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2020.08.31
おやすみベートーヴェン 第260夜【作曲家デビュー・傑作の森】

弦楽四重奏第11番 ヘ短調《セリオーソ》——公の場で演奏するべきではない? 玄人のために書かれた作品

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!

ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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公の場で演奏するべきではない? 玄人のために書かれた作品 弦楽四重奏第11番 ヘ短調《セリオーソ》

この作品が《セリオーソ》(「厳粛な」の意味)と呼ばれる理由は、表紙に「カルテット・セリオーソ」と書かれていたことに由来しています。そして、彼の友人であるフォン・ズメシュカル氏に献呈することも明記されていました。

ズメシュカルはハンガリーのレスティン(現スロヴァキアのレシュティニー)出身で、1784年から1825年までウィーンに住んでいたアマチュアながら傑出したチェロ奏者であった。ベートーヴェンはずっと後であるが、1816年10月7日にロンドンのジョージ・スマート卿に宛てた英語の長文の手紙の中で「この四重奏曲は玄人による小さなサークルのために書かれたもので、決して公開の場で演奏されるべきではありません」(BB983)と言っている。ただ、この作品の成立と改訂に関しては不明なところも多々ある。初版譜がシュタイナー社から出版されるのは1816年9月になってからのことであった。1814年5月のある日の午前中の演奏会で、シュパンツィヒ四重奏団によって演奏されたとシンドラーの伝記は伝えているが、1809年から11年ころまでズメシュカルの家ではシュパンツィヒやチェロのアントン・クラフトなどが集まって頻繁に私的演奏会が開かれており、ベートーヴェンが顔を出すこともあり、こうした「玄人のサークル」で早くから演奏されていたのではないだろうか。スケッチ帳の研究で1814年に改訂の手が加えられたと推定されているのも、幾度となく試演されていたからであっただろう。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)229、230ページより

この作品は、ある小さなサークルのために書かれたようです。手紙の中で「決して公開の場で演奏されるべきではありません」と述べたのは、作品が出版されたあとです。ベートーヴェンは、友人たちの演奏会で育てられたであろうこの《セリオーソ》に思い入れがあったのではないでしょうか。

作品紹介

弦楽四重奏第11番 ヘ短調《セリオーソ》Op.95

作曲年代:1810年夏〜11年前半(ベートーヴェン 40〜41歳)

初演:1814年5月

出版:1816年シュタイナー社(ウィーン)

シュパンツィヒ四重奏団により初演される

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

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