オペラ《ヴェスタの火》——台本がお気に召さず未完に終わった作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
台本がお気に召さず未完に終わった作品 オペラ《ヴェスタの火》
昨日紹介したように、ベートーヴェンは1803年に、オペラの台本作家シカネーダーからオペラの作曲を依頼され、彼が支配人を務めるアン・デア・ウィーン劇場付き作曲家になりました。
依頼されたオペラの作曲は順調に進んだのでしょうか?
シカネーダーと新作オペラの題材や台本について再三の話し合いをもったが、どれもベートーヴェンの意に沿わなかった。また、このころになると次々に新しい作曲依頼も来るようになり、腰を据えてオペラと取り組む物理的な時間もなかった。
(1803年の)秋にウィーンに戻ると、シカネーダーの準備したオペラ台本《ヴェスタの火(純潔の火)》(Hess 115)の作曲に着手し、第1幕第1場のスケッチまで済ませるが、劇内容に納得できず作曲を放棄している。しかし、台本を諦めたもののオペラ創作への意欲が失せたわけではなく、多くの友人たちに、よいオペラの台本あるいは題材となる原作がないかと声をかけていた。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)70ページより
サリエーリに師事して《おののけ、背徳者よ》を作曲した頃から、オペラを作曲して一流の作曲家になるべく、意欲を見せていたベートーヴェン。シカネーダーから依頼を受けて、ようやく達成されるかと思いきや、残念ながら未完に終わってしまいました。それだけベートーヴェンのオペラへのこだわりが強かったということでもあるでしょう。
オペラ《ヴェスタの火》Hess 115
作曲年代:1803年10~11月(ベートーヴェン33歳)
出版:1872年、1953年、1957年
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