいと思いました。もちろん全員にそういう気持ちで臨みましたが。でもあの瞬間は本当に特別で、涙をこらえるのが大変でした。

レシュチンスカ どのピアニストも本当に素晴らしい音楽家で、11人全員が優勝だと思っています。もちろん審査はしなければならないけれど、優劣というより、それぞれが違う素晴らしさを持っていました。

協奏曲の第1番と第2番を何度も弾いたけれど、毎回まったく違って、それがとても面白かったです。

——ステージ上で《幻想ポロネーズ》を聴くのも珍しい経験ですね。

レシュチンスカ そうですね、ステージ上ではソファに座るようにリラックスはできず、ずっと姿勢を保っているのは大変といえば大変でしたが、でも一方で、他のコンテスタントの演奏を聴く貴重な機会にもなりました。舞台裏で休んでいたら聴けなかったですから。彼らがどう違う解釈をするか、比較しながら聴くことができて、とても興味深かったです。

——協奏曲とは対照的に、《幻想ポロネーズ》はショパンの後期作品ですね。

レシュチンスカ 《幻想ポロネーズ》は、以前(2010年の大会のころまで)は、正直あまり理解できない部分もありました。でも今回は、違う角度から自然に心に入ってきました。いろいろな演奏者の解釈を聴けたことも良かったですし、自分の中でも変化を感じました。

オープニングコンサートで演奏するレシュチンスカさん
©︎Wojciech Grzedzinski

——1日に何人ものソリストと同じ曲を演奏するというのは、どうやって気持ちを切り替えるのですか?

レシュチンスカ 毎回「これが最初の1回目なんだ」と思うようにしています。もちろん、だんだん疲れを感じそうになるけれど、「これはこの人にとって唯一の瞬間だ」と考えるようにして。誰も同じようには弾かないし、全員が特別なんです。

——ピアニストがステージで緊張しているのがわかることはありますか?

レシュチンスカ はい、あります。リハーサルと本番で演奏や表情がまったく違うこともあります。本番では集中しているのも伝わってきます。それも含めて本当に一生懸命で、尊敬しています。

私たち奏者や指揮者だけが見られる光景かもしれませんね。

家族3人でアンサンブルをすることも

——ところで、ショパンが好きなのに、なぜチェロを選んだのですか? たしかにチェロ・ソナタはありますが……。

レシュチンスカ 実は高校を卒業するまで、ずっとピアノを弾いていました。でも、何か違うものをやってみたいと思ったんです。

ショパンの音楽は感情の音楽だと思うし、チェロはその感情を表現するのにとても向いていると感じます。チェロの音は人の声に似ているとも言われますしね。ショパンの「チェロ・ソナタ」は本当に大好きです。

「ワルシャワ・トリオ」のチェロ奏者としても活動中!

——お母さまと一緒に演奏することはありますか?

レシュチンスカ たまに一緒にコンサートをします。姉もいて、家族でトリオを組んでいたんです。私はチェロとピアノ、姉は歌(ソプラノ)とピアノ。ラフマニノフの6手連弾をアンコールで演奏したこともあります。

——家族で演奏するとケンカになったりしませんか?

レシュチンスカ します(笑)。だからあまり頻繁にはやらないんです。でも大人になってからは少し楽になりました。母には今でも「もっと練習しなさい」って言われます(笑)。

——では、チェロに転向してよかったのですね(笑)。

レシュチンスカ はい。たまにピアノも弾きますが、楽しみのためです。家族全員がピアノ弾きだったら、さすがに疲れますよね(笑)。

——ご家庭ではコンクールの話もしますか?

レシュチンスカ 少しだけですね。母は審査で3週間ずっと不在でしたから。でも彼女に、「エリックの演奏のあと泣きそうになった」と話しました。

——いつかレシュチンスカさんのチェロ・ソナタや母娘アンサンブルを聴いてみたいです。

レシュチンスカ ありがとうございます!

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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