「アダージョ・マ・ノン・トロッポ 変ホ長調」——マンドリン奏者である伯爵令嬢へ贈る、穏やかな作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
マンドリン奏者である伯爵令嬢へ贈る、穏やかな作品「アダージョ・マ・ノン・トロッポ 変ホ長調」
1796年2月、ベートーヴェンはリヒノウスキー侯に連れられて、プラハへと旅立ちます。
作曲家フランティシェク・ドゥシェック(1731〜99)とその夫人で名ソプラノのヨーゼファ(1754〜1824)を中心とするサロンは、プラハの音楽文化の象徴的存在であった。(中略)また、このサロンの常連であったクラリ伯爵令嬢ヨゼフィーネ(1777〜1828)のために、マンドリンとチェンバロのための二重奏曲を4曲(ソナタ2曲、アダージョ、変奏曲=WoO43a、43b、44a、44b)作曲しており、同サロンで、ベートーヴェン自らも共演者となって演奏したであろうことは確実である。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)35ページより
昨日の「ソナチネ ハ短調」に引き続き、ベートーヴェンがヨゼフィーネに贈った4つの作品の中からご紹介します。作品名になっている「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」は、「ゆっくりと、しかし遅すぎないように」という意味です。その名の通り、穏やかで優しい曲です。サロンでの演奏を聴いてみたいものですね。
「アダージョ・マ・ノン・トロッポ 変ホ長調」WoO43b
作曲年代:1796年春(ベートーヴェン25歳)
出版:1940年
クラリ伯令嬢ヨゼフィーネに献呈
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