インタビュー
2026.03.04

亀井聖矢に50の質問!〈前編〉音楽家になると決めた瞬間は? ショパンとの向き合い方は変わった?

今や若手ピアニストの筆頭である亀井聖矢さん。圧倒的な存在感の裏にある意外な一面や舞台への想いについて、50の質問でその素顔に迫ります。
前編では、音楽を始めたきっかけから、プライベートの過ごし方まで、亀井さんの飾らない姿に触れていきます。

桒田萌
桒田萌 音楽ライター

1997年大阪生まれの編集者/ライター。 夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。在学中にクラシック音楽ジャンルで取材・執筆を開始。現在は企業オ...

撮影:明石祐昌

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積み重ねてきた先に辿り着いたのが、ピアニストだった

1. 音楽家になっていなかったら何になりたかったですか?

亀井 僕は謎解きが大好きなので、謎解きクリエイターになっていたと思います。 というか、今も隙間時間によく作っていて、SNSで時々出したりしています。

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2. ピアニストを選んだ理由は?

亀井 この質問は難しくて……。実は、僕が選んでピアニストになったという自覚はないんです。物心をついたときからピアノを弾いていて、コンクールを受けていく中で1位をいただくようになったり、コンサートに出演させていただいたりするようになって……。

そうして一つひとつに一生懸命向き合っているうちに、お仕事にさせていただいたという感覚。自分が積み重ねてきた道の先に、ピアニストという結果があったという感じですね。

2001年生まれ。4歳よりピアノを始める。愛知県立明和高等学校音楽科を経て、飛び入学特待生として桐朋学園大学に入学し、2023年3月に同大学を首席で卒業。

2019年、第88回日本音楽コンクールピアノ部門第1位と聴衆賞を受賞。同年、第43回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、及び聴衆賞受賞。2022年、マリア・カナルス国際ピアノコンクール第3位受賞。2022年、ロン=ティボー国際音楽コンクールにて第1位及び「聴衆賞」「評論家賞」を受賞。2025年には世界三大コンクールの一つである、エリザベート王妃国際コンクールにて第5位を受賞。

3. ピアノ以外にやってみたかった楽器は?

亀井 僕は作曲がとても好きなので、そういった意味ではいろんな楽器を経験したいという気持ちはずっとあるんです。

——たとえば、どんな楽器でしょうか?

亀井 ヴァイオリンやチェロ、フルート、クラリネットなど。実は一時期、クラリネットが家にあったこともあって。当時は吹いてはいなかったんですが、作曲に取り組んでいる今だからこそ、いろいろと興味が深まっていますね。

4. 本番前のルーティンは?

亀井 なるべく前日はよく寝て、ご飯はよく食べる。見えない部分をきちんと整える、ということを意識しています。

5. 普段の生活リズムは?

亀井 すごく夜型なんです。夜は全然眠れないし、朝は起きられないし(笑)。だから、とにかく寝られるときに寝て、おいしいものはたくさん食べます。

コンサートは夜公演であることも多いので、朝は早く起きなくてもいいんですよね。もちろん、練習のプランはきちんと考えて、前日はこの時間までに寝て、と心がけるようにしています。

6. 普段は何時間睡眠ですか?

亀井 めちゃくちゃ寝ますね。何もないときは10時間とか。たとえば本番の日に7時間しか眠れていない状態だとすると、きっと多くの方からすると十分な睡眠時間だと思うのですが、僕はやっぱり足りなくて。

野球の大谷翔平選手もたくさん睡眠時間を取られるそうですね。それを知ったとき、とても自信がつきました(笑)。

7. 本番前に食べるものは?

亀井 なるべくエネルギーのあるものを食べるようにしていますね。大好きなお肉もそうです。でも、公演で訪れる街によって食べられるものもまったく異なるので、決めすぎないようにもしています。

——集中したいときは甘いものを補給するといいと言われていますが、スイーツはお好きですか?

亀井 好きですね。本番前に関わらず、練習で疲れたときなどもチョコを食べたりします。

8. 本番前は緊張するタイプ?

亀井 緊張するときはしますし、しないときはしないです(笑)。

——では、緊張するのはどんな本番のときでしょうか?

