チョコレートが大好きな作曲家と、スイーツを題材にしたポップなクラシック
もうすぐバレンタイン。デパートの特設チョコレート売り場は連日大賑わいですが、プレゼントにひとひねり加えて「チョコ+α」作戦を練っていらっしゃるみなさまへ。もし、お相手がクラシック好きならば、「チョコにまつわる音楽」で攻めてみるのは如何でしょう。スイーツ好きの作曲家と作品をご紹介しますので、ぜひ音源を添えるなどして今年のバレンタインの勝者を目指してください!
東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京医科歯科大学非常勤講師。オペラを中心に雑誌やWEB、書籍などで文筆活動を展開するほか、社会人講座やカルチャーセンターの講...
究極のスイーツ男子 ショパン
チョコレートといえばショパン、ショパンといえばチョコレートですよ。いや、ここは正しく「ショコラ」というべきでしょう。
ショパンは毎朝「ショコラ・ショー」という、チョコレートと牛乳で作るホット・チョコレートを飲むのが日課でした。しかも、彼はスミレの花の砂糖漬け(クリスタリゼ)を入れるのが好きだったとか。
花がいっぱい活けられた部屋(ちなみにショパンは花も大好き)で高価なマホガニーの家具に囲まれ、毎朝お気に入りの陶器のカップでスミレの砂糖漬け入りのショコラ・ショーを飲む……なんという乙女男子!
ショパンの恋人だったジョルジュ・サンドは、数々の男性と浮き名を流す肉食系女子でしたが、ショパンとつきあい始めると彼の健康を気遣い、細やかな心配りをしました。もちろん、毎朝ショコラ・ショーを作ってベッドまで運んだそうです。
そんなサンドとの日々の中からは、「英雄ポロネーズ」をはじめとする数々の傑作が生まれました。
ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 作品53
毒殺説は風評被害です サリエリ
最近、「Fate/Grand Order」というオンラインゲームのキャラクターとして生まれ変わり、極東日本の一部に絶大なファンを生み出している作曲家、アントニオ・サリエリ。モーツァルト毒殺という不名誉な風評被害を被っていますが、本当のサリエリは真面目で善良な人物であり、またベートーヴェンやシューベルトなどを育てた教育者でもありました。
そんなサリエリの風評被害を決定的にした映画『アマデウス』(1984年公開)ですが、サリエリが甘いモノに目がなかったことがしっかりと描かれています。
特に、家を訪ねてきたモーツァルトの妻コンスタンツェに「ヴィーナスの乳首」というお菓子をすすめるシーンは印象的でした。これはオーストリア・ザルツブルクの伝統的なお菓子で、栗のガナッシュをホワイトチョコレートで包んだもの。限られた階級の人しか手にいれられない、まさに富の象徴のようなスイーツです。
サリエリは当時、ウィーンの宮廷楽長という高い地位にあり、多くのオペラを書いて人気を博していました。モーツァルトと競作して宮廷で上演されたオペラ《はじめに音楽、次に言葉》をはじめ、今ではすっかり忘れられているのが、風評被害と相まって気の毒です。
サリエリ:オペラ《はじめに音楽、次に言葉》
映画『アマデウス』
作曲家は甘いモノに目がない!?
さて、他にもチョコレートにまつわる作品をピックアップしてみましょう。
ありとあらゆるものをテーマに曲を書いたと言っても過言ではないヨハン・シュトラウス2世。
ありました、お菓子テーマの曲が。メッテルニヒ侯爵夫人に捧げられたワルツ「ウィーンのボンボン」がそれです。ボンボンとは、砂糖の殻でアーモンドやフルーツなどを包んだフランス菓子で、砂糖の代わりにチョコレートでウィスキーを包んだのがウィスキー・ボンボン。あまーいウィーン菓子のムードがいっぱいのワルツです。
写真上:ボンボン菓子。
ワルツ「ウィーンのボンボン」
自身もヴァイン・クレーム・トルテという白ワインのクリームでできたムースが好きだったというリヒャルト・シュトラウスは、バレエ音楽「泡立ちクリーム」という作品を書いています。
ウィーンの有名な菓子店デメルでお菓子を食べ過ぎた子どもが、お菓子たちが踊る夢を見る、という何だかとってもスイートなお話。カカオやプラリネやボンボンやお茶まで出てくる、この時期にピッタリの音楽です。
いかがでしたか。今年はチョコに素敵な音楽を添えて、意中の人のハートをガッチリ射抜いちゃってくださいね❤️
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