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2020.07.09
おやすみベートーヴェン 第207夜【作曲家デビュー・傑作の森】

「交響曲第4番 変ロ長調」第2楽章——作曲から半年、ひとりの貴族が独占所有

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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作曲から半年、ひとりの貴族が独占所有「交響曲第4番 変ロ長調」第2楽章

4日連続でご紹介している交響曲第4番。作曲が進んでいた「爆発的創造期」の1806年9月に、ベートーヴェンは小旅行に出かけています。

9月中旬にベートーヴェンとリヒノフスキー侯は、オーバー・シュレージエン(上シレジア地方/現在のポーランド南西部からチェコ北東部)のオーバーグロガウ(現グウォグヴェク)に領地をもつフランツ・フォン・オッペルスドルフ伯爵(1778-1818)の居城を訪ねている。熱心な音楽愛好家である伯爵は施設楽団を擁するほどで、訪ねた時にはベートーヴェンの交響曲第2番を演奏して歓迎している。当時作曲中の「変ロ長調」交響曲をオッペルスドルフ伯爵に献呈することにしたのもこの時のことであろう。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)90ページより

自分の交響曲が、現在のポーランドにある小都市で演奏されたことにベートーヴェンは感激したのではないでしょうか。

ベートーヴェンは1808年の初版譜に献呈者としてオッペルスドルフ伯爵の名前を記しただけでなく、出版前の1807年2月に「半年間の独占使用」という形で伯爵にスコアを譲っています。

明日ご紹介する1807年3月の私的演奏会での初演から、1807年11月の公開初演までの半年間、オッペルスドルフ伯爵は自分だけがベートーヴェンの最新作の楽譜を読み、演奏し、聴く権利と名誉を得ていたのです。音楽ファンにとっては、たまらないことかもしれませんね。

 

作品紹介

「交響曲第4番 変ロ長調」op.60

作曲年代:1806年(ベートーヴェン36歳)

出版:1808年美術工芸社(ウィーン)

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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