「ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ長調 」——サリエリに献呈された“オブリガート・ヴァイオリン付きのピアノ・ソナタ”
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
サリエリに献呈された”オブリガート・ヴァイオリン付きのピアノ・ソナタ” 「ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ長調 」
ヴァイオリン・ソナタの創作期も特徴的だ。チェロ・ソナタとは対照的に短い期間に集中している。10曲中9曲が1797年から1803年までの6年間に作曲、初演されている。
最初の作品はウィーンの宮廷楽長アントニオ・サリエーリに献呈された作品12の3曲であるが、これらは伝統様式を踏襲したオブリガート・ヴァイオリン付きのピアノ・ソナタといった趣が強い。
――平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)250-251ページより
(サリエリとの関係について)ベートーヴェン研究でこの部分がまだ明確になっていないのです。確実なのは1800年から1801年くらいにサリエリに師事していたということ。1802年にイタリア語のシェーナトアリア《いいえ、心配しないで No, non turbarti》WoO92aそして、二重唱《お前の幸せな日々に Ne’ giorni tuoi felici》WoO93などを書いていますので、これらがサリエリの元での学習成果だろうと考えられています。ですから1799年出版の3つのヴァイオリン・ソナタ「第1〜3番」の献呈は宮廷楽長への敬意の表明だったと思います。
ベートーヴェンのロマン主義的な面が随所に表れ、ピアノ以外の楽器でもこんな作品が書ける、ということをアピールしたかったのでは
――小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)57-58ページより
ウィーンの宮廷のトップにいたサリエリに敬意を表して献呈すると同時に、ピアニストとして認知されていたベートーヴェンの「ピアノ以外の楽器の作品も書けるアピール」も兼ねていたそうです。
「オブリガート・ヴァイオリン付きのピアノ・ソナタ」と捉えられるというこの作品。オブリガートは、主旋律を彩るように奏される独立した旋律、助奏のことです。これからどのように、ヴァイオリン・ソナタにおけるピアノとヴァイオリンの関係性が変化していくのか、楽しみですね。
「ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ長調 」Op.12-1
作曲年代:1797~98年(ベートーヴェン27〜28歳)
出版:1798年12月/99年1月
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