亀井 コンクールのときはやっぱり緊張することが多いです。

もちろん、その作品をどれだけ弾いてきたのか、もしくは自分で大丈夫と思える自信があるのかによっても異なります。

——例えば、ソロとコンチェルトでは緊張の度合いは変わりますか?

亀井  ソロや新しく演奏する作品のほうが緊張はしますね。オーケストラと共演するときは、オーケストラの素敵な音色に浸りながら弾けるので楽しいです。

9. 舞台に上がる前の気持ちは?

亀井 これから演奏する作品のことしか考えていないです。今まで練習してきたものをどんな意識で弾けば、自分にとって最もいいものが出せるだろうか、と頭の中で見直している時間です。

——このとき、緊張はしていますか?

亀井 適度な緊張を心がけています。ただ、心がオープンである状態であることも大切だと思っています。適度な緊張感と集中の中で、自分が音楽を心で感じられる状況を作れるように意識しています。

10. 1日の練習時間は?

亀井 実はこの質問、難しくて。というのも、あまり決めていないんです。まったく弾かない日もあれば、集中していたら8時間や10時間と弾いている日もあって。そのときやるべきことや感じていることがどれくらいあるか、にもよりますね。

——ちなみに練習のルーティンはありますか?

亀井 あまりないですね。ルーティンをつくることが得意ではなくて……。

——そうなんですね! 練習を始めるときには必ずこれを弾く、などもないんでしょうか。

亀井 そうなんです。そのときやるべきことをやる。必要だと感じていることに取り組む、という感じです。

11. 自分の才能に気づいた瞬間は?

亀井 これはなかなか難しいですね(笑)。自分に才能があると思ったことは、一度もないんです。ピアノを弾いていたら、喜んでくださる方がたくさんいたから、今も続けている、という感じなんですよね。

12. 音楽家になると決めた瞬間は?

亀井 高校受験のとき、普通科か音楽科か、どちらに進学をするか悩んだときに音楽科を決めました。最初に決めたのはその瞬間かもしれません。そこから桐朋学園大学の飛び級入学の話をいただいたり、コンクールで結果をいただいたりするたびに、どんどん積み重ねて音楽家への道が固まっていったイメージです。

13. 音楽家を目指す後輩たちにアドバイスはありますか?

亀井 僕の場合、「自分はこうやって表現したい」「この音楽をこうやって届けたい」「この作品が好きだ」という気持ちでここまでやってきました。それがまずは一番大事じゃないかな、と思います。

ショパンの作品で大きな試練を迎えた

14. これまでで最大の試練は?

亀井 やはり、2025年に予備予選へ参加したショパン国際ピアノコンクールでしょうか。自分なりにいろんなアプローチを模索して表現を見つけて……と、数年間もがき苦しみましたね。

——予備予選から時間を経て、ショパンとの距離感は大きく変わりましたか?

亀井 そうですね。2026年のリサイタルツアーでは、ショパンの作品は含まれていません。ただ、だからといって距離を置いているわけではなく、聴いていると「やっぱりいい曲だな」と思うんですよね。

コンクールの渦中にいると、どうしても頭で考えるようになり、純粋に作品を聴く楽しさは薄れてしまうのですが、今は触れていて新鮮味を感じるようになりました。もしかすると、それがまた新たな表現につながるのかもしれません。

15. これまでで1番緊張した舞台は?

亀井 やはり、ショパン国際ピアノコンクールの予備予選でしょうか。

その前だと、高校1年生のときに受けた日本学生音楽コンクールの本選かもしれません。無事に第1位を受賞することができましたが、この裏では「もうピアノ弾きたくない」と思うくらい緊張していたのを覚えています。案外、舞台上に出て演奏してしまうと、その緊張はどうってことなくなるんですけど……(笑)。

ショパン国際ピアノコンクールの予備予選のときの緊張は、当時とは種類が異なっていて、緊張というよりも重圧を強く感じていました。

16. 亀井さんは緊張すると、どんな状態になるのでしょうか?

亀井 心臓がドキドキしたり、体が重くなったり、腕に力が入らなくなったり、という状態になりますね。でも、弾き始めて曲に入り込めさえすればいいのです。

楽観的でまっすぐな人間

17. 超能力を持てるとしたら、どんな力が欲しいですか?

亀井 瞬間移動の力が欲しいですね(笑)。

——確かに、演奏活動や留学には移動がつきものですよね。

亀井 そうなんです。特に海外は時間がかかるので……。——ちなみに、長時間移動の際はどんなふうに過ごされるんですか?

亀井 睡眠にあてることもあれば、作曲をしたり、映画を観たりすることもあります。

18. 自分の意外な一面は?

亀井 これはちょっと難しいですね(笑)。他の方から見ると意外なことでも、自分にとっては意外ではないはずなので。そもそも、意外な一面って自分にあるのかな。

——確かにそうですね。こうしてお話をしていると、亀井さんは裏表のない印象があります。ちょっと言いづらい……なんてことが、きっと「意外な一面」になるのでしょうけど……。

亀井 そうですよね。たくさんの女性とお付き合いをしているとか、そういう一面があったら意外なんでしょうね。でもそんなことはありませんし、あってもここでは言いません(笑)。

19. 続けているエクササイズはありますか?

亀井 最近ドイツでトレーニング用のマットを買って、腹筋や腕立てなど軽い筋トレをするようにしています。

ただ、長く続けるというのは本当に難しいので、何か大きな目標を作りたいところです。次は上裸でアー写を撮るとか(笑)。

20. ご自身の性格を一言で表すと?

亀井 「楽観的」です。どうにかなると思いながら生きているところがあると思います。

——たとえばイヤなことがあっても気にしなかったり、長く引きずらなかったり、といったタイプでしょうか。

亀井 そうだと思いますね。感情的になることも少ないです。

——なるほど。そうなると、心が安定した状態で演奏に取り組むこともできるとか……?

亀井 でも、実は難しい問題なんです。やっぱり音楽家は感情が豊かなほうがいいんじゃないかと思っていて。僕は何事も割り切れてしまう性格なので。

——確かに、過去の作曲家の中でもショパンやシューマンなど、感情が非常に豊かな人が多いですよね。

亀井 そうなんです。だから、なるべくその作曲家の本を読んだりして、人生を想像するようにはしています。

もちろん、感情がまったくないわけではなく、映画を観て泣くこともありますよ!

21. 好きな映画やドラマはありますか?

亀井 最近見たものでおもしろかったのが、湊かなえさんが原作で藤原竜也さんが主演を務められたドラマ『リバース』です。

サスペンスドラマなのですが、人間の脆弱な部分や、人間関係の変化などが丁寧に描かれていて、めちゃくちゃ号泣しながら一気見しました。

22. 影響を受けた本は?

亀井 『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』(フィルムアート社、ロバート・マッキー著・越前敏弥訳)です。ストーリーや脚本の書き方、人物像やシーンの描き方などが書かれている本で、音楽にも通ずる部分があっておもしろいです。

23. 好きな食べ物は?

亀井 子どもみたいな答えになりますが、焼肉、お寿司、ハンバーグ……。あ、馬刺しとかもつ鍋も好きです!

——結構食べるタイプなんですね。

亀井 はい、かなり食べるタイプだと思います。

24.苦手な食べ物は?

亀井 ピーマンや大葉など、香りの強い野菜は苦手ですね……。白菜など、クセのない野菜はまったく問題ありません。

25. 料理はしますか?

亀井 はい、します。特にドイツにいると、日本食が恋しくなるので。近所にある日本の食材店で買い物して自分で料理しています。

——近所にあると便利ですね。

亀井 そうなんです。日本の調味料もお米もうどんなどの麺類も売っているので、とても便利ですね。

公演情報
亀井聖矢ピアノリサイタルツアー2026 Supported by MUFG Wealth Management

日時: 

東京公演(サントリーホール 大ホール):2026年4月13日(月)19:00開演
大阪公演(フェスティバルホール):2026年4月14日(火)19:00開演
愛知公演(愛知県芸術劇場コンサートホール):2026年4月16日(木)19:00開演

曲目:

シューマン=リスト: 献呈
シューマン:謝肉祭 作品9
亀井聖矢: 3つのエチュード
ラフマニノフ: 絵画的練習曲「音の絵」 作品39より
ほか

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桒田萌
桒田萌 音楽ライター

1997年大阪生まれの編集者/ライター。 夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。在学中にクラシック音楽ジャンルで取材・執筆を開始。現在は企業オ...

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