インタビュー
2026.01.22
オーケストラが語るショパンコンクール vol. 3

ワルシャワ・フィルのファゴット奏者がショパンコンクールを振り返る「繊細にコンテスタントの呼吸を感じ取る」

ショパン国際ピアノコンクールのファイナルステージでは、コンテスタントがピアノ協奏曲を披露します。それまでのソロ演奏から一転、舞台にはワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団が登場。舞台をともにするオーケストラのメンバーに、ステージ上から見たコンクールの姿を伺いました。第3回はファゴット奏者のレシェク・ヴァフニクさん。
*2025年10月23日の第2回入賞者コンサート前にインタビューさせていただきました。

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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コンクールでの演奏歴は30年!

——ショパンコンクールでの演奏歴はどれくらいですか?

ヴァフニク もう30年以上になります。初めてショパンコンクールで演奏したのは1995年でした。

それ以来、私は彼らとともに“歴史をつくっている”と感じています。彼らがスターとして成長していく姿を見るのは本当に感動的です。後年にコンサートで再会することもあって、それがまた嬉しいですね。

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コンクールで演奏してよかったことは「みんなチケットの入手に手こずっているけど、僕はオーケストラのメンバーとしてコンクールの一部となれるからチケットが必要ない!」と冗談で(?)おっしゃっていました(笑)

——コンクールでの演奏で、心がけていることは?

ヴァフニク 私たちの準備時間はとても短いんです。各ファイナリストとのリハーサルは1時間しかありません。ですから、純粋に音楽を聴いて理解する時間としては決して十分ではないと思います。

私たちは彼らにとって“できる限り役に立つ存在”でなければならず、演奏の妨げにならないようにすることが大切なんです。細部まで作り込むには時間が限られていますが、それでも私たちはできる限り明確に、そして彼らの演奏を邪魔しないように、良い演奏をしたいと思っています。

コンテスタントと音で会話する

——今年印象的だった瞬間はありますか?

ヴァフニク 特別な一瞬、というのを挙げるのは難しいですが、今年のファイナリストたちはとても素晴らしかったです。演奏していて本当に心地よかった。

ファゴットはピアノと“会話する”ような役割を持つ楽器なので、彼らと音で対話することができて、私にとってとても満足のいく時間でした。

——これまでのコンクールを通して、特に印象に残る出来事はありますか?

ヴァフニク これも特定の面白いことや悲しいことというのは……思い浮かばないですね。もちろん緊張したり、ストレスの多い瞬間もありますが、それもプロとして責任の一部だと思っています。

私たちは常に忙しくて、ゆっくりその瞬間を“宝物のように味わう”時間があまりないんです。次の演奏がすぐ控えていますから。

でも、時々、ステージ上で「おお、これは素晴らしい瞬間だ」と感じることがある。そういうときは本当に特別です。

——一緒に演奏していて、コンテスタントの緊張を感じることはありますか?

ヴァフニク もちろんあります。私は今回でショパン・コンクールは7回目なんです。だからこそ、今のピアニストたちが本当に素晴らしい音楽家だとわかります。第1ステージからすでに完成された音楽家たちで、私にとっては全員が“優勝者”なんです。

でもね、コンクールというのはいろいろな要素が絡み合っているし、審査員も人数が多ければそれだけ評価に差も出ます。私たちは“山の頂上”しか知らない——つまり、ファイナリストとだけ演奏するのです。しかも、協奏曲だけですからね。

——それまでのコンクールでの演奏を聴くこともありますか?

ヴァフニク 時間があるときには第1〜3ステージも聴きます。ラジオやテレビでね。どんな演奏をするピアニストなのか、時間が許す限り知ろうとしています。

1時間のリハーサルでコンテスタントの「音の質」を覚える

——本番ではリハーサルとは違う空気が流れることもあると思います。

ヴァフニク リハーサルと本番では、感じ方がまったく違うことがありますね。しかも、一人ひとりの演奏をすべて覚えておくのは、簡単なことではありません。とても繊細でなければならないし、相手の呼吸を感じ取ることが大切です。

——1日に4人のソリストと共演することもあると、切り替えも大変ですね。

ヴァフニク そうですね。まず、「音の質」を覚えておくことが大切です。同じピアノを使っていても、ピアニストによって音がまったく違う。その響きやスタイルを覚えておきます。1時間のリハーサルでそれを学び、演奏中に思い出しながら対応するんです。

ただ、リハーサルと本番ではまた違います。本番では、ピアニストがより力強く、輝かしく演奏することもある。聴衆の存在があるから、演奏も変わるんです。

リハーサルでは控えめに弾いて、体力を温存しておくこともありますしね。その違いも、毎回とても面白いです。

——ありがとうございました。今日も本番があるんですよね。

ヴァフニク はい、今日も、そして明日も入賞者コンサートで演奏します。

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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