6つの歌(ゲザング)第3曲:蚤の歌――ゲーテの詩の音楽化構想はボン時代から
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
ゲーテの詩の音楽化構想はボン時代から――6つの歌(ゲザング)第3曲:蚤の歌
詩はゲーテの小説『ファウスト』からとられている。悪魔メフィストフェレスが、学生たちで賑わうライプツィヒの酒場アウエルスバッハで歌う、強烈な風刺の歌。『ファウスト・第1部』の出版は1808年であるが、ベートーヴェンのスケッチはすでに1790年に現れているので、歌詞は1790年にゲーテが発表した『ファウス第1稿断片』からとられたもの。
全6節の詩を2節ずつ組み合わせて3節の有節歌曲(詩の節をそれぞれ同じ旋律にのせる形式)としている。前奏と間奏、細かい律動とスタッカート唱、短調なのか長調なのか、大声とひそひそ声といった、多彩な表現で楽しいドラマティックな作品。
「むかし、ひとりの王がいて、大きな蚤を飼っていた。王はそいつを息子のように愛してた。ある日、王は仕立屋を呼び、この貴公子の服を仕立てよ、ズボンも作れと命令する。蚤は今ではビロードと絹の服をまとい、上着にリボンを飾り、おまけに十字架もぶら下げる。かくてお城の紳士淑女は蚤の苦しみ。お妃さまと侍女たちはチクリと刺されてかじられる。でも、潰してはならぬ。俺たちだったらすぐ潰す、チクリと刺されりゃすぐ潰す」
解説:平野昭
1790年、ベートーヴェンが20歳のころから構想していたゲーテの詩によるコミカルで、ドラマティックな歌曲。平野さんは、ベートーヴェンが生涯敬愛するゲーテの詩に、若いうちから音楽をつけようと試みていることに注目しています。
もうこのころからゲーテの詩を使っているんです。トゥーレの王様とか、そういった一連のなかのひとつで蚤の歌。この詩には、いろんな作曲家が曲をつけています。蚤がぴょーんって跳ぶような、描写的な曲です。
――平野昭談
6つの歌(ゲザング)第3曲:蚤の歌 Op.75-3
作曲年代:1790~92年スケッチ、1809年(ベートーヴェン20~22歳)
出版:1810年8月
関連する記事
-
ドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』刑事と殺人鬼が入れ替わり《運命》も変化!?
-
ベートーヴェンと宇宙〜カントから「第九」へ
-
大晦日に舞台『No.9』がライブ配信! 稲垣吾郎指揮の「第九」で年越しを
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly