ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》第2楽章——ヨーロッパ中の出版社が同時に初版出版
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ヨーロッパ中の出版社が同時に初版出版 ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》第2楽章
この頃からベートーヴェンは音楽的な細かいニュアンスを伝えるために、発想記号も含めてドイツ語で表記する傾向にありました。しかし、この曲はタイトルのみドイツ語で、発想記号がイタリア語なのはなぜでしょうか。
平野 この曲はウィーンやドイツだけでなく、スイスやイタリアなど、ヨーロッパ中の出版社で同時期に初版譜が出版されており、発想記号にイタリア語が優先されたのだと考えられます。
(中略)
前作「第28番」あたりから、ベートーヴェンの作品を扱う出版社が増えていたのですが、この曲から一気に増えた印象ですね。これにはベートーヴェンという作曲家その人の知名度が「ウィーン会議」(1814~15年)を契機として一気に高まったことも関係していると思います。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)96ページより
ウィーン会議での数々の成功が、ヨーロッパ中にベートーヴェンの名声を拡散させることになったのですね。
ちなみにこの初版譜の表紙には、いままでフランス語風の綴り「Louis ルイ」で書いてあったベートーヴェンの名前も、ドイツ語の「Lutwig ルートヴィヒ」となっています。
ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》op.106
作曲年代:1817年〜1818年(ベートーヴェン47歳〜48歳)
出版:1819年9月アルタリア社他多数同時出版
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