プレイリスト
2020.07.10
おやすみベートーヴェン 第208夜【作曲家デビュー・傑作の森】

「交響曲第4番 変ロ長調」第3楽章——L侯爵邸のオール・ベートーヴェン演奏会で初演

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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L侯爵邸のオール・ベートーヴェン演奏会で初演「交響曲第4番 変ロ長調」第3楽章

4日連続でご紹介している交響曲第4番。この作品は、1807年3月に行なわれた、とある私的演奏会で初演されました。

4月初旬発行の『豪奢流行ジャーナル Journal des Luxus und der Modern』に掲載の記事には、「ベートーヴェンはL侯爵邸で2つの演奏会を開いた。彼以外の作曲家による作品はひとつもなかった。第1番から4つの交響曲、悲劇《コリオラン》のための序曲、ピアノ協奏曲、そして《フィデリオ》からいくつかのアリアであった」とあり、このL侯爵邸はリヒノウスキーかロプコヴィッツかでかつては議論があったが、私的演奏会で報道が取り上げるオーケストラ演奏会であったということから、現在ではロプコヴィッツ侯爵邸での演奏会と確定されている。

交響曲4曲はおそらく2回の演奏会で2曲ずつ取り上げられたのであろう。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)94ページより

2日間に4曲すべての交響曲が取り上げられる演奏会。当時、いかにベートーヴェンの名声が高まっていたかが解るプログラムです。この記事にはベートーヴェン作品の「楽想の豊富さ、独創性、力強さ」を認めつつも、「高貴な単純さにかけ、楽想の数と、その積み重ねが多過ぎて、研磨されていないダイヤモンドのよう」と締めくくられています。

初演の場所を「L邸」としているのは、私的演奏会のために個人名を伏せたのでしょうか。当時ベートーヴェンの有力なパトロンだったロプコヴィッツとリヒノフスキー、2人のL侯爵はそれぞれ第2番と第3番の交響曲を献呈されています。

フランツ・ヨーゼフ・マクシミリアン・フォン・ロプコヴィッツ(1772−1816)
かつてはハイドンのパトロンでもあり、ベートーヴェンからは交響曲第3番、第5番、第6番の献呈を受けている。
カール・アロイス・フォン・リヒノフスキー(1761-1814)
モーツァルトの支援者としても知られ、ベートーヴェンからは交響曲第2番の献呈を受けている。義理の兄アンドレイ・ラズモフスキー公爵もベートーヴェンの有力な支援者だった。
作品紹介

「交響曲第4番 変ロ長調」op.60

作曲年代:1806年(ベートーヴェン36歳)

出版:1808年美術工芸社(ウィーン)

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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