プレイリスト
2020.12.16
おやすみベートーヴェン 第367夜【最後の10年】

弦楽五重奏曲断章ハ長調——最終回! 穏やかな雰囲気に包まれた未完の絶筆作品

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。

1年間にわたる「おやすみベートーヴェン」、ここに完結!

ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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穏やかな雰囲気に包まれた未完の絶筆作品 弦楽五重奏曲断章ハ長調

ほんとうに残念で残念でしかたない。未完成ながら、多分、ベートーヴェンの最後の作品(弦楽五重奏曲断章)となるべきものだった。

 

弦楽四重奏曲第13番Op.130のための《大フーガ》に代わる新しい終楽章を、甥カールとともにクレムス・アン・デア・ドナウ近隣のグナイクセンドルフに住む弟ヨハンの邸宅に逗留中の9月末から11月半ばまでに書き上げ、これに続けて11月から作曲を始めていたのがこの作品だ。

 

作曲のきっかけは、1824年ころから出版社のディアベッリとのあいだで「フルート五重奏曲」の作曲という話題がでていた。しかし、1826年9月26日(グナイクセンドルフに出発する2日前)のディアベッリ宛の手紙で、ベートーヴェンは「早い返事ができなかったのは、まったく時間の余裕がなかったからだ。でも、今なら約束するよ、例の五重奏曲は6週間くらいのうちに手渡せると思うよ」と伝えている。

 

また、ベートーヴェンの死の2日前、1827年3月24日付でシンドラーがロンドンにいるイグナツ・モシェレスに宛てたベートーヴェンの病状を綴った手紙にも、「弦楽器のための五重奏曲(中略)この五重奏の2つの楽章はすでに完了している」というくだりがある。

 

たしかに遺品競売目録に「第173番:1826年11月、ヴァイオリン五重奏曲断章、作曲者最後の作品」とある。ディアベッリ&シュピーナ社が競り落とし、ディアベッリ自らが「第1楽章のための導入部」をピアノ版とピアノ連弾版に編曲し、1838年4月に初版出版した。

 

ところが、編曲後にベートーヴェンの自筆譜は破棄されたのか、だれかに転売されたのか、行方不明のままで、もともとは、どの程度まで書き進められていたかも不明。現在はディアベッリが編曲したピアノ版の24小節だけで知られている。

 

アンダンテ・マエストーソ、4分の3拍子、ハ長調。全員による主和音の強奏のあと4オクターヴにわたるユニゾンで、ハ長調の上行音階が荘重な付点リズムで奏される。あとは聴いてのお楽しみ。

解説:平野昭

亡くなる約半年前に書かれた、未完成に終わったベートーヴェン最後の作品です。ディアベッリによる補筆版でお楽しみください。人生最後の作曲で、ベートーヴェンは何を想っていたのでしょうか。

2019年12月16日からはじまった「おやすみベートーヴェン」は、ベートーヴェン250回目の誕生日とされる本日で最終回となります。1年間どうもありがとうございました!(編集担当M&K)

作品紹介

弦楽五重奏曲断章ハ長調WoO62

作曲年代:1826年11月(ベートーヴェン56歳)

出版:1838年

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

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