プレイリスト
2020.03.13
おやすみベートーヴェン 第79夜【天才ピアニスト時代】

「五重奏曲変ホ長調」——モーツァルトが書いた同編成の名作を下敷きに

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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モーツァルトが書いた同編成の名作を下敷きに「五重奏曲変ホ長調」

この作品はモーツァルトのオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットとピアノのための五重奏曲変ホ長調K452と同じ編成、調性で書かれ、各楽章のも似たような構造をしているそうです。

ベートーヴェンがこの曲を書いたとき、モーツァルトの五重奏曲はまだ出版されていなかったのですが、知る機会は恐らくあったと思います。1796年にベートーヴェンがリヒノウスキーに連れられて訪れたプラハでは、当時モーツァルトの音楽が非常に受容されていました。そもそもモーツァルトをプラハの音楽愛好貴族界に紹介したのもリヒノウスキーでした。ベートーヴェンをプラハ旅行に誘ったのも、モーツァルトの時と同じ理由です。そのような中、ベートーヴェンはモーツァルトの五重奏曲と同じような作品を書くように、貴族から依頼を受けたのではないかと思います。

(中略)

この五重奏曲はモーツァルト自身も「最高の作品」と気に入っていましたから、貴族が気に入って似た作品を書くように依頼するのも必然でしょう。

――小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)52、53ページより

モーツァルトの五重奏曲K.452

カール・アロイス・フォン・リヒノフスキー侯爵(1761-1814)。
モーツァルトとはプラハ、ドレスデン、ライプツィヒ、ベルリンの旅をともにしたり、多額の金銭援助をした人物。ベートーヴェンにとっても、もっとも有力な後援者だった。
作品紹介

五重奏曲変ホ長調 op.16

作曲年代:1796年5~7月(ベートーヴェン26歳)

出版:1801年3月

小山実稚恵、平野昭著 『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)
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