2020.02.12
おやすみベートーヴェン 第59夜【天才ピアニスト時代】
「ピアノ・ソナタ第3番 ハ長調」——ロマン主義を先取りした作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
ロマン主義を先取りした作品「ピアノ・ソナタ第3番 ハ長調」
「第1番」は調性、「第2番」は形式、「第3番」はピアノ協奏曲を思わせる巨大な書法と調の特殊性……といった具合にどの曲にもベートーヴェンの「新しいことを!」という強いメッセージが込められているように感じます。
「第3番」は特にベートーヴェンの独自性が表れていて、響きや規模、広い音域を駆け巡るオクターヴのパッセージなど、使われるテクニックは完全にピアノ協奏曲を想定しています。極め付けにカデンツァも置かれていますからね。さらに、主調がハ長調なのに、第2楽章をホ長調にするという当時の常識では考えられない調設定の特殊さも挙げられます。ベートーヴェンの和声感覚は完全にロマン主義を先取りしていたと言えるでしょう。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)17-18ページより
ベートーヴェンは、3つのピアノ・ソナタでロマン主義への道を示しました。のちの彼のピアノ・ソナタと聴き比べるのも面白いかもしれませんね。
作品紹介
「ピアノ・ソナタ第3番 ハ長調」Op.2-3
作曲年代:1794~95年(ベートーヴェン24~25歳)
出版:1796年3月アルタリア社
小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)
関連する記事
-
大晦日に舞台『No.9』がライブ配信! 稲垣吾郎指揮の「第九」で年越しを
-
フィルハーモニー・ド・パリによる無料配信~パリ管弦楽団/マーラー《大地の歌》など
-
研究者・平野昭らが選ぶ「やっぱりこだわりたい! ベートーヴェン・ランキング」
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest
2021.01.17
「わたしのため息、わたしの涙よ」BWV13——顕現節第2日曜日
2021.01.16
ピタゴラスやプラトン、ケプラーからたどる「音楽がもたらす宇宙の調和」
2021.01.16
2021年上半期の運勢〜「風の時代」にラッキーフードと音楽でパワーアップ!
2021.01.16
2021年は200年規模の「新時代」が本格的にスタートする年! 青石ひかりの12...
2021.01.15
新国立劇場バレエ団《くるみ割り人形》のオンデマンド配信が開始
2021.01.15
『桐島、部活やめるってよ』と《ローエングリン》にみる信奉する危うさとその結末
2021.01.15
追悼ファニー・ウォーターマン——コンクールを創設したピアノ教育者が残した言葉より
2021.01.15
サントリーホール開館35周年! 記念事業の概要を発表