はじめてのモンポウ~極限の音数で珠玉のピアノ小品を生んだカタルーニャの作曲家
フェデリコ・モンポウ(1893~1987)という、スペイン・カタルーニャの作曲家を知っていますか?
フォーレやラヴェル、サティ、六人組からインスピレーションを受けつつ独自の音楽を追求し、とても少ない音数で、「静寂の調べ」ともいえる珠玉のピアノ小品や歌曲を書いた作曲家です。一部に熱烈なファンをもち、はじめはピアニストとして注目を集めただけに、自作録音のピアノ演奏も一級品。このたび、その生涯をまとめた本格評伝を出版した椎名亮輔さんに、モンポウの人物像と初めて聴く人にオススメの作品を教えてもらいました。
主にピアノのために書かれた 寡黙、静謐、控えめな音楽
フェデリコ(カタルーニャ語の本名はフラダリック)・モンポウ(1893〜1987)はスペインの作曲家である。
スペインといっても灼熱の太陽、闘牛、フラメンコを思い浮かべてはいけない。それらはカスティーリャの、中・南部のスペインであり、モンポウは北東部の、フランスとまたがった地域、カタルーニャの人だ。
彼は、主にピアノのために、寡黙、静謐、控えめな音楽を書いた。母方はフランス系であり、鐘の鋳造業を行なっていた。その影響から「金属和音」という独自の和音を発明している。
前半生をフランス・パリで、まず音楽を学び、のちに作曲家として有名になっていった。当時のパリは第一次世界大戦後の、いわゆる「狂乱の時代」、ミュージックホールではジャズが氾濫し、ストラヴィンスキーとロシア・バレエ団、ラヴェルやサティ、そして〈六人組〉が活躍していた。それらの影響もはるかに聞こえる。
カタルーニャ性を大事にした作品を発表し続ける
しかし、彼は自分の出自を大切にしていた。海(地中海)と山(うしろに聖山モンセラートを控えた、豊かな自然)にはさまれた港町、バルセロナである。第二次世界大戦がはじまると、生まれ故郷バルセロナに帰り、カタルーニャ性を大事にした作品を発表していく。
モットーは「再び始めること」、それはすべてのしがらみから自由になり、自らの足元を澄み切った眼でみつめることにほかならない。そこから、けっして大声で迫ってくるようなものではない、ひとつひとつが磨かれた珠玉のような、落ち着いた内面の美によって静かに輝く作品が生み出されてくるのである。
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