いまアーティストの存在はどうあるべき?ピアニスト小菅優が問いかけるシェーンベルク
真の実力派として国内外で活躍するピアニスト小菅優は、ソロや協奏曲ばかりでなく室内楽や声楽でも積極的な演奏活動をおこなってきた。そんな彼女が、今年のサントリーホール「チェンバーミュージック・ガーデン」(CMG)で、自らがプロデュースするコンサートのメインとして、生誕150年のシェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》を取り上げる。時代の分水嶺に生まれた、この名作に寄せる思いをうかがった。
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
今後どのような音楽家になっていきたいか、ピエロという人物と重なる
――今年生誕150年を迎えたシェーンベルクの名作《月に憑かれたピエロ》(通称:ピエロ・リュネール)は、サントリーホールでは、2001年に内田光子さんが中心となって上演されて以来実に23年ぶりの上演になります。小菅さんのプロデュースで今回CMGで取り上げられるのは本当にありがたいです。
小菅 私にとっても今回が初めてになるのですが、ずっとやってみたいと思っていました。ピエロという登場人物には、当時の芸術家のあり方の難しさも反映されていて、それは現代に通じるとも感じています。
シェーンベルクは、この曲を作曲した頃(1912年)、まだ十二音技法にたどり着いていなくて、10年くらい作品があまり書けなかった時期です。無調に入っていく画期的な段階にさしかかっていました。
私たちにとっても、コロナ禍の後に、この世の中でアーティストの存在というのはどういう位置にあるべきなのか、すごく考えさせられる時代になりました。宣伝の仕方ひとつとっても変わってきているし……。
私も、年齢のこととかいろんなこともあるんですけれど、今後どのような音楽家になっていきたいのかを考えたときに、当時のシェーンベルクや、ピエロという人物と重なってくるものがあって、今これをぜひやりたいなと思ったのです。
シェーンベルクの女声と室内アンサンブルのための連作歌曲op.21。1912年作曲。A.ジローの詩をO.E.ハルトレーベンが独訳したものによる。全21曲。女声のシュプレッヒシュティンメ(語りと歌の中間に位置する唱法)により,青白い月あかりのなかで歌うピエロが語られる。
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